
ご近所レベルで起きている夫婦間DV
家庭内での出来事なので、なかなか伺い知ることができませんが、離婚相談でよく聞かれるDV事例をご紹介します。
【事例1】
夫の帰宅が怖くて、できるだけ夫の帰宅までに子どもと一緒に寝るようにしています。怖くて布団の中で固まっています。何事も起きないように!と。酔っぱらって帰ってきた夫は、私を寝室から引きずり出し、壁や床に押し付け、殴るポーズをとって脅かします。その他にも、携帯を折る、投げつける、私が書き物をしている手を払いのけるなど、かすり傷程度ではありますが、私は傷を負います。
【事例2】
不仲が続いていますが、夫婦喧嘩の際、夫に逆らった私の顔を、ソファーに押し当てて、横に引きずられました。私の顔には擦り傷が出来ました。
【事例3】
車の中で夫婦喧嘩が勃発。夫は、痕が残らないようにでしょうか、私の頭を腕で固定し、髪の毛の部分をげんこつで殴るのです。髪の毛で隠れるので、殴打の後は傍からは見えないのです。
どうですか? 驚かれましたか? 警察沙汰、入院沙汰になっていないくても、このようなことが普通の家庭内で起きているのです。
普通のDV被害者の傾向
彼女達は、離婚を明確に意識するまでに、何年も要することがあります。これが“DV”なのか、それとも“夫婦喧嘩”とはこういうものなのか、そもそも判断がつかないのです。
何年も苦しい結婚生活を送りながらも、「子どものために離婚を避けたい」、「まだ我慢できる」、そう考えているのです。ただ、限界は急に来ることが多いのです。
苦しくも我慢を続けていたけれど、「いよいよこの状況はおかしい!」と、親に助けを求めたり外に助けを求め始めたところで、妻の気持ちも急変します。
夫との決別を決意し、子供を連れて実家に戻り、専門家に相談に来ます。しかし、今まで何度も機会はあったにも関わらず、DVの証拠となる診断書、録音、写真などが一切無い方が多いのです。
我慢を続けていたつい先日までは、「まだ先のこと」と思って診断書などを取り付けてこなかったのでしょう。
今さら、証拠を採るためだけに夫のもとには怖くて帰れません。このようなパターンになる方は、非常に多いのです。DVの証拠は使う使わないはこだわらず、殴る、蹴るなどで傷ができたり、鼓膜が破れた場合は、病院へ行き診断書を取っておきましょう。
今までさんざんチャンスがあったにも関わらず、証拠を取っていなかったことで後悔している方はとても多いのです。
「子どものために我慢」もほどほどに。自分へのダメージは相当です
あまりひどい経験を耐え続けることはおススメできません。いくら子供のためと言っても、あなた自身が気づかないうちに、相当ダメージを受けています。しかも、自分がどのようにダメージを受けているのか、分からないので余計に状況を深刻化させます。
夫のDVで警察沙汰になった際、「この子の父親を犯罪者にすることはできない」という判断をする妻は実際多いのです。しかし結局、妻自らが警察、その他の専門家に対して助けを求めなければ、そこから先にはなかなか進みません。
本人の意思がないのに、無理やりプライベートな問題に専門家が介入することはできないのです。本人が離婚や別居を判断しないと、専門家は本人の意向を無視しては進められないのです。
また、妻本人の精神的ダメージが大きく人間不信に陥ってしまっている場合は、本人が専門家と信頼関係を築き、相談しながら道を探ることが難しくなることがあります。
こうなってしまっては、親などが専門家のアドバイスを受けながら積極的に関わり、ある程度強引に救い出すことが必要となってきます。そのように自分を強引にでも救い出してくれる親のような存在が無い場合は、事態の改善は非常に困難になるでしょう。
あまり辛い経験、酷い経験を自分にさせてはいけない。このことは、しっかり頭に留めておいていただきたいです。
ひどいDVにも関わらず修復を願う妻
さらにDVの程度がひどくなると、いっそう問題も深刻になりDVから逃れることが困難になります。夫からのDVで骨折、鉄パイプで殴られる等で、警察を何度も呼んだことのあるケースは深刻です。
なぜか、そのような相当ひどいDVを受けている妻からの相談の特徴として
「夫と修復したい」
となるのです。状況から判断して
「平穏な夫婦関係の実現は可能性が低い」
ということを伝えても、受け入れないのが特徴です。様々な相談所に電話し、なんとか修復に向けたアドバイスを得たいとさすらうのですが、残念ながらどこも難しいという判断をされるばかり。
通常、過去に一発顔面パンチをくらったことがある、という場合、妻はそのことを恐怖と感じ、夫を怖いと思うようになります。
しかし、DVがよりひどくなり、複数回夫のDVによって骨折するような状況になると今度は、
「夫は怖いですか?」という質問に対し、
「全然怖くない。どうして修復が無理なのか?」
となるのです。そもそもDVから自分で逃れようとしなくなるのです。
DV夫に対し妻はどうしたらよいのか?
夫婦喧嘩の範疇なのか、それともDVなのか? よその家庭と比較できない分、ずるずる「子どものために」と我慢を続けがちです。
しかし、DV以外の問題でもいえることですが、一度早めに専門家に相談しましょう。そうすることで、自分の置かれている状況を客観的に知ることができます。
証拠を取っていなかった…と後悔することも防げるでしょう。
首を踏んづける、足首をもって中釣りにしてから落とす(妻は頭から床に落ちる)…どれもニュースの事件ではなく、とある一般家庭内で起きていることです。
自ら、おかしいと思って、積極的に外に助けを求めることが大事です。できるだけ早く。そうでないと、前述したとおり、人間不信に陥り、専門家の助力を得ることが難しくなったり、自らこの状況にはまり込み、出ようとしない事態に陥る危険があり、それが最も心配なことなのです。
また、身近でそのような状況にあるが人がいたときには「夫婦のことだから」と放置せず、しっかり観察し、問題のある状況かどうか判断し、必要に応じて積極的に手を差し伸べていただきたいと思います。
離婚カウンセラー 阿部 貴子
一橋大経済学部卒、大手保険会社勤務後、専業主婦経験ありのアラフォー2女児の母の行政書士 離婚カウンセラー。