
「名前のない家事」が女性を圧迫する
筆者の家でも、夫がゴミを捨てに行った後で家中のゴミ箱に新しい袋をセットしたり、紙の切れたトイレットペーパーを交換して芯を捨てる作業などは、私がひとりで行っていました。わずかな時間で済むことではありますが、毎回そうだと「たまには夫がやってくれてもいいのに」とイラッとするときもありますよね。
「名前のない家事」が負担に感じる一番のものは、「妻(母親)がやることが当然」と勝手に暗黙の了解にされていること。口では「気づいた人がやればいい」と言っていても、実際は手を出さない夫は大勢います。
また、子どももそんな母親を見ていれば自然と「それはお母さんの仕事」と思います。自分でやろうとするときがあっても、子どもにとって「お母さんの手伝い」という意識になってしまい、「名前のない家事」が本当は自分もするべきものでもあるという意識が育ちません。
家族にもやって欲しいと思っても、小さなことをいちいちお願いすること自体がストレスになる場合もありますよね。そんなときは、「目印」を用意してスムーズに手を伸ばせる仕組みを作りましょう。
「その場で済ませる」仕組みでスムーズに動く
我が家の場合は、まず一番大きなゴミ箱はキッチンにあり、いつも70リットルの袋をセットしています。夫はそれを箱から出して家中のゴミ箱を回ってゴミを回収し、捨てに行きます。空いたゴミ箱の隣にはいつも新しいゴミ袋が置いてあり、「出したらすぐに新しい袋をセットする」のも夫の仕事。ゴミ袋がすぐ側にあるので取りに行く手間がなく、すぐに済みます。
託児所から帰ってくる息子は、家に入るとまず着替えを洗濯機に入れに行きます。バッグに入れっぱなしにして後でわざわざ取り出すより、帰宅後すぐに出してしまえば忘れることもなく、息子自身がすることと覚えているので言わなくてもやってくれます。それからうがいと手洗いをするのが毎日の流れです。
散らかしたまま片付けないおもちゃは、部屋の隅に大きな箱を用意して、その中に入れるだけの簡単な仕組みでクリア。「おやつはおもちゃを片付けてから」をルールにしていますが、その場ですぐ片付けられるので息子もやりやすく、私もストレスがありません。
我が家で意識しているポイントは、「なるべく動線を増やさないこと」です。小さなことだからこそ、その場で済ませる仕組みを作ればスムーズに終わらせることができます。
また、新しいゴミ袋を目に触れる位置に出しておく、おもちゃを入れる箱がすぐ側にあるなど、やることを「見える化」するのも大切です。目に付けば動きやすく、またなくなったり壊れたりしたときもすぐに気がつけます。
「自分はやらない」ことで負担を知ってもらう
例えば、以前は夫が何度言っても靴下を裏返したまま洗濯機に放り込むことに、イライラしていました。洗濯物をたたむとき、いちいちひっくり返すのは面倒で嫌気がさすものです。なので、ある日からそのままでタンスにしまうことにしました。「すぐ履けないじゃないか」と言われたらすかさず「だったらちゃんと脱いで」と返します。洗濯は私の担当ですが、脱ぐのは夫。そこまで私がカバーする必要はありません。
これは、「する人の気持ちを考える」ことにつながります。些細なことででも、こんな「名前のない家事」がストレスになるとちゃんと伝えることで、自分の行動を振り返る機会になり、負担を減らす工夫を考えられるようになるのですね。
トイレットペーパーの交換も、私が替えをセットしたり芯を捨てたりすることを止めました。文句が出たときがチャンスです。「自分でもできるでしょ」と言えば、妻に任せきりにしていたことに気がつきます。そのとき、「交換したら新しいペーパーを下のケースにセットすること」をふたりで決めて、手間が少なくなりました。
ときにはあえてやらないことも、負担を知ってもらうきっかけになると思いましょう。
「みんながする」を当たり前に
「名前のない家事」を見える化することで、家族の意識を変えることができます。妻がやって当然、になるのは妻がやるほうが早いと思い込んでいる場合もあるので、目につく仕組みを作っておけばそんな言い訳も出ませんよね。
家族みんながストレスなく「名前のない家事」を負担することで、不要なケンカも防げます。小さなことだからこそ、みんなですることが当たり前。そのためには、繰り返しやり方を伝えること、工夫を話し合う姿勢を持つことが大切です。
居心地の良い家は家族みんなの努力で作られます。それを知ってもらうことが、「名前のない家事」の負担を減らす最初の一歩です。
幸せ夫婦コラムニスト ひろた かおり
「自分の人生は自分で決める」がモットー。難病の自分を支えてくれた夫との生活が幸せに続くように、と強く心に誓い日々を生きる。