
マインドフルネスで自分を知る
マインドフルネスは今ここに注意を向ける練習のようなものです。「今ここ」は、見えるもの、聞こえるもの、感じるものなど五感を研ぎ澄ませてみると鮮やかに感じられますが、今回は内なる心の声に耳を傾けてみましょう。忙しく毎日を送っていると、本当の自分の気持ちや願望に意識が向かずに、願ってもいない方向に向かって走り続けてしまうことがあります。一度きりの人生で限られた時間を精一杯生きるなら、理想の自分や環境を目指して進みたいものです。
そこで、理想と現実にしっかりと意識を向ける時間を作ってみましょう。
まず、立ち止まる時間を作って現状を見つめます。
地図を見るとき、現在地を確認するようなものです。それは、自分に能力やお金がないから無理だと何かを諦めるための作業ではありません。もし障害があっても、それが何かを知ると、それを克服する方法を見つけることができます。敵の正体が分からなくては、武器を用意できません。そこで、現状を見つめるのに役立つ質問を挙げてみます。
・現状に満足しているか
・自分らしさを発揮できているか
・強みは何か、弱みは何か
・何でワクワクし、何でやる気を失くすのか
・自分を高めてくれる人は誰か、足を引っ張る人は誰か
すべてにきちんと答えられましたでしょうか? 次に理想について考えます。ゴールがなければどこに向かって歩けばいいのかわかりません。行き先も決めずにいると、誰かの進む道を同じように歩いて希望しない所に行きついたり、同じ所をぐるぐる回ってしまうこともあるかもしれません。では、理想を見つめるのに役立つ質問を挙げてみます。
・どんな自分になりたいか
・どんな環境にいると幸せか
・以前描いた夢は何だったか
・以前と同じ望みを持っているか? それとも考え方が変わったか
ぜひ、ランダムに質問を選んで2分間タイマーをかけて書き出してみましょう。
せっせと手を動かし、現状や理想に意識を集中するマインドフルネスです。きっといろんな発見があると思いますよ。
脳科学的アプローチでなりたい自分に近づく
ビジュアライゼーションという方法があります。夢がかなった自分の様子を鮮明な映像として思い描く方法です。大脳には右脳と左脳がありますが、映像を思い浮かべると右脳が働きます。
左脳は知識や理論の言語概念の脳です。左脳に情報が入っても使うことがなければ忘れられます。即時記憶の85~95%は7秒後には忘れ、中間期記憶に残った10~15%も2年後にはほとんど忘れられます。2年以上保てる長期記憶に残るのはわずか1~2%しかありません。
それに比べて右脳は図やイメージ、写真など視覚概念の脳です。視覚化して右脳を介して入った情報は忘れにくいという特徴があります。そして、記憶に残ったものが入ってくる情報に影響しています。つまり、目に入ってくるもの、聞こえてくるものの情報量は膨大なので人間は脳幹網様体というところでフィルターをかけて必要な情報だけを脳に到達させています。例えば、時計の秒針の音はいつも聞こえているはずなのにふだんはほとんど聞こえず、気になりだすとうるさいほど聞こえることがあります。たくさんの顔写真のなかで、自分の顔や知っている人の顔は早く目に飛び込んできます。
このように情報は記憶に残っているものや意識しているものを優先的に脳に伝えられます。全く知らないものや興味のないもの、意識していないものは、フィルターで除去されてしまう可能性が高いのです。自分が引き寄せたい情報やチャンスを逃さないためには、ふだんから理想像や手に入れたいもののイメージを頭に描いておき記憶に定着させることが大切という訳です。
マインドフルマインドマップを作る
今回ご紹介するのは「心を整えるマインドフルネスCDブック」などの著者である人見ルミさんがオリジナルプログラムとして教えている「マインドフルネス・マインドマップ」です。
マインドフルネス思考に基づいてマインドマップを作成する方法です。
■マインドマップ作成法
【1】白い紙と4色くらいのカラーペンを用意します。紙の中央には自分のイメージアイコンを描き、その上下に大きな木をイメージして太い幹や根っこを描きます。
【2】全体を4分割し、それぞれの領域に枝葉をのばし、葉っぱにタスクや夢などを思いつくまま書き足していきます。
【3】左上は仕事、右上は人間関係、右下には自分に対してやってあげたいことを書いていきます。
【4】そして最後に、左下の領域へ志、自分の人生で最も大切な軸について描きます。何も思い浮かばないというときは、10分ほど呼吸瞑想をして意識を戻していくときに改めて人生の志を見つめて、思い浮かんだら書き留めていきます。
詳しい方法は人見ルミさんの著書「仕事が速く、結果を出し続ける人のマインドフルネス思考」(あさ出版)を参照してください。
出来上がったら、時々見返してみましょう。1ヶ月おきや3ヶ月おきに書き足したり修正したりするのがオススメです。やりたいことや目指すことが少しずつ変化することに気づくはずです。こうして時々立ち止まる機会を持つだけで、本当の自分らしい生き方を発見できるのではないでしょうか。
株式会社マインドフルヘルス代表山下あきこ
医学博士、脳神経内科・内科医師。2016年に健康習慣を身につけるサービスを提供したいと考え、株式会社マインドフルヘルスを設立。