そもそも「遺言」とは? その効力や書き方について【弁護士が教えるかしこい相続相談所 #3】

そもそも「遺言」とは? その効力や書き方について【弁護士が教えるかしこい相続相談所 #3】

こんにちは。弁護士の中川みち子です。♯1と♯2で相続や相続放棄についてお話しましたが、主に民法で定められた法定相続の内容でした。今日は、「遺言」を作成して法定相続と異なる人や割合で遺産を分ける場合についてお話します。


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そもそも遺言ってなに?

「遺言」があればどうなるのか。

相続人の範囲や、相続の割合は、民法で定められています。しかし、子どもに均等に相続させるのではなく、よく面倒を見てくれた長女に遺産を多めに残したいとか、長男の配偶者にも遺産を分けたいような場合はどうしたらよいのでしょうか?

答えは「遺言」を作成することです。

「ゆいごん」と「いごん」と二つの読み方があり、弁護士は「いごん」ということが多いです。死後のために言葉を残すという意味では「兄弟姉妹仲良くして下さい」というのも遺言ですが、法律上の相続に関する内容が記載されているものを遺言(いごん)として区別しているという説があります。

まず、遺言を残しておくと、遺産の配分については遺言が優先されます。たとえば、配偶者と兄弟が法定相続人である場合、「配偶者に全ての財産を相続させる」との遺言を残しておけば、配偶者だけが遺産を相続することができます。

もっとも、後に説明する「遺留分」がある場合は必ずしも遺言どおりになりません。また、法定相続人や遺言で財産を渡すとされた人達全員が同意した場合は、遺言で指定された内容以外の分け方をすることも事実上可能です。

注意すべき点はありますが、残された家族が相続でもめないために「遺言」というラブレターを残しておくことは意味があります。

遺言を書くべき人

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1、子どもがいない人配偶者とふたりきりという方は、法定相続だと配偶者は親や兄弟と共同で遺産を相続することになります。あまり行き来のない兄弟であれば、兄弟ではなく妻にすべての遺産を残したいと考えるのが普通でしょう。その場合は配偶者だけが相続するように遺言を作成しておきましょう。
また、子どもも配偶者もいない方で、親や兄弟に法定相続の割合で相続されることを望まない場合は遺言を作成します。たとえば、よく面倒をみてくれる妹だけに残したいような場合です。

2、相続人以外の方に残したい人
法定相続人以外、たとえば世話になっている長男の配偶者や、近所の友人に残したい場合は、これらの人に「遺贈」するという遺言を書く事になります。法律婚をしていない夫婦やパートナーがいる方についても、遺言を残さないと遺産を渡すことができないのでぜひ遺言を作成しておきましょう。

3、その他
あまり一般的ではありませんが、子どもや兄弟など相続人になる人の中に、所在が分からず連絡が取れない人がいる場合は遺言書を作成しておくとよいです。法定相続になった場合、ひとりでも相続人が掛けると遺産分割協議ができず、手続が非常にややこしくなるからです。

遺贈とは

「遺贈」とは、亡くなった時に他人に遺産を渡すことです。他人とは相続人でも相続人以外でもよいですが、相続人の場合は「相続させる」と遺言するため、相続人以外に残す場合に使うことが多いです。渡すのは遺産の一部でも、全部でもかまいません。

先日、「負担付遺贈」の遺言を作成しました。相続人ではない他人に遺産を渡すが、渡した遺産の範囲内で残された妻を経済的に援助して欲しいという内容でした。通常、負担のない遺贈の場合は皆さん喜んで受け取られますが、負担付の場合はできるかどうか検討する事になります。貰いたくないと思った場合は遺贈を放棄することもできますが、場合によっては放棄の手続が必要です。

遺留分

「遺留分」とは、配偶者と子ども、親に限り認められた最低限度の遺産の取得権限です。兄弟には遺留分はありません。

そのため、被相続人が長女に遺産を全て相続させるとの遺言を書いた場合であっても、他の相続人は最低限度の遺産として、法定相続分の3分の1の2分の1を長女に請求することができます。たとえばほかの相続人に該当する人物として、配偶者と次女がいる場合は、配偶者は遺産の4分の1、次女は8分の1を引き渡すよう長女に求めることができます。

元々は被相続人の財産なのに、どうして自由に処分できないのだろう?と思いますが、こんな例を考えてみて下さい。

Aさんは妻と幼い子どもがいるのに不貞の果てに持家をでて別の女性Bさんと生活するようになりました。妻が離婚に応じないので、Bさんに全財産を遺贈すると遺言を書いてすぐに亡くなったとします。Bさんに全財産が渡ると、妻は住む家を追われ、たちまち生活ができなくなります。Aさんが生きていれば妻は婚姻費用を受け取れ、離婚しても養育費を受け取れていたのにです。このように、扶養されていた者の生活保障や相続への期待を保護するため、遺留分という制度があるのです。

遺言の作り方

遺言には、緊急時に行うような特別の方式のものや秘密証書遺言もありますが、公正証書遺言か自筆証書遺言が基本です。なお、遺言は15歳から作成できますが、認知症が重くなった場合など遺言能力に欠けるときは遺言を作成しても無効になります。

公正証書遺言

全国にある公証役場で、公証人の立会いのもと作成する遺言です。作成された遺言は役場で保存されるため変造等の恐れがなく、紛失の危険も防止できます。遺言者が死亡した後で、相続人が遺言の有無を確認することも容易です。そのため、自筆証書遺言では必要な家庭裁判所での「検認」という手続が不要です。
遺産予定の財産額に応じて作成手数料は必要ですが、遺言に従った相続手続が迅速に行える点で優れています。

自筆証書遺言

すべての事項を自筆で記載して押印して完成させるのが自筆証書遺言です。思い立った時に費用を掛けずに作成できることがメリットですが、作成者が死亡した時は、遺言を開封せずに家庭裁判所に「遺言書の検認の申立」をする必要があります。この「検認」を経ていない遺言では、金融機関などでの手続に使用できません。
「検認」では、家庭裁判所から相続人全員に検認日の連絡がなされます。家庭裁判所から呼出しを受けて不安になる人がいたり、相続できると思って遠方から立会いにきたけれど当てが外れたなど、親族間での軋轢を産む原因にもなりかねません。さらに時間もかかる点がデメリットといえるでしょう。

相続法の改正で予想される変更点

現在国会で審議されている相続法の改正案では、自筆証書遺言の中で財産目録のみパソコンで作成して別紙として扱える方法や、自筆証書遺言を法務局に保管する制度の新設が検討されているので、今後の改正には注意が必要です。

40代だって遺言書を作るのに早いということはない!

「子供に全ての財産を相続させる」というような簡単な内容の場合は、自筆証書遺言で残すことも容易ですし、公証役場で作成の相談をすれば作成できます。ただ、亡くなる順番は年齢順ではないため、相続させようとした人が先に亡くなる場合を考えておく必要があります。また、遺留分を侵害する内容の遺言はかえって争いの元になることもあります。
アラフォーで遺言をつくるとなると、子どもがいない場合や財産を有効に活用したいという人が多いかもしれません。遺言では条件を付けたり、遺贈先を遺言執行者に委ねる事も可能ですが、そういう場合は複雑な遺言になりがちです。有効で揉めない相続のために、遺言作成は弁護士などの専門家にしっかり相談してください。。

遺言を作成するタイミングとしては、思い立った時に作るのが一番です。
人は亡くなる時を選べません。また、いつ遺言能力が無くなるかもわかりませんから、40代で遺言書を書くのに早すぎることはありません。遺言はいつでも撤回して、新しい内容に作りかえることができますから、家族への最後のメッセージとして遺言を書いてみてはいかがでしょうか。

弁護士 中川 みち子



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この記事のライター

平成17年10月に大阪弁護士会に登録する。平成21年8月にきらり法律事務所を立ち上げ現在に至る。

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