争いにならないために 「親の遺産相続」の方法【弁護士が教えるかしこい相続相談所 #4】 | 大人のワタシを楽しむメディア
争いにならないために 「親の遺産相続」の方法【弁護士が教えるかしこい相続相談所 #4】

争いにならないために 「親の遺産相続」の方法【弁護士が教えるかしこい相続相談所 #4】

こんにちは。弁護士の中川みち子です。親との別れは必ずやってきます。残された兄弟間では、親しい関係だからこそ遺産や金銭の話はしにくく、関係が微妙になることはよくあります。 親の世代からは相続で兄弟仲を引き裂かないために、子どもの世代からは誤解や思い込みで兄弟の関係を悪化させないようにかしこい相続の方法を学びましょう。


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不平等がキーワード

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親が亡くなった場合、子どもは法定相続人になります。子どもが結婚して氏が変わっても相続できるの?と聞かれることがありますがもちろんできます。そして、子ども同士の法定相続分は平等です。親が遺言を書いていて子どもに残さない内容であっても、子どもには遺留分があるので遺産の請求が可能です(♯1~3参照)。子どもが複数いる場合、つまり兄弟姉妹が揉めるパターンはとても多いです。親の相続で揉めるパターンを見ていきましょう。

不平等な遺言

法律上の相続分は平等とされる兄弟ですが、親からすると必ずしも遺産を平等に残したいと考えるわけではありません。事業を長男に譲りたい場合は事業会社の株式を長男に譲るとしたいですし、生活に困らない子より不安がある子ども、近寄らない子どもより常に気にかけてくれる子どもに多く残したいというのは人情です。そのため遺言で不平等な相続を指定することがままあります。子どもからすると、兄弟なのに平等に扱ってほしいという不満から、相続が大揉めに揉めることがあるのです。
それでも、遺留分を侵害されていない限り遺言が優先されるので、不平等に扱われた子どもは不利です。そこで、「遺言」自体が無効だと争われることになります。

生前贈与の不平等

親は生前に子どもに教育費や結婚、事業の独立などの際にまとまった贈与を行う事がよくあります。「長女は大学まで出してもらったが私は大学に行っていない」「次女は事業を始める際に親に資金を借りたが返していないのではないか?」など、生前に貰った金銭や、多く利益を得た部分を指して、相続以前の不平等を相続時に精算して欲しいと望むことが争いの発端になります。
生前に受けた贈与等については、「特別受益」として遺産分割の際に考慮することは可能です。しかし、数十年前の贈与の資料が残っていることは稀であり、立証としては難しいでしょう。

情報の不平等

兄弟の一人が親と同居又は近くに住んでいて親の預金を管理しているような場合、遠方の子どもが親の遺産が少なすぎる、近くの兄弟が利益を受けていたのではと疑心暗鬼になることがあります。確かに親の財産を取り込む場合がない訳ではありませんし、取り込み額が高額になれば放置すべきではないです。しかし、親の財産は親が自由使えるものですから、多少近くの子どもに小遣いを渡したり、生活費の負担をすることについて目くじらを立てるのもどうでしょうか?
疑心暗鬼になる理由は、自分だけが財産の状況を知らされていないという情報の不平等なのです。
なお、相続人の中に一定期間親の介護を行った人がいて、それによって親の財産の減少を食い止めたような場合は、「寄与分」として多めに相続することが可能です。

親がやってはいけないこと このような争いになり易いパターンから、親がやるべき事とやってはいけないことが見えてきます。

不平等な遺言を作成する場合は理由を説明する

兄弟間での争いをなくすために、遺言に「付言事項」を書いておくのも良い方法です。「長女は大学に行かせ、次女には事業資金の一部を援助した。これらの金額は同程度だったので差はないと思う。しかし、次女は最後まで同居して私の世話をお願いすることになるし、住む場所を確保する必要があるので次女に自宅を残すことにする。」など、被相続人が何を考えて、どうして欲しいと考えているのかが分かれば、争う気持ちは冷めていくでしょう。

生前贈与はオープンに

先ほどのように、「付言事項」で生前贈与の内容をオープンにしたり、子どもらそれぞれに対して、「長女には大学費用がこの位かかった、次女はこれがなかったから同程度を事業資金として援助するね。」と説明しておくことで、「不平等ではないこと」を子どもたちに認識させることが重要です。

財産管理は書類を残す

社会福祉協議会が財産管理をする場合や、弁護士が財産管理を受任する場合、必ず一定の頻度で管理内容を書面で報告します。これと同じように、子どもが財産管理をする場合にも、簡単なメモ程度であっても残すように頼んでみてください。そうすれば、子どもの使いこみなどの疑いを受けずに済みます。

子どもたち全員にいい顔をしない

争いになるもう一つの理由として、親が気を使って、子どもたちそれぞれに、「面倒をみてくれたら財産は全部あなたに残す」「家はあなたにあげる」などと言っている場合があります。将来の介護のことも考えれば子どもたち全員に好かれるようなことを口にするのは良くあることです。でもそれは決してするべきではありません。いい顔をしたいがために、子どもに言われるがままに何度も遺言を書き換えて、余計子どもらの骨肉の争いを助長する場合だって起きかねません。兄弟間の相続争いを起こさないよう、親の気配りも重要です。

遺留分減殺請求

親が残した遺言によると、自分の取得分が法定相続分の2分の1より少なくなるような場合は、「遺留分減殺請求」をすることが可能です。但し、親が亡くなってから1年以内に行う必要があります。
たとえば、父親が被相続人で、相続人が長女と次女だとします。父親が、「長女に全部の財産を相続させる」と遺言を残した場合、次女は法定相続分の2分の1×2分の1で、全体の4分の1に相当する部分について、長女に取り戻しを請求することができます。
遺留分の争いになりそうな場合は、遺言の内容が遺留分を侵害しないように記載するよう注意しましょう。

遺留分の放棄

「生前に相続放棄してもらうことはできないの?」と聞かれることがあります。残念ながらできません。しかし、親の遺産はいらないよという子どもがいれば、他の子どもに遺産を相続させるとの遺言を書いて、いらない子どもには「遺留分の放棄」をしてもらうことで、遺留分減殺請求の危険を防止することが可能です。遺留分の放棄は家庭裁判所に申立を行い、許可を受けて初めて有効になります。
 
このように、兄弟姉妹間での遺産分割は一番紛争になりやすく、一旦争いになるとその後の関係が絶縁となるため、「平等に」を合い言葉に配慮が必要です。

弁護士 中川 みち子



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この記事のライター

平成17年10月に大阪弁護士会に登録する。平成21年8月にきらり法律事務所を立ち上げ現在に至る。

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