
相手を責める気持ちに気づく
日中の忙しい仕事が終わったら、今度は子供の幼稚園や塾の送り迎え、家に帰れば夕飯の支度に子供達のお風呂入れ。やっと子供を寝かしつけたら、食器の片付け、アイロンかけ・・・。ワーキングマザーの稼働時間は長く、座る時間もありません。
そんなとき夫が遅い時間に仕事から帰り、「あー疲れたー」と言ってソファーに座り、テレビを見ながらビールを飲みはじめたら・・・。
頭の中でつぶやきが始まります。
「私も疲れてるのに。どうして分かってくれないの?」
「どうしてもう少し早く帰ってくれないの?」
「どうして家事や育児を手伝ってくれないの?」
こんな風に、相手を責める気持ちが湧いてきて、心の中で「どうして〜なの?」と、繰り返し考えてしまうことがありませんか?
心の中で相手を責めてばかりいると、眉間にしわがより、相手の嫌なところが余計に見えてきてしまいます。しかし、その批判的な問いかけに、ちゃんとした答えはあるのでしょうか?
それは“疑問系”ですが、責める気持ちがぐるぐる回っているだけなのです。もし、そんな心のつぶやきに気づいたら、気持ちを切り替えるチャンスです。
疑問を解決するための建設的な問いに変えてみましょう。
「この状況をどうしたらいい方向に変えられるか?」という前向きな方向に考えをシフトするのです。
例えば、「どうして分かってくれないの?」という問いを前向きにシフトしてみると、こんな問いが思い浮かぶかもしれません。
「どうしてそんなに疲れているのかな?」
「どんな風に伝えたら、こちらの状況を分かってもらえるかな?」
まず、相手がどうして疲れているのか、こちらからも耳を傾けてみましょう。そして自分の気持ちや状況を伝えないで分かってもらおうとしている自分にも気づいて、相手に理解してもらう方法を考えてみましょう。
感謝したいことをリストアップする
感謝の気持ちを持つことは、ネガティブな気持ちを切り替えるのに一番効きます。そもそも、「私ってかわいそう!」「私ばっかり損してる」という自分を哀れに思う気持ちがあるから、助けてくれない誰かを批判したい気持ちが湧いてくるのです。
「私って、なんて恵まれてるんだろう!」「ありがたいなー」と思っているときには誰かを責めたり恨んだりする気になりません。
感謝する対象は、目の前の相手でなくても構いません。「今、感謝できることってなんだろう?」と2、3個思いつくように考えてみましょう。
それはシンプルに「ご飯が食べられること」や「戦争のない国で生活できていること」「家族がいること」など、たくさんあるはずです。そんなことを考えていると、いつの間にかイライラが減っているのではないでしょうか?
相手も「わたしと同じ」と考える
インドのパーリ語で「メッター・バーバナー」と言われる、慈悲の心を育む瞑想があります。心の中で、自分自身や他の誰かを思って幸せになりますようにと祈る瞑想です。
相手を思いながら
「この人はわたしと同じように、心と体を持っている」
「この人はわたしと同じように、気持ちや考えを持っている」
「この人はわたしと同じように、苦しみや痛みを感じたことがある」
・・・と、自分と同じように悩み苦しむことがある事に気付き、共感し、思いやりの心で相手の立場に立ってみます。
そして、
「この人が幸せになりますように」
と祈ります。
非科学的な感じがするかもしれませんが、相手を思いやっているとき、あなたの心は安らぎ脳の活動も変化して脳疲労が軽くなっているのです。
相手を思いやることで、自分のイライラがなくなり疲れも取れるなんて素敵ですよね。
会話を増やす
うまくいっている夫婦は、うまくいかない夫婦に比べて、一緒にいて話す時間が週に5時間多いという研究結果があります。まずは、毎日5分ずつでも相手を理解しようという気持ちで話を聴く時間を作ってみましょう。相手が話す様子がなければ、何か行動したことに対して認めて、感謝の気持ちを表しましょう。
「窓を開けてくれてありがとう!」
「早く帰ってきてくれてありがとう!」
「いつもお仕事頑張ってくれて、ありがとう!」
2人でソファに座ったり、乾杯したり、ニュースについて語ったり。同じ時間を共有するときっと会話が増えるはずです。
会話が増えると、お互いの考えていることが伝わりやすくなり、誤解が生じにくくなるのです。そして、絆が深まり支え合う気持ちが強くなり良いことづくめです。ぜひ、相手に対してイライラや不満が溜まっているな、と感じる時こそ、相手の幸せを祈り、些細なことに感謝する気持ちを持ち、話を聞いてみてくださいね。それが結果的にあなた自身の幸福度を高めることになるのですから。
株式会社マインドフルヘルス代表山下あきこ
医学博士、脳神経内科・内科医師。2016年に健康習慣を身につけるサービスを提供したいと考え、株式会社マインドフルヘルスを設立。