“大人になる=我慢する” と思っていませんか?【“心のマナー”メソッド#07】

“大人になる=我慢する” と思っていませんか?【“心のマナー”メソッド#07】

大人になるってどういうことでしょうか。感情を外に出さないよう我慢したり、その場が和むよう取り繕ったり、ケンカになるぐらいなら何も言わない、など、大人になるイコール我慢できる人、だと思っていませんか?本当の意味で“大人になる”とはどういうことなのか、大網理沙さんに教えていただきます。


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大人の女性を構成するのに欠かせないもの

“大人”の定義として年齢で計るということがまずできますね。「何歳からが大人だと思いますか?」と、講演で質問をすると、多くの学生が「20歳」「社会人になったら」「仕事をするようになったら」と答えます。現在の日本では20歳で成人式があり、それが大人へのひとつの節目だと考えられています。

ですが、20歳の誕生日を迎えたからと言って急に大人になれるわけではないように、「大人になる」というのは、じわじわとなっていくものではないかと思います。 私が、「大人の女性」を構成するのに欠かせないと思うものが、“ライフスタイルに軸があること”と“生き方に基盤があること”です。そして、具体的にいうとさらに3つあります。

人に対しても自分に対してもバランスをとることができること

まず1つめは、「バランスをとれること」。誰かと比較して落ち込む、失敗して落ち込むことってありますよね。そして、大人になればなるほど、自分以外のことでも悩まなければいけなくなってきます。

そこで、気持ちを立て直す方法、奮い立たせる技など、自分なりの処方箋を持って自分自身の心のバランスをとれることがとても大切です。そして、時には誰になんと言われても無我夢中で没頭したり、時には優しい笑顔で相手の話に耳を傾けられたり、一見、相反するようなことを偏り過ぎずにすることができること。人に対してバランスがとれるというのはとても大切なことです。

贅沢な時間を持って自分で自分を輝かすことができる女性

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2つめは、「贅沢な時間の過ごし方ができること」です。贅沢というのは、お金をかけることではなく、過ごし方の濃密度のことです。私が暮らすアメリカはFarms(=農園)が人気です。夏だとブルーベリー、ラズベリー、ピーチ、秋になると、とうもろこしやカボチャが収穫でき、週末はファミリーやカップルで賑わいます。日本以上に日差しの強いアメリカで日焼け止めは欠かせませんが、時には青空の下、日差しをめいっぱい浴びて過ごすことも贅沢な過ごし方だと感じています。

バースデーに素敵なレストランでお祝いすることも贅沢な時間ですし、家族一緒に過ごせる何気ない時間も贅沢。好きなだけ自分の仕事や趣味に没頭できる時間も贅沢です。そんな1分1秒を贅沢な時間にして、自分を自分で輝かすことができる女性。自分をきちんと、ときめかせられる人こそ、素敵な大人の女性だと思います。

一さじのスパイスをもっていること

3つめは、「スパイスを持っていること」です。私は、日本の礼法の講師資格を所持していますが、80代の恩師はどんなに暑い猛暑の日でも、涼しげに着物を凛と着こなしています。恩師は言います。「暑いのよ、とっても。でもね、涼しそうに着るのよ。見た人が涼を感じるように着るの」と。

そう語る恩師の横顔は、思わず心を引き込まれるような美しさでした。それこそが、粋であり色気であり、魅せるということなのだと感じました。私たち日本人は、親しみやすさを重視します。可愛いもの、柔らかいものを好む傾向があります。私もそういうものも好きなのですが、年齢を重ねた大人の女性には、もうひとつスパイスが必要だと感じます。

料理も隠し味があるとグッと味が引き立つように、私たち大人の女性も、そんな隠し味を持ちたいものです。目が離せなくなる、心をつかまれるような美しさ。それは、生き方から漂う迫力のようなもので、「これだ!」と思うものを持って生きる覚悟を決めた潔さの中にうまれる美しさだと感じます。

自由な大人になりたいのなら自由を掴みに行く勇気が必要

自分らしくいつも自由でいたい。ですが大人になると、好きなことだけをしていればいい、というわけにはいかないシーンもでてきます。例えば、アメリカは車社会です。日本と違って鉄道が発達していないので、基本的に移動は車です。車が運転できないと子どもの幼稚園の送り迎えもできないですし、スーパーに買い物にも行けません。

それに、日本のように郵便の再配達のシステムが発達していないので、不在だった場合は郵便局まで運転して、自分で取りにいかなくてはいけません。つまり、運転できないと、日常生活が不自由になってしまうのです。私は車の運転がとっても苦手です。完全なペーパードライバーで、免許を取った20代の頃から一度も運転していませんでした。ただアメリカではそれではやっていけません。

大学生があふれる教習所に、イチから習う気持ちでほぼ毎日、仕事の合間に通いました。教官に注意され励まされた数カ月…それでもまだまだ残念ながら苦手の域をでません。「30歳を過ぎたら苦手なことに取り組むのではなく、得意なことを伸ばしていく」それが私のモットーで、著書にもそう書いています。

言葉どおり、30歳を過ぎた頃から、得意なこと、好きなことに全力を注いできました。しかし、苦手なことに挑戦しないといけない時期がきてしまったのです。我慢をしなくてすむように過ごすには、自由に動ける羽根が必要だと、いつも感じます。今の私にはそれが車の運転が自由にできることですし、それは、言葉にも時間にもお金にもいえることだと思います。自由になれたらなぁと思っていても、願っているだけでは残念ながらなれません。なので、自由を掴みにいく「少しの勇気」が必要なのです。

価値観をアップデートしていくことが大切

30歳を過ぎた頃から、私たちの価値観は完成されつつあります。今まで頑張ってきた経験、培ってきた恋愛や人間関係、たくさんの人が自分に残してくれたもの、言葉、風景、香り、味、思い出。そういうものの積み重ねで、今の私たちの価値観はできあがっています。価値観は揺るがない基盤を持ったうえで、アップデートしていくことが重要だと感じます。時間は流れ、自分の立場も変わっていく。だからこそ、同じままでいようとせず、新しい風を取り込もうとする気持ちを忘れないこと。

その方法として私のおすすめは、旅にでることです。旅といっても遠出をすることでなく、日帰りでも1時間でも。 私は1時間でも時間ができたときは、美術館へ行くことにしています。舞台や映画と違って、時間の制約もなく、ふらっとひとりで行くことができる身軽さがあります。考えごとをしたいときは美術館へ行って考えます。それは、癒しというより、何かを掴みにいこうとする「小さな冒険をする」イメージです。

たとえば、旅は出発する前からすでにはじまっていて、旅に持っていきたいもの、何を着るか、何を見るか、何を味わうか、何に触れるか、何を大切にしたいか。それにはもう、自分自身の人生が凝縮されて詰まっているといってもいいくらいです。自分の生き方が改めて見えてくるチャンスだと感じます。「子どもがいるからなかなか難しい…」という人は、むしろ子ども目線で組み立ててみてください。尊敬する社長は「子どもに何を残したいかを考えることで、自分の人生の大切なものが見えてくる」と言っていて、私はその意見にとても共感しています。

大人になる素晴らしさは“すべて自分で選べる”ということ

大人と子どもの違いは、与えられた羽根で飛ぶのか、自分で掴んだ羽根で飛ぶのかの差なのかもしれません。大人になるということは、「すべて自分で選べる」ということ。自由には常に覚悟と責任と孤独がつきまといます。

それを背負うと決心したとき、本当の意味で私たちは大人になれるのかもしれません。「30代になってから仕事が格段と面白くなった!」という話をよく聞きますが、まったく同じことを私も思います。私自身、20代は仕事を楽しむ余裕がまったくなく、目の前のことで精一杯。常に全力疾走して、バタンと倒れて、よろよろ起き上がって、痛い足を抑えて走る…というような日々だった気がします。

ですが、30歳を過ぎた頃から、見えている景色が変わってきました。少しずつやり方がわかり、時間の配分、進め方、面白さがわかってくる。 大人になる良さは、「まだ見えていない景色を見られること」。これはそこに行ったときにしかわからない、大人になったときにしかわからない楽しさであり素晴らしさだと思います。世間一般でいう、「大人」になってから私もだいぶ経ちますが、「まだまだ、まだまだ、これから新しい景色と出会いたい!」と思いながら過ごしています。

リサ・コミュニケーションズ代表 大網理紗



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この記事のライター

話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。国際基準マナー講師。

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