
妊活は落ち込みの連続
毎日の基礎体温確認。スマホアプリなどに記録して管理をしている人も多いでしょう。明らかに数値が下がっていたら「あーまたダメか」と落ち込みますよね。そして、生理がくると「やっぱりね」とまた落ち込んでしまう…。
両親に会った時に何か聞かれるかな?と考えるとさらに気分が重くなる。期待に応えられない自分を責めたり、悲しくなったり、過剰な期待をあからさまに表す周囲に怒りを覚えたり。
すぐに妊娠するわけはないと頭で分かっていても、がっかりを何度も繰り返すうちに精神的に苦痛が増していきます。妊娠したいと思っている間は、生理がくるたびにがっかりするのが妊活です。成功するまで毎月落ち込むのが妊活のデフォルト(初期設定)なのです。
ものすごく頑張っているのに周りは無神経なことを平気で言い、幸せな子連れ家族を見ると心が痛みます。ひたすらそれに耐える日々を乗り越えて行かなくてはなりません。もしあなたが妊活中なら、すでに様々な辛い状況を経験し、それに耐えたり乗り越えたりしていると思います。そんな状況で毎日を送っているだけですごいことです。まずは自分を褒めてあげてください。
私、毎日闘ってるんだね。よく頑張ってるね。辛いこと、いっぱい耐えてるね、と。
落ち込んだ気持ちを早く消すことができる20分ルール
とはいえ、落ち込むようなことがあってもできるだけ早く気持ちを切り替えたいものです。
切り替える=考え続けない事
考えない事=思い出さない事
思い出さない事=忘れる事
受験などでは、いかに記憶するかが大事ですが、笑顔で生きて行くにはいやな事を早く「忘れる力」がとても大切なのです。
人の記憶には、エピソード記憶と意味記憶があります。エピソード記憶はある経験を通して学んだ記憶です。意味記憶とは“数字や言葉”などを“意味”と結びつけて記憶に残す事を言います。エピソード記憶は意味記憶よりも記憶が保持されやすいのが特徴です。ですから、英単語はなかなか記憶に定着しないのに、グサリときた言葉は忘れたいのにしっかりと覚えているのです。
ドイツの心理学者エビングハウスによると記憶は20分後には42%が消え、1日後には67%、31日後には79%忘れます。覚えた直後が最も忘れやすいのが特徴です。そのあとはゆっくりと忘れていきます。
これを利用して、記憶に定着させない方法をとるようにしましょう。一番のコツは、できるだけ早く違う事を考え20分くらいそれに没頭する事です。落ち込む出来事が起こった時のために、その事を考えないで済む熱中できる“なにか”を準備しておく事をお勧めします。
例えば、誰かにこの記憶と関係ない用件のメールをする、好きな音楽や画像をスマホから探す、ゲームをする、本を読む、食事の支度に集中するなど。
逆に、この出来事を誰かにすぐに電話で話したりメールしたり、何度も繰り返し思い出して考えていると、記憶にしっかりと定着します。そして記憶の引き出しの浅いところに留まってしまい、何かにつけてこの事を思い出すサイクルに陥ります。図らずも忘れたい事をその日のうちに何度も復習してきっちり記憶に残す作業をしているのです。
ショックな出来事をずっと考え続けると、悪い記憶が脳に定着して何度も思い出し、その結果心が疲れていきます。落ち込む事があったら20分別の事をするルール、ぜひ実践してみてくださいね。あなたの生活は妊活だけではないはずです。あなたがすぐに没頭できる事は何でしょうか?
比較と批判に気づく
今、幸せかどうかは、あなた自身が決めています。しかし世間の流れや周りの意見は、自分の気持ちを捻じ曲げてしまう威力を持っています。他の誰かと自分を比較している事に気づき、自分が持っている幸せな部分に目を向けましょう。他の誰かとの比較をやめたら気持ちが楽になります。欲しいものを持っている人を見ると、持っていない自分がみじめに思えたり不幸に感じたりするかもしれませんが、その人が欲しがっているものをあなたは持っているかもしれません。
どんなに親しい人でも私たちが見ている他人は、その人のほんの一部にすぎません。子沢山で楽しそうにしている家族も、仕事や健康などで大変な苦労をしているかもしれないのです。すべてが順調な人の方が少ないでしょう。
妊活には様々な障害があります。自分の体、夫の体、夫の協力、仕事、子どもがすでにいる状況での妊活なら子どものお世話、金銭的な問題などです。どれを取っても思うようにいかないと、「どうして私の体は…」「夫がもっと協力してくれれば」「職場の理解があれば」など、様々な思いがよぎるのではないでしょうか。
ここがこうなったら良いのに、と思うのは自然な事です。しかし、その対象を批判する気持ちにはまり込んでいる自分に気づくと、それが「考えても仕方がない事」なのか、「解決方法を見つけられそうな事」なのかという建設的な考え方に方向を変えることができます。思考や感情に気付いて、物事を見る方向を変えてみる、これがポイントです。
いくつかの人生パターンを思い描く
妊活をしていると、知らず知らずのうちにあなたのゴールは子供を産むことになっているかもしれません。しかし、長い人生のなかで子供が生まれてから巣立って行くまでの期間は20年前後です。中学から寮に入ったりすれば12年くらいで自分のそばから離れてしまいます。その後もあなたの人生は続いていくのです。子供がいれば老後が安心という時代でもありません。
100年生きる前提で、人生パターンをいくつかイメージしてみてはいかがでしょうか?
まずは子供のいる人生。それで得るもの失うものについて考えてみます。大きな宝物を得る反面、産後しばらくの間は自分の時間がほぼ失くなるでしょう。経済的には、一人育てるのに3,000万円かかると言われています。仕事はどうするのか?キャリアアップは?子供が巣立ったあと、どんな生き方をするのか…。
それから、子供のいない人生。12〜20年の子育て期間がない場合です。その場合、あなたの人生に新たな可能性や選択肢が生まれるかもしれません。金銭的、時間的な余裕ができて、暮らす場所も仕事の幅も広がるでしょう。子供がいないからこそ出来ることもたくさんあります。
あなたらしい人生を、いろんなパターンで描き、自分を肯定する力を身に着けてくださいね。
株式会社マインドフルヘルス代表山下あきこ
医学博士、脳神経内科・内科医師。2016年に健康習慣を身につけるサービスを提供したいと考え、株式会社マインドフルヘルスを設立。