
自分の意見を言わず、ただ“聞く”
この人に会うと愚痴ばかり聞かされる、ということありますよね。ママ友や友人同士で、いつもそんな話題ばかりしているグループがあったりします。例えば、同じ人がお決まりの誰かの愚痴を言いはじめる。そこで、聞いているあなたが「それはひどいよね!その人ってさ・・・」なんて言うと、相手は同調してもらえてホッとし、この人ならもっと話しても大丈夫と感じます。そうして、誰かに対する批判や災難な状況について語り続けるのです。
これにはメリットとデメリットがあります。
まずメリットは、具体的に言葉にすることでお互いのストレスを軽くしています。さらに、相手に聞いてもらって同調してもらうことで間違ってないという承認をもらって承認欲求が満たされています。
デメリットは、(この場合メリットの裏返しでもありますが)あなたに愚痴を言うとストレスが軽くなることを学んで、次に何かストレスを感じたらまたあなたに言いたくなるということです。要するに、「あなたに愚痴を言えばスッキリする」ということを無意識に学んで愚痴をいうのがクセになってしまうのです。チョコレートを食べたらちょっとの間イライラが治るように。
そこで、デメリットのサイクルに陥らないためのオススメの方法があります。
相手が愚痴を言い始めたら、しっかり目を見て聞き、うんうんとあいづちをします。しかし、自分の意見は言いません。口にするのは、「そう、〜で大変だったのね。」というように事実を復唱してあげるだけ。
否定もしないし、盛り上げることもしません。そうすると、相手は聞いてもらった安心感はありますが、思いがエスカレートしてさらに腹が立つこともありません。そして、あなたの反応が思ったより淡白だったらそれ以上語り続ける気が起こりにくくなります。
人の問題を背負わないこと
「一人一宇宙」という考え方が仏教にあります。一人一人にそれぞれの宇宙があって、その中で生きているということです。2人で同じ木を見ている時、それぞれの心を通してその木を見ているので、2つの宇宙にある別の木が存在しているとも言えます。また、相手が感じた痛みを、自分は感じることはできません。「一人一宇宙」の考え方でいくと、その人の痛みはその人の宇宙の中で起こった事とだと考えます。
また、アドラー心理学でも他人の課題に介入すると自分の人生を苦しいものにすると言っています。他人の問題はその人が解決するしかない事です。求められたら手助けしますが、頼まれもしないのにあれこれ考え続けたり介入したりする必要はないという事です。
誰かの愚痴を聞くときは、これはこの人の宇宙の中で起こっていることで、自分の宇宙の中に入ってくるものではないとイメージして一歩下がって聞くようにしましょう。冷淡に感じるかもしれませんが、他人の人生をあなたに変えられないのは事実です。
あなた自身が愚痴を引き寄せていないか
人の文句や批判をしない前向きな人の前で、あなたは愚痴ばかり言っていられるでしょうか?
いつも前向きで未来志向の話をする友人といるときは、自然と明るい話題が増えますし、いつも愚痴をこぼす友人といるときは、自然と愚痴が増えてしまうものです。
もしかすると、あなた自身が愚痴をこぼすのが習慣になっているから、相手も愚痴をこぼしやすいのかもしれません。
まずは自分がどんな発言をしているのか、注意深く気にしてみましょう。話題の中心が第三者になっていませんか?「あの人って・・・」「息子が・・・」「上司が・・・」など、人を批判していることに気づく習慣を作ると自然と愚痴が減ってきます。そんなときは、「私は、批判的な気持ちになっているんだな」と客観的にみるようにするだけで、誰かを責める気持ちが和らぐはずです。
ストレスになっていることを言葉にするのは悪いことではありません。誰かに話すことで気持ちが整理され、心が軽くなります。ただし「その人のどこが悪いのか」ではなく、自分がどう感じているのかに意識を向けて「私は〜と思った」というように、自分を主語にして語ってみましょう。
そして、あなたがいつも明るく前向きな話をしていると、自然と周りの話題も明るくなることに気がつくはずです。明るい話題を引き寄せるための取り組みを、今から始めてみませんか?
株式会社マインドフルヘルス代表山下あきこ
医学博士、脳神経内科・内科医師。2016年に健康習慣を身につけるサービスを提供したいと考え、株式会社マインドフルヘルスを設立。