どんな状態が「家庭内別居」になるのか
「家庭内別居」とは、夫婦として同じ家で暮らしながら
・別々の部屋で過ごす
・顔を合わせない・会話をしない
・家事を分担・協力しない
・食事を共にしない
・セックスをしない
などのように、お互いの生活に関わりを持たない状態を指します。
夫婦だけど、過ごし方は他人。いわば同居人のような形になるのが家庭内別居です。
生活が別々だと、「妻が専業主婦やパートの場合は生活費はどうなるの?」と思いますが、民法では「婚姻している夫婦は、婚姻から生ずる費用を分担する」と決まっていて、お互いの経済的な負担は変わりません。
たとえば、夫婦仲が悪く夫が一方的に妻を避けるようになり、家庭内別居になってしまった場合であっても、結婚している限り夫は妻に生活費を払う義務があるのですね。もし配偶者が生活費を出さないときは、婚姻費用分担請求として支払いを求めることが可能です。
お互いに愛情はないけど対外的には良い夫婦を演じる仮面夫婦と違い、家庭内別居ではそもそも相手との接触を避けることが多く、ふたりがまったく別々の暮らしを続けることになります。
家庭内別居は生活費の負担を気にせず暮らせるのがメリット
完全な別居となると、新しい家を用意するために費用がかかり、生活費の分担が義務といっても同居よりお金がかかるのは避けられません。子どもがいる場合は、引っ越しによる手続きの大変さや父親と引き離されることの精神的な負担なども無視できず、スムーズには進まないこともあるでしょう。
家庭内別居は、経済的な負担を少なくして夫から距離を取れるのが大きなメリットになります。
・今すぐ離婚は考えられないけど、頭を冷やしたい
・今後のことを夫に煩わされず考えたい
・夫婦についてあり方を考え直したい
など、物理的な距離がほしいときの選択肢として、家庭内別居は有効です。もちろん、同じ家に住み続けるので夫と「別居状態」のルールについて話し合う時間が必要ですが、生活を仕切り直すことでイライラが減り、ふたりにとって良い冷却期間となります。
ですが、本当に夫に嫌気がさしているときは、そもそも「同じ家で暮らす」ことが大きなストレスであり、家庭内別居では距離があるといっても気配を感じ続けながら生活するのがデメリットともいえます。
また、両親の仲が悪いのを察した子どもが情緒不安定になったり問題行動を起こしたりと、家庭内別居によって居場所をなくしてしまう心配もあります。
家庭内別居中に不倫されたら、慰謝料は請求できる?
もし、家庭内別居から配偶者が浮気や不倫に走った場合、慰謝料は請求できるのでしょうか。
法律的には、慰謝料の発生は「夫婦関係が破たんしているかどうか」が判断の基準になっており、「客観的に見て婚姻生活の維持が可能かどうか」がポイントです。
家庭内別居の場合、「婚姻生活の維持が不可能」までは判断されないことが多いのが現実です。同じ家で生活を続けていることが夫婦関係の修復は可能と思われやすく、もし配偶者が不倫をしたなら慰謝料の請求は認められると考えられます。
逆にいえば、こちらが浮気や不倫をして夫から「慰謝料を払え」と言われても拒否できないということです。家庭内別居であっても夫婦であることを忘れてはいけません。
家庭内別居でもストレスなく過ごすためには
やむを得ず家庭内別居を選ぶ場合であっても、一方的に生活を別々にするのは得策ではありません。「顔も見たくない」「関わりたくない」と思っても、一時的な衝動で動くと本当は修復可能であった夫との関係がさらに悪化する結果にもなります。
どうしても同じ家で過ごすことになる家庭内別居では、まず夫に自分の気持ちを知ってもらうことが必要不可欠です。どうして離れたいのか、家庭内別居を選ぶ理由をきちんと伝えておかないと、取り残された夫はいつまでもネガティブな感情を持ち続けます。
話し合うことで、家庭内別居そのものを回避できることもあるでしょう。もし夫が納得できないと反対しても、別居したい側が筋を通しておくのが夫婦として正しい形です。
「何のために家庭内別居を選ぶのか」をふたりが理解しておけば、後で揉めることが少なくなります。せっかく離れたのに、結局は以前と変わらずケンカばかりの生活になっては本末転倒です。
そして、別居後の生活をストレスなく続けるためには、ルールをしっかりと決めることが重要。食事の仕方やお風呂の使い方など、不用意に顔を合わせないやり方を考え、生活費などお金の管理はどうするか、子どもの送迎なども決めておく必要があります。
どんな形であれ、離婚しない限りは夫婦です。家庭内別居を始めてみることで冷静にお互いのことを考えられるようになったり、逆に離婚の意思が固まったり、今のふたりについて振り返る機会になります。
家庭内別居は、もう一度夫婦として自分はどうありたいか、夫との未来を問い直すチャンスだと思いたいですね。
幸せ夫婦コラムニスト ひろた かおり
「自分の人生は自分で決める」がモットー。難病の自分を支えてくれた夫との生活が幸せに続くように、と強く心に誓い日々を生きる。