“大人にこそ絵本を” アラフォーの今読みたい【心をうるおす大人の絵本#01】

“大人にこそ絵本を” アラフォーの今読みたい【心をうるおす大人の絵本#01】

【絵本コーディネーター・東條知美の大人の絵本シリーズ】軽妙で独特の感性が大人気の絵本コーディネーター東條知美さんによるアラフォー女性へおススメしたい【心をうるおす大人の絵本】連載がスタート! 辛い時悲しい時困った時、大人になった今だからこそ読みたい心をうるおす一冊を紹介していただきます。連載第一回目は【アラフォーの今読みたい 心をうるおす大人の絵本】です。


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大人にとって絵本は、“人生で何度でも出会えるメディア”であり“自分自身をみつめる鏡”

あなたが最後に絵本を手にしたのは、いつの日でしょうか?

「小学校に上がる頃」とか、「子どもが小さい時は読んであげてた」とか、「めいっこへのプレゼントに」...という人がほとんどだと思います。

出版不況と言われる中、子ども向けの本だけは売り上げを伸ばしているなんてデータもあるようですが、“自分のための絵本”を選ぶ大人は少ないのが現実です。

絵本は元々文字をひとりで読めない子どものために作られたメディアです。

単純明快で楽しくて優しい。お花畑で繰り広げられるおとぎ話。そんなもの、私たち大人の女には必要な~し...って思っているのなら、ちょっと待って!

「絵本」はそれだけじゃないんです。

仕事、家事、恋愛、育児、ついでにSNS。大人になった私たちは、なんだか毎日疲れてる。毎日時間がない(ような気がする)。

「忙しいという字は心を亡くすと書く」なんて言うけれど、それじゃ、なくした心を取り戻すにはどうしたらいいんでしょうか?

・・・そんなWOMe世代の女性にこそ、絵本を推奨したいと思います。

寝不足で疲れた顔にバシャバシャ化粧水を叩きこむように。コラーゲン入りドリンクで明日の自分に気合を入れるように。
疲れてカサついた心には、内側からしっとりと潤す上質な「絵本」が効くんです。しかも、ながーく。

忙しくてイライラしてしまった日には、夜、絵本をそっと開いてみよう。
眠りにつく前の、たったの10分間ほどでいい。

読み方はあなた次第。

研ぎ澄まされた文章、心揺さぶられる言葉、うつくしい色や形、「誰かに似ている」登場人物たち。
あらためて絵本を読んでみると、こんなふうに感じられる瞬間があるはずです。

「これは、あのときのわたし(あるいは、あの人)」。

その時あなたは、昔とはちょっと違った絵本の読み方をしている自分に気がつくでしょう。小さな子供のように、虚構の世界に我を忘れる体験は、もうできないのかもしれません。

けれど、大人になった私たちは、「自分の経験に引き寄せて」「より深く」作品を読むことができるようになっています。

大人にとって絵本は、“人生で何度でも出会えるメディア”であり“自分自身をみつめる鏡”。

悩んでいる時に背中を押してくれる。
悲しみにくれる時、静かに寄り添ってくれる。
あなたにとって本当に大切なものが何なのかを気づかせてくれる。

わたしたちは、素直にそこを目指して歩いていけばいい。

大人にこそ、絵本を。

あなただけの絵本を、枕元に置いておきたい一冊を、ぜひみつけてほしいと思います。

初回は【アラフォーの今よみたい 心をうるおす絵本】を二冊ご紹介します。

『100万回生きたねこ』 佐野洋子 作・絵 (講談社)

人生には<何度でも出会える絵本>がある。
幼い子どもには、幼いなりに。若者には、若者なりに。おばさんには、おばさんなりに。
読む度に違う形で、こちらの心をいちいち揺さぶってくるやつ。

・・・
100万年も しなない ねこが いました。100万回も しんで、100万回も 生きたのです。


100万人ぶんの飼い主の愛情をソデにして、みんなみんな嫌いで、死ぬのなんか全然怖くなくて。
ある時初めて野良猫になってみたら、自分のことだけは大好きになっちゃって。
モテて、威張って、高飛車で。決め台詞は、

「おれは、100万回も しんだんだぜ。いまさら おっかしくて!」

でもそのうちに 自分よりもっと好きな相手(白ねこ)ができて。
モテるのも威張るのもやめて、ただ彼女といつまでも一緒にいることだけを願った...そんな一ぴきのねこのお話。

先日、これを一緒に読んでいた子どもが、
「100万回も“生れたて”をやるって、疲れないのかな?」と言った。

どの飼い主のことも好きじゃなかったねこ。
最後に「自分より大切な相手」に出会い、ようやく生き返るのをやめたねこ。

このにくたらしいねこが100万回も“生まれたて”(たしかにたいへんだ)をやってのけた理由を、初めて考えてみた。

もしかしたら…
ねこは、愛されても愛されても、まだ愛され足りなかったのかもしれない。
100万人の飼い主がどんなに可愛がっても、「愛がたりねえよ」・・・と、満たされなかったのかもしれない。

ちょっと、誰かに似ていない?
ほんと、にくたらしいねこだ。

いまさら おっかしくて!

クスン。

『あさになったのでまどをあけますよ』 荒井良二 作 (偕成社)

一般的に男性よりも女性の方が、人生における転機は多い。
就職、転職、恋愛、結婚、妊娠、離職、体調の変化、親の介護、様々な出会いと別れ・・・。

「これからどう生きるべきか」「どの道を選ぶべきか」決断をせまられる場面が人生にはこんなにも多いものなのだと、私たちは気づかされる。
加えて歳と経験を重ねた私たちは、「どの道を選んでもそれは自分の責任」ということも、もう十分にわかってしまっている。
だからこそ、途方に暮れたり不安になってしまったりするのだ。
自信がなくなった時、人はうつむいてしまう。

2011年、東日本大震災が起きた年の12月に『あさになったのでまどをあけますよ』は刊行された。
作者がこの作品にこめた思いは、すでにタイトルに表れている。

あの震災を機に、それまでの価値観がガラリと変わってしまったというWOMe世代の女性は少なくないのではないだろうか。
私自身の記憶をたどってみても、あの思いがけない出来事を前にして、「ほんとうの幸せとは?」を考えずにはいられない日々を過ごしていた。

あの頃、絵本の作者・荒井良二さんは東北でワークショップを行っていた。
「みんなに上を向いてもらうために」絵描きの自分のできることを探した。そして、街中にフラッグを作って掲げた。

夜はかならず明ける。
どこに住んでいても、どの街にも、どの国にも、山にも海にも、あたらしい朝がやってくるから・・・カラフルで美しい風景をたくさん切り取って、こんなにも美しい絵本を紡いだ。

きみのまちは はれているかな?

あさになったので まどをあけますよ


きっと、大丈夫。心配はいらない。
朝になったら、その窓を開けてみよう。



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この記事のライター

子どもから高齢者まですべての層に向け“毎日がちょっと豊かになる絵本”をコーディネート。講演・テレビ出演等、活躍の場を広げている。

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