“引き寄せの法則”はスピリチュアルなものではありません

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――WOMeの記事で「思考は現実化する」というお話を書いていただきましたが、改めてそのことについてお話いただけますでしょうか。
脳は右脳と左脳に分かれていますよね。右脳はイメージを扱い、左脳は言葉を扱います。例えば「貧乏は嫌だ」と思ったとしますよね。「貧乏は嫌だ」という言葉は左脳で処理されるのですが、困ったことに脳は“NO”を理解できません。この場合はNO=“嫌だ”が理解されず、“貧乏”だけが残り、右脳では“貧乏な状態”がイメージされます。すると、そのイメージは潜在意識へと蓄積されます。
――なるほど…。ですが、それがどうして、思考は現実化する、ということになるのですか?
自分が思い描いたイメージに現実がなるように潜在意識が働きかけるんです。なので、貧乏のイメージを実現させるように潜在意識が働きかけます。さらに、脳幹網様体(のうかんもうようたい)というものがあるんですが、これは外部からの情報を脳に伝えるフィルターの役割を果たしています。自分にとって必要な情報だけを取捨選択して、脳に届けてくれるんです。
――なんだか嫌な予感が…。
その時に働きかけるのが潜在意識です。潜在意識には“貧乏”があります。なので、貧乏になるような情報ばかりを脳幹網様体が吸い上げて脳に届けるようになってしまうのです。
――いやだー! 貧乏になりたくないと思っているのにどんどん貧乏に近づいて行ってしまうじゃないですか…。
「こういうワンピースが欲しいなあ」と思ったら、同じようなワンピースばっかり目につく、ということはありませんか?
――あーありますね…自分が気になっていることについての情報は自然と集まってくるような気がします…。ではネガティブなワードが頭に浮かんでしまった時にはどうしたらいいのでしょうか? 例えばその「貧乏は嫌だ」とか。
その場合はポジティブに転換するんです。貧乏が嫌なのは「欲しいものが手に入らなくて満たされていない状況が嫌だ」ということですよね。なので、満たされて幸せだと言葉にするんです。「私は今も将来も自分が欲しいものが手に入って幸せだ」と。すると自分が欲しいものが手に入って幸せな状態のイメージが湧いてくると思います。
――なるほど! そういうことですか。これはすべての人に知って欲しいことですね。ものすごく大事なことだ…。昔『引き寄せの法則』(SBクリエイティブ)という本が流行りましたが、本当にそうなのかな? と疑問もありました。山下先生に科学的にお話していただいて、すごく納得しました。
ありがとうございます。本当にそうなんですよね。だから意識を変えていくことはとても大切なんです。
コミュニケーションのコツは「自分軸」
――脳には男女で違いってあるのでしょうか? よく男性は“ひとつのことしかできない”、とか女性は“ロジカルに思考することができない”とか言いますよね。これは脳の働き方が男女で違うのかなあ? と思ったりするのですが。
私、個人は男女で違いがあるとはあまり思いません。ただ…男女のコミュニケーションに恋愛が絡んでくると、ものすごく感情が揺れ動きますよね。些細なことですごく嬉しくなったり、逆に悲しくなったり…と、そういう状況が脳になんらか働きかけて、男女の脳の差みたいなものを生み出すのかもしれないですよね。
――なるほど…たしかに男女には色恋が絡んできますから、感情的にはなりますよね…もちろん同性同士の恋愛もあるので一概にどうとは言えませんが。しかし、男女はどうしてすれ違ってしまうんでしょうか。夫婦やパートナーとはじめは上手くいってたのに、そのうちだんだん相手の嫌なところが目についてきてイライラする頻度が多くなる…そういったものが積み重なって熟年離婚する夫婦もいますよね。WOMeの読者さんの中にはまさにイライラまっただ中の方も多いと思います(笑)

それはやっぱり脳が報酬系だからでしょうね。最初はお互い大好きだから相手のために色々尽くしますよね。そして「嬉しい!」と感じていた。けれど、そういうことって長くは続きませんよね。だんだん慣れてきて、相手のためにそういうことをしなくなる。けれど、幻想は残っているわけです。「昔はああしてくれたのに!」って。そういう「○○してくれない」と思う気持や、昔と態度が違うギャップがすれ違いの原因の一つではあると思います。なので、最初からそういうものだ、と思うことが大事だと思います。
――なるほど…頭ではわかりますが、なかなか(笑)
やはりそこも自分軸を持つことが大切です。そもそも「○○してくれない」と思う気持ちは相手に依存していますよね、そうではなくて、自分軸をもって自立する。愛情を求めるのではなく、与える。「そんなことなんでやらなきゃいけないの」と思うかもしれませんが、自分のためです。自分を幸せにできるのは自分しかいません。「相手が幸せになりますように」と思って自分がした行動で相手が幸せになったら喜びを感じると思うんです。
その時に、喜んでくれなかったからと責めたり「もう二度としない」と思うのではなくて、「自分が相手の幸せのためにやりたかったんだ」ということに目を向けてください。やりたくなければやらなくていいんです。それなのにやったのはなぜか、もしも、自分を褒めて欲しかったり認めて欲しかったりという欲求があるのではあれば、それは依存している状態なので、“自分が自分を幸せにする”という軸でもう一度考えてみて欲しいと思います。
例えば自分の子どもに対してそういったことを思うでしょうか? 子どもに「なんで料理をつくってくれないの!」「なんで掃除してくれないの?」「なんでありがとうって言ってくれないの?」って腹を立てるでしょうか? 10代以上の子どもにはそういったことを思うかもしれませんが、小さな子どもにはそうは思いませんよね。それは相手に依存していないからです。あとは無条件で幸せを望む相手だから、ということもあるかもしれませんね。
――パートナーには怒りを覚えることでも子どもにはそうはならない…確かにそこには依存する気持ちがあるように思います…。次回、最終回はセックスレスは脳科学で解消される? というお話です。お楽しみに。
文/和氣恵子、撮影/鈴木志江菜

山下あきこさん
1974年佐賀県生まれ。医学博士、神経内科・内科医師。診療や研究を行う中で、高齢になっても自分らしく生きるための方法を模索し続けてきた。2016年に健康習慣を身につけるサービスを提供したいと考え、株式会社マインドフルヘルスを設立。主に健康や自己実現に関するセミナーや研修を企業や一般向けに行い、行動変容を促すスキルと正しい知識を提供している。マインドフルネスVRを楽しめるスマートフォンアプリの開発・配信も手がける。
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