【#FocusOn】「足るを知る」自分が本当に望むものは何なのか? 脳科学者 中野信子さんインタビュー<第三回>

【#FocusOn】「足るを知る」自分が本当に望むものは何なのか? 脳科学者 中野信子さんインタビュー<第三回>

あらゆる角度から不倫について考察した著書『不倫』をテーマに中野信子さんに語っていただくインタビュー。今回はよりよりコミュニケーションをとるための方法や自分が本当に望むものは何なのか知ることの大切さについてお話を伺いました。


アサーショントレーニングでよりよいコミュニケーションを目指す!

前回までの記事はこちら

――言いたいことが言えない人は多いと思いますが、どうトレーニングしたらいいでしょうか?

ふだんから自分の感情を言語化するクセを付けることは大切だと思います。まず自分がどうしたかったのか、したいのか、慣れないうちは少し時間をかけても、自分と向き合って考えます。そして考えたらその話を信頼できる人に話すつもりで、言葉にしてみます。それだけで随分楽になると思います。

――ここでもやはり自分と向き合うことが大切なんですね。

そうです。人とより良いコミュニケーションをとるために行うアサーショントレーニングというものがあるんですが、これは知っておくと役に立つかもしれません。何か望ましくないことをされた時、人間は相手に対して3パターンの行動をとります。一つは攻撃、一つは沈黙、そしてもう一つはアサーションです。これができるようにしていくのがアサーショントレーニング。耳慣れない言葉でしょうが、あえて日本語に訳すなら、アサーションとは「さわやかな主張」です。具体的には、“I”つまり「私はこう思う。こう感じる」と自分の中に起きた感情を出来事としてしずかに相手に伝える。

これは相手に対して「あなたが悪い」「あなたはどうしてそんなことをいうのだ」という攻撃的な主張とは異なります。アサーションと呼ばれる対応は「私はこう思う。こう感じる」と伝えることです。相手を責めているわけでも非難しているわけでもないので、波風は立たないし、攻撃してしまった場合に被る不利益を回避しながら自分の思いを伝えることができるのです。

――よく、男脳、女脳などといいますが、男女差はあるのでしょうか?

性差はありますが、個人差のほうが大きいと考えられています。

スペック重視で結婚して信頼がおざなりになっているから不倫を疑う?

――中野先生とご主人との関係をお伺いしたいのですが、先生はご主人とラブラブですよね。ですが人間は不倫をする生き物だ、とここまで熟知している中野先生だからこそ、ご主人のことが心配になりませんか? 今お仕事の関係で離れて暮らしているとのことなので余計に心配にならないのかな? と思うのですが。

うーん…心配にあんまりならないんですよね…(笑)もしかしたら他に女の人がいるかもしれませんよ。でも私と一緒の時は私が一番ですし、きちんとそう接してくれますから。

――なるほど…。

若い女性の貧困問題があるのでしょうがない部分もあると思いますが、もし仮に自分のリソースとして夫を選んでいて、そのリソースをほかの女に使われると困る、という発想なのでしょうか。それならたしかに不安感情を持つメリットもあるかもしれませんが、毎日毎日24時間、何十年も相手を監視し、コントロールし続けるなんてできます? あまりに非効率では? それなら自分で稼ぐ方法を考えたほうがはるかに楽しく、充実できるのでは? なんだかスペック重視で結婚相手を選びすぎなのではないかと感じます。

それは恋愛感情のやり取りによる結婚ではなくて、夫が雇用主で妻が従業員のような、経済的に結びついた関係ですよね。その関係の中で愛情を独占的に求めようとするのは筋違いなのでは?

――そう考えると経済的にも自立した人間同士じゃないと正常な夫婦関係は築けない気がしますね。

そうですよね…。ただ、そもそも人間は欲張りなのかもしれないとも思います。しかし経済的な問題に関しては、自分がどの程度で満足するか、ということを知っておくことがトラブルを避けるためには大切です。もちろん目指すライン、目標ラインは高く設定するのもいいと思いますが、相手にバジェットを依存しているのならそれはしにくいですよね。許容ラインをきちんと決めることが一番必要なことだろうと思います。

――足るを知る、ですね。

本当に好きな人とだったら一緒にいるだけで十分毎日が満足で幸せなのではないでしょうか。生活に必要な分以上のお金はかえって人間関係を壊すもとにもなりかねません。

――WOMeはアラフォー女性向けメディアですが、経済的に自立しているのに独身で結婚したいと思っているのに「良い人がいない」と結婚しない女性も多くいます。なぜ、なかなか結婚しないのだと思いますか?

お話していると、彼女たちは自分より早く結婚した人をかなり頻繁に想起されているようで、そのことに強いストレスを感じているようです。その人たちより上位にいきたい、あわよくば結婚で一発逆転したい、というような気持ちが見え隠れすることがあります。これは「認知のゆがみ」といっても差し支えないと思いますが、夫が欲しいというより、自分の価値を高めるための結婚がしたいのではないでしょうか。

しかしながら、ご自身もキャリアを積まれていると、そのステイタス以上の男性というのはほとんど見つからないでしょう。万一、見つかっても既婚であることが多いでしょう。こうして、なかなか相手が見つからず、選びにくいという状況になってしまうのだろうと思います。

次回(最終回)につづく※2019年1月7日12時公開予定

――結婚相手を自分の価値を高めるためのものと認識している…確かにそういう側面はあるかもしれません。経済的に自立していたとしても、自分が本当に望むこと、幸せな状態はなんなのか知らなければよりよい人生は歩めない。次回、最終回は妬みの感情をどう処理すればいいのか、脳科学的にセックスレス問題は解決するのか? というお話です。お楽しみに。

文/和氣恵子 撮影/鈴木志江菜

脳科学者 中野信子さん
脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。

著書に『戦国武将の精神分析』(宝島社新書・共著)『シャーデンフロイデ~他人を引きずり下ろす快感~』(幻冬舎新書)『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)『あの人の心を見抜く脳科学の言葉』(セブン&アイ出版)他多数

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