『クリトリス革命』翻訳者・永田千奈さんインタビュー【#FocusOn】

『クリトリス革命』翻訳者・永田千奈さんインタビュー【#FocusOn】

フランスのセクソロジストとセックスジャーナリストがふたりで書いた本「クリトリス革命」。今回、この本を翻訳された永田千奈さんにインタビューしました。このある意味、刺激的でセンセーショナルなタイトルの本を翻訳された経緯やこの本の魅力について語っていただきました。


「性科学者=セクソロジスト」という存在を知っていますか? セックスや性についてカウンセリングなどを行う職業で、医者や心理カウンセラーなどの資格を持った上でなることができます。日本にはなじみがないですが、欧米ではセクソロジストがセックスや性について指導やカウンセリングを行っています。そんなセクソロジストとセックスジャーナリストの女性2名が書き上げたのが『クリトリス革命』です。センセーショナルなタイトルですが、フランスではクリトリスに関する特集が女性誌で組まれたり、本も相次いて出版されているようです。実際に本を読んでみるとクリトリスの歴史はジェンダーの歴史であるということがよく分かります。翻訳者の永田千奈さんにインタビューしてきました。

『クリトリス革命』はジェンダーの歴史書

―こんにちは、今日はよろしくお願いします。さっそくですが『クリトリス革命』というセンセーショナルなタイトルに最初は少し引き気味だったのですが、読み進めるうちにこれはすべての女性が知らなければいけないジェンダーの歴史であると感じました。翻訳するにあたってどんなことを感じられましたか?

フランス文化についてはそれなりに知識もありますし、クリトリスに関する本が出版されていることや女性誌で特集されていることも知っていたので、一般の人よりは驚くということは少なかったかと思います。でも私自身は日本人ですし日本の常識…というか価値観がベースにありますから、何の抵抗もなく読み進められたということではなかったですね。おおおお…と思うところもありました(笑)

―そうですよね(笑)

セクソロジスト(性科学者)とセックスジャーナリストの女性ふたりが書いているのですが、本の中でしっかりとジェンダーの歴史を書いていて、これはジェンダーの歴史本でもあるなと感じました。

―刺激的なタイトルですが、タイトルをつける時に“クリトリス”という言葉をあえて使おうと思われたのですか?

編集者とみんなで考えたんですが色々候補が挙がる中でふわっとさせた方がいいのでは? という意見もでました。私は“クリトリス主義でいきましょう”というタイトルはどうかな、と思っていました。フランスのタイトルを直訳すると『くちびるの間のクリトリス』というんです。クリトリスのキャラクターがいるんですが、ピンク色の表紙にイラストが真ん中に載っていて、とっても可愛いんですよ。

―ホントだ! すごく可愛いですね。本の中にでてくるクリトリスのキャラクターでクリトリスの形状を知って本当に驚きました。クリトリスって“ポッチ”じゃないんですね…手足のような4本の長いものが伸びている。

そうそう。クリトリスのカタチを正確に知っている日本人はほとんどいないんじゃないかしら?

―日本の表紙になぜイラストを入れなかったのですか?

掲載してはいけないんです。クリトリスのイラストを。広告もNGです。

―そうなんですか…臓器の一部でとっても可愛いのに。タイトルの“革命”という言葉はとても刺激的ですが、まさに女性性を考えるにあたって“革命”的な一冊だと思いました。初めて知ることばかりで。翻訳される時に気を付けたこと、大変だったことはありますか?

女性器の名称が日本は本当にないんですよね。フランスだと医学名だけじゃなく、みんなが気軽に口に出せる名称がたくさんあるんですが、日本語にはない。ヴァギナとか膣とか大陰唇とか小陰唇などの学術語か、口にするのははばかられる性風俗名称や“しも”など全体をさすものだけ。

―本当にそうですね。各家庭で呼び方はあるのかもしれませんが、それは共通認識じゃないですもんね。我が家は母親から“ももちゃん”って言われていましたが、それはデリケートゾーン全体ものでした。だいたい、おしっこをするところとお尻の穴の間に穴があることをちゃんと認識したのっていつだろう…という感じです。

そうなんです。それが日本女性の大半だと思います。北欧などに比べると性教育が圧倒的に遅れていますからね。そんななかで“クリトリス”という存在に注目するというのは日本ではなかなか難しい…というか、受け入れがたいものであるとは思います。

日本は偏った性情報が氾濫しすぎている

―この本の内容はフランスでは当然のこととして受け入れられているんですか?

もちろん知らないことはたくさんあると思いますが、日本人よりははるかに抵抗感は少ないと思います。アフリカの一部で行われているクリトリス切除は、フランスでも医学的見地や人権、心理面も含めて問題になっていますし、 日本のようにクリトリスという言葉を声をひそめて言うものではなくなっていますね。あけっぴろげなフランスらしい本だなと思います。日本にはまったくない、こういった本の内容を翻訳できるのはとても嬉しいです。やりがいのある仕事だと思います。

―本当に素晴らしいお仕事だと思います。多くの日本人は英語の読み書きができないので、日本語でしか情報を得ることができません。海外の人と比べて情報が偏っているし、世界の常識を知らない部分も多いと思います。そんななかでこう言った本は本当に読むべきものであると感じます。

ありがとうございます。日本では性について口にするのははばかれるものとされていますが、かたや男性向けアダルト雑誌が小さな子どももいるコンビニで売られていたり、電車の中吊り広告には卑猥な表現が並んでいたりします。性に関する情報が偏っていると思います。

―本当にそう思います! 大きな胸の谷間を強調した写真が中吊りや週刊誌の表紙に踊っていて、かたやイチ臓器にすぎない可愛いクリトリスのイラストがNGだなんて。

性を卑猥なものとした情報があまりにも氾濫しているので女性は自身の性に関して口を閉ざしてしまうんですよね。そこがフランスとの大きな違いだと思います。もちろんフランス人も親しくもない人とセックスについて話すようなことはないですよ。親しい人たちやパートナーとセックスについて話をするんです。セルフプレジャーに関しても同様ですね。他人のセックスは自分のセックスではない、ということをよく分かっています。

―日本人のようにセックスに関しての固定観念やこうあらねばならない、という思い込みがないんですね。

そうです。あくまでも“自分が幸せで気持ちが良いセックスがどういったものなのか”ということを考えて話ができているように思います。もちろんフランスも昔からそうだったわけではなく、近年そうなってきたんですけどね。#metoo運動などもそういったことがどんどん表面化してきた象徴だと思います。

クリトリスは人間の臓器の中で唯一、性感帯だけの働きをする

―先ほどフランスでは女性誌がクリトリスについて特集を組んだりしているとお話されていましたが。

ええ。マリ・クレールやELLEなど一流のファッション誌で特集されています。この本はフランスでは初版5000部出版されているのですが、フランスの人口から考えるととても多いと思います。それだけクリトリスが今、注目されているんだと思います。

―本の内容について色々衝撃を受けましたが、一番感動したのは“クリトリスは人間の臓器の中で唯一性感帯だけの役目をもっている”という点です。

そうですね。例えば陰茎は射精もするしおしっこもするしその上で性感帯だったりします。耳が性感帯の人もいると思いますが、耳は音を聞く役目も持っています。でもクリトリスは完全に性感帯としてだけ存在する。

―精神医学者として有名なジークムント・フロイトは、クリトリスによる快楽を軽視していたとのことですが、女性が男性器の挿入なしに気持ち良くなれると知ったら入れさせてもらえないんじゃないかと思ったのでしょうか。クリトリスで得られるオーガズムを未熟なものとして、その存在を隠そうとした。

はい。だからこそクリトリスの歴史はフェミニズムの歴史なんですよね。女性がもっと自由に生き生きと存在できるために知っておかなければいけない大切なことです。

―いま人生100年時代と言われています。そんななかでセックスができなくなったら、生理が終わったら女性として終わったのと同じ、ということをいう人もいますが違いますね。クリトリスがある限り女ですね。

そうです。閉経したって、子宮がなくったってクリトリスがある限り女性は性を楽しむことができる。それに、クリトリスで気持ちよくなれるからといって私たち女性はセックスを拒否することなんてしないですよね。セックスはパートナーとの大切なエネルギーの交換であり、コミュニケーションであると知っています。ですから、男性は恐れることなく正しいクリトリスの知識をもってパートナーとのセックスを楽しんでもらいたいと思います。そんなわけで、この本は女性だけでなくぜひ男性にも読んで欲しいです。

―本当にそう思います! このしおり可愛いですね。

ありがとうございます。本屋さんに置いてもらおうと思ってつくったんですが、なかなか置いてもらえないそうで(笑)よかったら持って行ってください。

―ありがとうございます! たくさんもらって配ります。今日はありがとうございました。

こちらこそ有意義なインタビューをありがとうございました。なかなか宣伝活動ができないので(笑)多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。女性も男性も知ると幸せになる情報がたくさん書いてあると思います。

―翻訳者の永田千奈さんが仰る通り、この本は男女共に読むべきものであると強く感じました。しおりたくさんいただきましたがあっという間になくなりそうです。

文/和氣恵子、撮影/鈴木志江菜

クリトリス革命 ジェンダー先進国フランスから学ぶ「わたし」の生き方

¥ 2,160

喜び、幸せ、愛……。クリトリスは女性に秘められたもっとも美しく偉大な面を教えてくれます。より自信をもてるようになり、素晴らしい人生への扉を自分の手で開けることができるのです。 最新研究をもとに、複雑で謎に満ちた器官の秘密を解き明かす。ジェンダー先進国フランス発、女性の新たな生き方を導くライフスタイル・ブック。 ★世界でのメディア掲載実績 ・雑誌「アロー・ドクター」 “愛の日、ヴァレンタインにおすすめの一冊 ポジティブなセックスのために" ・雑誌「ELLE」2018年3月7日号 “クリトリス、そして女性の性について語ったこの本、皆に読んでほしい! " ・健康雑誌「トップサンテ」 ・助産師専門誌「サージュ・ファム」 ・「ソワール・マグ」2018年4月3日 ベルギーの新聞「ソワール」紙のWebマガジン。著者インタビュー掲載。




翻訳者 永田千奈さん
1967年東京生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒。訳書にシビル・ラカン『ある父親』晶文社、A.モレリ『戦争プロパガンダ10の法則』草思社文庫、デュマ・フィス『椿姫』(光文社古典新訳文庫)など。



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