あの頃を覚えてる? 小さな子供だった頃の私に会える絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 03】 | 大人のワタシを楽しむメディア
あの頃を覚えてる? 小さな子供だった頃の私に会える絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 03】

あの頃を覚えてる? 小さな子供だった頃の私に会える絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 03】

【絵本コーディネーター・東條知美の大人の絵本シリーズ】辛い時悲しい時困った時、大人になった今だからこそ読みたい心をうるおす一冊を紹介していただきます。連載第三回目は【あの頃を覚えている? 小さな子供だった私に会える絵本】です。


『スイミー』 (レオ=レオニ 作/ 谷川俊太郎 訳 好学社)

誰もが子どもの頃に一度は触れたことのある絵本だが、皆が内容まで覚えている作品となると、きっと片手で数えられるくらいしかないのではないだろうか。

『スイミー』は、ある教科書会社が発行する小学校の国語の教科書に1977年から採載されている。だからきっと、この絵本を覚えているという人はたくさんいるはずだ。

広い海で楽しく暮らす魚の群れ。みんなが赤い色をしている中で、一匹だけ「からすがいよりも まっくろ」で「およぐのは だれよりも はやかった」のがスイミー。

さて皆さまもご存じの通り、弱肉強食が海のおきて。ある日、巨大なマグロがやってきて、スイミーの仲間たちをひと飲みにしてしまう。生き残った仲間ともはぐれたスイミーは、海の底ではじめてひとりぼっちになる。

泳ぎ続けて、そのうちに岩陰で身を潜める仲間と再会を果たしたスイミーは、いつまでも隠れているわけにはいかないと説き、考えに考えて叫ぶ。

「みんな いっしょに およぐんだ。うみで いちばん おおきな さかなの ふりして!」

・・・この後のシーンについては、絵がありありと思い浮かぶという人も多いことだろう。

作者レオ=レオニは、1910年、オランダでユダヤ系の裕福な家庭に生まれた。
芸術的に恵まれた環境で育ったレオニだが、戦時1939年、イタリアのファシスト政権誕生と人種差別法公布をきっかけにアメリカへ亡命する。
『スイミー』は1963年、53歳のときの作品だ。

ちっぽけで非力な者たちが、あきらめず、逃げないで巨大な敵に立ち向かう姿は…もしかしたら、若い頃のレオニが願って叶わなかった思いだったのかもしれない。

大人になって『スイミー』を読み直した私は、「力をあわせて」といった教えよりも、作品全体に漂う美しさと詩情に、まずは圧倒されてしまった。

それから、スイミーがひとりぼっちで過ごしたあの時間…怖くて寂しかったあの時間が、彼にとっては必要なものだったんだな、なんて初めて気づかされたりもした。
「絵本」は、何度でも出会えるからおもしろい。

『おばけのバーバパパ』 (アネット=チゾン、タラス=テイラー 作/山下明生 訳 偕成社)

ひとりぼっちが寂しいのは、おばけも同じ。

まるで一輪の花が咲くように、庭の土から生まれ出た「おばけのバーバパパ」。
「大きすぎる」という理由でフランソワの家にいられなくなり、動物園に引き取られるのだが、(なんせおばけだもんで)自由自在に姿を変えて檻を出てしまうバーバパパに、園長の怒りが爆発。動物園も追い出されてしまう。

しょんぼりと街をさまようバーバパパ。すると向こうから人々の悲鳴が聞こえてきて・・・。

可愛い雑貨キャラクターとしてのイメージがすっかり定着している「バーバパパ」だが、原作は1970年フランス生まれの絵本。

はじめてこのストーリーが生まれたのは、作者のタラス(アメリカはサンフランシスコ生まれ)と画家のアネット(フランスパリ生まれ)が出会ったパリの街角のカフェ。

「バーバパパ」は、フランスにやってきたばかりでフランス語を上手く話せなかったタラスとパリ娘のアネットが、互いの思いを伝えようと、紙のテーブルクロスにあれこれ絵を描いているときに生まれたキャラクターだとか。(なんて素敵な誕生秘話!)

ちなみにこの夫妻、この後もふたりで「バーバパパ」シリーズの絵本を次々と生み出すのだが、「バーバパパ」は2冊目の絵本で「バーバママ」とめでたく結ばれ、子どもたちも次々生まれる。もはや寂しさの影はどこにも見当たらない。

優しくて勇気があるからね、幸せになって当然だ。
でも、心細くてさみしくて、涙をポロンとこぼしていた1冊目のパパも・・・かなり魅力的ではあったのよ。

『3びきのくま』 (トルストイ 文/バスネツォフ 絵/小笠原豊樹 訳 福音館書店)

小さい頃に読んだ絵本で、「あれはいったい何だったのか?」と、記憶の片隅から時々甦ってくるような、いまだになんとなくひっかかってしまう作品がある。

『3びきのくま』は不思議なお話だ。

森に遊びにきて道に迷った女の子が、小さな家をみつける。覗いてみたところ誰もいないので、中へ入ってしまう。
食堂のテーブルの上には、大中小の「すーぷのはいったおわん」が3つ。


女の子は、3つのおわんから一口ずつスープを飲んでみるのだが、小さなイスに腰掛けてみたらとても座り心地が良かったので愉快になって、一番好みだった味のおわんのスープをすっかり飲みほしてしまう。

愉快なテンションで小さなイスを揺らしまくった挙句に、壊してしまう。
つぎの部屋には大中小のベッドが置かれている。
女の子は、自分にちょうどいいサイズのベッドにもぐりこみ、そのまま眠ってしまう。
めちゃくちゃだ。
帰宅した「3びきのくま」(この家の持ち主)は当然怒り狂う。

「だれだ」 ・・・・・

絶体絶命と思われるこの状況。しかし女の子は、謝ることもなくスタコラサッサと窓から逃げてしまうのだ。
くまは、女の子に追いつけない。

『3びきのくま』は、小説『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』等の名作で知られるロシアの文豪トルストイが、「子どものために」「教育的なコンテンツを」との考えから、イギリスの昔話だったものを改編した物語だ。

トルストイ氏には申し訳ないのだが、私は、本能で生きる女の子が、やたら模範的な3びきのくまから逃げおおせてしまう結末に、なんだか小気味よさを感じてしまうのだ。(昔も今も)

ウキウキしながら思ってしまうのだ。

くまは、女の子に、追いつけない!

絵本コーディネーター 東條 知美



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この記事のライター

子どもから高齢者まですべての層に向け“毎日がちょっと豊かになる絵本”をコーディネート。講演・テレビ出演等、活躍の場を広げている。

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