絵本でパワーチャージ! なんだか元気がない時はこの絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 04】 | 大人のワタシを楽しむメディア
絵本でパワーチャージ! なんだか元気がない時はこの絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 04】

絵本でパワーチャージ! なんだか元気がない時はこの絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 04】

【絵本コーディネーター・東條知美の大人の絵本シリーズ】辛い時悲しい時困った時、大人になった今だからこそ読みたい心をうるおす一冊を紹介していただきます。連載第四回目は【絵本でパワーチャージ! なんだか元気がない時はこの絵本】です。


『おなみだぽいぽい』 (ごとうみづき 作 ミシマ社)

元気がない時?そんなのしょっちゅうだ。実をいえば、このくらいの年齢になると、むしろ元気がある時の方が珍しい。だが、しょんぼりしている姿が傍目には「あの人、なんかコワイ」と思われてしまうのが哀しい。さらに無表情な顔は、ほうれい線を余計に目立たせるだけなのだ。
だから今日も私は、「元気でーす!余裕でーす!」と言わんばかりに、力をこめて口角を引き上げる。(ニッコリ)

けれども、「感情を閉じ込めないで」、「泣くことは心にも体にもいい」と最近の心理学は言う。ならば元気の出ない時、気持ちが落ち込んでしまった時は、ひとりきりの夜を待って泣こう。
無理して笑うよりちゃんと涙を流した方が、美容と健康のためにもいいらしい。

ひとりぼっちの 
ばしょにきて 
なみだ ひとつぶ 
おちました

『おなみだぽいぽい』の主人公の「わたし」は、授業がわからなくて悲しくて、静かに涙を流す。涙と鼻水をたっぷり吸ったハンカチはずっしりと重くなる。彼女はそれを…

なげました!
大好きなパンの耳を食べる間も、涙はますます止まらない。涙をたっぷり吸ったパンの耳も…
なげました!
すると、パンの耳をキャッチした鳥がつぶやく。

「し・お・け・が・た・り・な・い」

だから なきました
おなかのおくに ある
かたまり
ふつふつ
ぜんぶ なみだに なるように


泣く、そして投げる。思ってもみなかったやり方だけど、想像してみるとちょっと痛快。スッキリするやり方じゃない?
腹の奥のふつふつとした塊を涙に流して、パンにひたしてぽいぽい、ぽいっ。嫌な気持ちごと全部「放出」のイメージ。それをキャッチした鳥が喜んで片づけてくれるのだから、一石二鳥だ。
『おなみだぽいぽい』というタイトルも、絵も、しみじみと可愛い。

実際に涙を流してもいいし、もし泣かなくても、かなしみの手放し方をこんな風にイメージすることができたら…私たちは今より楽に生きていけるのではないかしら。絵本に習いたい。

『きらきら』 (谷川俊太郎 文/吉田六郎 写真 アリス館)

雪国生まれのわたしは、一年の半分近くをどんよりと暗い空の下で育った。それでもいつも、初めて降る瞬間にはワクワクしたし、雪の積もった翌朝は、昨日とはまるで違う景色(銀世界)の中で、自分までまっさらな人間に生まれ変わったような清々しさを感じていた。

そんな中、なんといっても好きだったのは、雪の結晶を見ることだった。
1ミリにも満たない雪の結晶。奇跡みたいに完璧な形、完璧な美しさ。
その日あったお友だちとのいざこざも、うまくいかなかったテストのことも、「早く帰って来なさい」という母のいいつけも全部忘れて、吹雪の中、私はてぶくろに舞い降りる雪の結晶をいつまでもいつまでも眺めていたものだ。

『きらきら』は、写真家・吉田六郎による雪の結晶の絵本だ。雪の結晶と、詩人・谷川俊太郎の言葉で綴る、静かで豊かな幻想の世界。
雪の結晶がたくさん載ったこの絵本を開くと、あの頃の不思議な気持ちが甦ってくるようだ。

きれいだね
てんからおちてきた ほしみたい
きれいだね
とってもちいさい ほんとうは

大人になった今も、こんな風に圧倒的な美しさに触れると、わたしは日常の悩みやゆううつから切り離された「もうひとつの世界」にワープしたような気分になることがある。
絵本は、手のひらから広がる「もうひとつの世界」だ。

絵本を開いて、さあ、出かけよう。

『せいめいのれきし』 (バージニア・リー・バートン 文、絵/いしいももこ 訳/まなべまこと 監修/岩波書店)

作者のバージニア・リー・バートン(1909-1968)は、数々の名作絵本(『ちいさいおうち』等)を生み出した、20世紀のアメリカを代表する絵本作家。そのアクティブで先進的な活動経歴を見ると、当時のアメリカでもかなりぶっとんだ女性だったのではないかしらと思う。
彼女は主婦仲間と「フォリーコーブ・デザイナーズ」というグループを立ち上げ、自然や日常生活をモチーフにした布地のデザインでも一世を風靡している。(かっこいい!)

『せいめいのれきし』(原題『LIFE STORY』1962年発・アメリカ)は、私の本棚にある約1000作品の中でも、飛びぬけて壮大なテーマを、飛びぬけて遥かな時間の経過と共に描き出した“科学絵本”だ。80ページ近くもある大作だが、有名な作品なので、「子どもの頃に図書館で見た」という人も多いかもしれない。

考えられないほど大昔、太陽がうまれました。

わたしたちの地球は、46億年もの大昔に、うまれました。
太陽の家族にあたる、8つの惑星のひとつで、太陽からかぞえて、3ばんめの場所をしめています。

太陽の誕生、そして地球の誕生、生命が生まれ、私たち人間が生まれてから今日までの、長い長い「せいめいのれきし」を、プロローグ+5幕の舞台になぞらえたこちらの絵本。粋な演出で、優しい口調で語りかけてきてくれるので、“科学絵本”なのに不思議と癒される。知らないことだらけだから、私たち大人の知的好奇心も満たしてくれる。
ちなみにバートンはこの絵本の製作に、実に8年もの時を費やしたという。(その根気も見習いたい)

そう、元気が出ない時にいちばん効き目があるのは、こんな風に壮大な物語なのかもしれない。
これだけの「せいめいのれきし」の中いることを思うと、自分のことばかりに目を向けることもなくなる。
一度きりの「せいめいのれきし」という舞台で、たまたま一緒になった(他の役者の)皆さんと共に、この幕場、わたしらしく立っていたいと思えるのだ。(なんだか嬉しい)

さあ、このあとは、あなたの おはなしです。主人公は、あなたです。

大きく深呼吸して、前へ。

絵本コーディネーター 東條 知美



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この記事のライター

子どもから高齢者まですべての層に向け“毎日がちょっと豊かになる絵本”をコーディネート。講演・テレビ出演等、活躍の場を広げている。

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