小さなころから“I(私は)~”発信【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#4】

小さなころから“I(私は)~”発信【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#4】

アメリカに住む働く女性、ママたちのライフスタイルを、国際基準マナー講師の大網理紗さんの視点で発信していただくエッセイ。第4回目はアメリカは小さな子どもにも自分の意見を求め“I(私は)”発信をする国である、というお話です。


日本人以外にいわゆる“駐妻”と呼ばれる人はほぼいない

私が暮らしているアトランタには、日本人が約8,000人いると言われています。日本には「駐妻」という言葉がありますね。夫の海外赴任に一緒についてきている奥様のことをさし、優雅なイメージがありますが私の周りの他国の人を見ると、日本人以外に「駐妻」と呼ばれる人がほぼいないことに気が付きました。

夫と同じようにアメリカで仕事をしたり研究をしたり大学院に通って勉強をしたりしています。皆さん優秀で、語学堪能で、活躍する女性たちばかりです。日本企業は赴任先で配偶者が働くことを禁止している企業が多いと聞きますし、ビザの種類や年齢、その他さまざまな事情で異なってくるので働きたくても働けない方もたくさんいらっしゃるのだと思います。しかし、こと英語に関して言うと、私の周りの女性たちは夫よりも英語ができる妻がたくさんいます。

夫より優秀な妻を夫は誇りに思っている

私の子どもが通う幼稚園には日本人はいませんが、同じクラスに韓国人がいます。3歳と1歳の2人のママで現在3人目を妊娠中です。彼女は私の周りで仕事をしていないめずらしい女性のひとりですが、大学院で経営学を勉強するご主人よりも格段と英語が堪能で、ネイティブスピーカーかと思うほど美しい発音で話します。

日本では男性よりできる女性はちょっと…といまだに言われることがありますが、それがどれだけ時代遅れな発想なのか、しみじみと感じます。ご主人よりも優秀、そんな女性が普通にたくさんいらっしゃいます。そして、そんな妻たちを夫は誇りに思っているようです。 先日子どもの集まりに参加したママが、パパたちと政治について激論していました。マナー上は社交の場で政治の話はNGとされていますが、アメリカ人はディスカッションが好きな国民なので楽しく盛り上がっていました。

ママも政治について、経済について意見を求められたとき、自分なりの答えができる。働いているママだけでなく、育児休暇中で仕事をしていないママも同様に自分の意見をしっかり持って話します。その様子を見ていてふと、日本人女性である私たちは自分の意見をいう機会が少ないのかもしれないと思いました。

小さなころから自分の意見を求められる国

日本で私たちは小さい頃から、「話を聴くように」と言われてきました。これはコミュニケーションをとるうえで、とてもとても大切なことです。だからでしょうか。自分の意見をはっきり伝えることが苦手な女性が多くいるように感じます。アメリカは自分の意見をしっかりと言う国です。

幼稚園のカリキュラムを見ていてもそれを感じます。常に毎日何か自分の意見を言うことを求められます。「幼稚園でのルールを考えて発言してみて」「これにはどういう意味があると思う?」絵本を読んだら「あなたはどう思った?」と感想を聞かれ、意見を求められます。

しかも日本のように全員平等に発言の機会があるわけではなく、手を挙げる子はたくさん発言する機会がまわってきますし、手を挙げない子は黙ったままで時間が流れていきます。まだ幼稚園なので、先生から「あなたは?」と振ってくれることもあるようですが、アメリカの大学の縮図のように感じる時があります。

そして、先生も日本以上に発言すること自体をとても褒めてくれます。子どもがアメリカの幼稚園で最初に覚えてきたのは「Good idea!(いい考えね!)」と「Awesome!(素晴らしい!)」でした。

先日子どもが手作りのサンクスカードをクラスメイトに配ったところ、クラスメイトたちがみんな「このカード好きだわって言ってくれた」と言っていました。こういうとき、素敵とか可愛いではなく、「私は好き」と「I」を主語にして話すのがアメリカだなと感じます。

大人も「I like your skirt.(あなたのスカート好きよ)」「I love it!(大好き!)」と言って誰かを褒めます。3歳の小さな子どもたちにも、もうその血が流れているんだなと感じた瞬間でした。

何かが変わるのを待つのではなく、自ら変わっていく

写真は「アメリカのヴェニス」と言われるテキサス州サンアントニオで、街の中心を流れるサンアントニオ川のリバークルーズです。サンアントニオには、世界遺産の「サン・アントニオ・ミッションズ」があります。リバークルーズ後、乗船した子どもたちが、ガイドへチップを渡していました。

アメリカはチップの国です。世界遺産や自然遺産などツアーが終わると子どもたちは案内してくれたガイドに自分でチップを渡します。もちろんチップを用意するのは両親ですが、両親が子どもに直接渡すように伝えているところをよく見かけます。たとえば入場料がかからない美術館でも、それはタダなのではなく、自分でその価値を決める。

もちろんチップにはおおよその相場がありますが、Soso(まあまあ)なのかExcellent(素晴らしい)なのか、自分で判断していくのです。“自分で判断する”そんな経験をする機会が小さなころから自然にあるのですね。

私は20代の頃から「世界中どこへ行ってもできる仕事がしたい」と思っていました。不規則な勤務体制、毎年のように異動がある夫と結婚してからその気持ちはさらに強くなり、子どもが生まれてからは、また強くなったように思います。現在、アメリカと日本の2拠点を行き来しながら仕事をしているのは偶然ですが、当時からの想いが積み重なったからこういう状態になったのかも、と時々思うことがあります。

誰かについていく人生ではなく、自分で自分の人生を生きる。自分の人生を歩く。そういう生き方をしたいと考えています。自分のことは自分で支えられるようでありたいし、妻でもなく母でもなく、自分の名前で勝負できる場所を持てる、そんな人生を送りたいと考えています。

アメリカでも、男性・女性という境目がゼロではありません。ただとても薄いように感じています。日本も徐々に薄くなってきているのだと思いますが、まだまだ厚いと感じます。境界線をどんどん薄くしていくためには私たち女性も変わっていかないといけないのだと思います。何かが変わるのを待つのではなく、自ら変わらなければいけない、と強く感じるこの頃です。

リサ・コミュニケーションズ代表 大網理紗

大網 理紗

リサ・コミュニケーションズ代表
世界の王室・皇室・政府要人といったVIP接遇業務に従事した後、全国アナウンスコンクール優秀賞、国際優秀賞受賞などの経歴を活かし、話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。
独自のメソッドを開発しコミュニケーションスペシャリストの育成を行なう。大学、教育委員会、企業等で数多く講演。また、宮内庁・王室主催の舞踏会などで社交界の経験を積む。

著書
『人生を変えるエレガントな話し方(講談社刊)』
『大人らしさって何だろう。(文響社刊)』



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この記事のライター

話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。国際基準マナー講師。

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