傷つくのを恐れて言い訳をしている自分は本当の自分と言えますか?【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#5】 | 大人のワタシを楽しむメディア
傷つくのを恐れて言い訳をしている自分は本当の自分と言えますか?【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#5】

傷つくのを恐れて言い訳をしている自分は本当の自分と言えますか?【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#5】

アトランタ在住の国際基準マナー講師 大網理紗さん。月に一回、アメリカで暮らす中で感じた気づきをコラム連載してくれています。今回は「傷つくことを恐れて言い訳をしている自分は本当の自分と言える?」というお話です。日本とは違う生活環境の中で大網さんが日々感じることは日本に住む私たちにもより良く生きるためのヒントをくれますよ。


ドライバーの酷い態度に落ち込む私にアメリカ人の友人がかけてくれた言葉

先日Uber(アメリカではタクシーと同じくらい一般的です)に子どもと乗ったら、ドライバーがかつてないほど対応が悪くて閉口しました。渋滞にイラついていたのかもしれないし、子どもがニガテなのかもしれないし、アジア人が好きではないのかもしれません。理由はわかりません。ずっと続く暴言に途中で降りようかと何度も考えましたが、アメリカは日本と違い、ハイウェイが続きます。

冬の寒い日、治安の悪いところで子どもと2人降ろされたりするのもイヤなので、受け流す、聞き流すことで乗り切ると決めました。ただ何より悲しかったのは、子どもも暴言を理解できてしまうこと。タクシーを降りてから、改めてとても悲しくなりました。 日本にいてもアメリカにいても、人と人とが交流すると「何か」が起こります。摩擦や誤解や衝突、めんどくさい付き合いやできれば避けたいことなど…。私たちは交流しなければ傷つきませんが、人とまったく交流せずに暮らすことはほぼ不可能です。アメリカには、さまざまな人種、宗教、考え方の人が暮らしています。

「言葉の壁」と言われますが、アメリカで暮らして感じるのは言葉の壁ではなく「習慣の壁」です。言葉は勉強し続けたらいつか乗り越えられる日がくるかもしれませんが、積み重なった価値観における「習慣の壁」。それは時に面白くもあり、勉強にもなるのですが、薄くて頑丈であり、そう簡単に乗り越えられるものではないように思います。

あまりに悲しい出来事だったので、アメリカ人の友人に「あなたならどうする?」と聞いてみました。彼女は教員をしている1歳の女の子のママ。「あなたはどういう権利があってそういうことを言うの!? と言うかもね」と言った後、彼女は「私はあなたの戦いを誇りに思うわ」と言いました。

「戦っていないわよ」と私が言うと、「大切なもののために怒っていいのよ。でも、あなたは大切なもののために怒らなかった。それもいいのよ。戦い方はたくさんあるのよ。戦う相手はドライバーじゃないわ。戦う相手はいつも自分でしょ」と。「あなたのことは小さなことではないけど」と、前置きをしたうえで彼女は「小さなことで傷つかない自分でいることって大切よね」と言い、「数少ないあなたを傷つけようとする人のために、あなたが傷つかないでね。神様がいるわ」と言いました。

神様というところがクリスチャンの多いアメリカ人らしい発想だと感じますが、私たちは心ない非難にさらされるとつい、それがすべてのような気がしてしまいます。時に必要以上に落ち込んでしまうこともありますよね。ですが自分を非難する人以上に、自分を大切に思ってくれる人がいることを忘れずにいたいと、彼女の言葉で思いました。最後に彼女はこう言ってくれました。「You are brave.(あなたは勇敢よ)」 「自分がどうしたいか、どうすべきか、それを考えて行動できたあなたは勇敢よ」彼女が言ってくれたように私が勇敢なのかはなんとも言えませんが、「勇敢」という言葉で、ふとタイ人の友人と話したことを思い出しました。

いつも心に“小さな勇敢な私”を

彼女はアメリカでアジアンレストランを経営する経営者で、年に数回、香港やプーケットなど世界中を飛び回る、小学1年生の男の子のママです。彼女は面白いことを言いました。「私の友人は語学が堪能でネイティブスピーカー並みに話せるんだけど、アメリカ人の友達とか、ひとりもいないのよ」と。「なぜ?」と驚いて私が尋ねると、彼女は笑いながら「難しい英文読めたから、ネイティブスピーカー並みに話せたからって友達ができる? いくら話せても話しかけなきゃ友達なんてできないわよ」と。「人付き合いが上手な人は、笑顔で“Hi!”って言える人よね。ひとりぼっちの人がいたとき、あなたも輪に入らない? って自分から誘える人。自分から声をかけられる、自分から行動できる人。チャンスを待ってる人じゃない。つまり“勇敢”な人ね」と。

日本人の私たちには「察する文化」があります。それはとても素晴らしい習慣で、20代の頃からずっとVIP接遇に従事してきた私は、その大切さを身に染みて知っています。企業研修や講演でもその大切さについて、何度も何度も話しています。 ただ時々、空気を読みすぎるあまり、「日本人特有の同調圧力」を感じる時があります。

同調圧力は、少数意見を持つ人に対して暗黙のうちに多数の意見に合わせるよう強いることを指しますが、そんな同調圧力に負けて、自分の意見が言い出せなかったり、まあいいかと我慢してしまったりするんですね。そして時にその圧力は、大きな異常な圧力となって、誰かを身動きできなくさせてしまうこともあります。おそらく私たちは、人と交わらず何もしなければ傷つかずに済みます。

ですが、傷つくことを恐れて、行動できなくなったり、同調圧力に負けてしまったりしていいのでしょうか? それを本当の自分だと、胸を張って言えるのでしょうか? 小さな殻を破ることは、いつも勇気がいることです。「勇敢でいる」ということは、スーパーヒーローが地球を救うような大きなことではなく、“小さな勇敢な私”をいつも忘れないで持っておくことです。シャイだから、人見知りだから、そんな状況ではないから・・・。言い訳はいくらでも作れてしまいます。ですが、「言い訳をしない」「自分から声をかける」「いつでも勇敢な私でいる」 そんなことを心に誓いながら、私は今日もアメリカで暮らしています。

リサ・コミュニケーションズ代表 大網理紗

大網 理紗

リサ・コミュニケーションズ代表
世界の王室・皇室・政府要人といったVIP接遇業務に従事した後、全国アナウンスコンクール優秀賞、国際優秀賞受賞などの経歴を活かし、話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。
独自のメソッドを開発しコミュニケーションスペシャリストの育成を行なう。大学、教育委員会、企業等で数多く講演。また、宮内庁・王室主催の舞踏会などで社交界の経験を積む。

著書
『人生を変えるエレガントな話し方(講談社刊)』
『大人らしさって何だろう。(文響社刊)』



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この記事のライター

話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。国際基準マナー講師。

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