どんなにたくさんの人がいても“私は私”【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#6】

どんなにたくさんの人がいても“私は私”【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#6】

【40代からの生き方】40代にもなれば「周りの目なんて気にしない。私は私」と自分軸を持って自立して生きたいですよね。ですがなかなか難しいのも事実です。いったいどうすれば自立して自信を持って生きられるのでしょうか? アメリカからお届けします。


アトランタ在住の国際基準マナー講師 大網理紗さん。月に一回、アメリカで暮らす中で感じた気づきをコラム連載してくれています。

今回はアメリカ人が貫く、“どんなシーンでも私は私”という考え方について。幼いころから“I”を大切に教育されるアメリカと、協調性を重んじられる日本では大人になった時にこうも価値観が変わってくるものか…と感慨深くなります。

どちらを良しとするのも“私”次第です。

“協調性”を大切にする日本と“自己アイデンティティ”を形成し自尊心を高めるアメリカ

「みんなで揃えて何かを行なう」ということが、アメリカでは日本より少ないように思います。たとえばアメリカの幼稚園では、日本のように、お遊戯会もなければ、運動会もありません。 個人的には、子どもがお遊戯会に参加する様子を見てみたいと感じますし、私自身も子どもの頃、幼稚園での劇が好きでした。

何十年経った今でも、その時のワンシーンの記憶が残っています。だからこそ、みんなと作り上げる楽しさもあるはずと感じています。 私はアメリカにいる時は、いくつかの教育機関へ伺い、教育法を取材・研究し、日本にいる時は、日本の小学校、中学高校、教育委員会へ、講演に伺っています。

私が思うに、「日本はみんなで発表し、協調性や達成感を得ること」を大切にしていて、アメリカは「個人で発表し、仲間で批評し合い、自己アイデンティティを形成し自尊心を高めること」に、重きを置いているように感じます。

アメリカでは、たとえひとりで遊んでいても「かわいそう」「ひとりぼっち」という空気はありません。みんなが遊んでいる横で、一人で黙々と本を読んでいる子もいます。「本人が望んでそうしていること」と捉えられ、それを止められることはないですし、周りから「みんなと一緒に遊んだら?」と促されるようなこともありません。

逆に、「本当は友達と遊びたい、ひとりは寂しい」と思う時は、黙っていてもそれを自然と察してもらえる…という文化はなく、自分から「友達が欲しい!」という発信をしていく必要があります。

幼稚園でお弁当を食べる時間のこと。日本では「残してはいけない」という風潮があります。私たちが小学生の頃は、掃除の時間になってもまだ給食を食べている子がいる、なんていうこともありました。 アメリカはたとえ食べなくても、基本的に何も言われません。「もう少し食べてみない?」と先生から提案されることはあっても、子どもが「食べたくない」と言えば、それで終わります。「食べたくない」とう意思はたとえ3歳の子どもでも尊重されます。

ゆえにアメリカは偏食や肥満の問題もあるわけなので、それが良いと言えるわけではありませんが、それくらい「個人の意思の尊重」を重んじられる国なのです。そんな個人主義のアメリカですが、その一方、日本以上に「自分以外の何か」になる体験をたくさんします。

自分ではない“何か”に全力でなりきるアメリカ人

アメリカの指導要領には「DORAMA」という「演劇」のようなものが組み込まれています。「DORAMA」は子どもの習い事としても、とてもポピュラーです。日本だと、演技を学ぶのはタレント養成所に通うような、少し特別な子たちというイメージがまだありますが、こちらでは音楽や絵やスポーツを習うのと同じように、演劇の習い事があります。だからでしょうか、日本人の私から見ると、不思議な行事があります。

たとえば「Teddy Bear Thursday」では、クラス全員がティディベアを持っていって、1日中、ティディベアと一緒に過ごします。ティディベアになった気持ちで話をしてみましょうとパペット(人形劇)のようなことをします。

「パジャマデー」ではパジャマを着て幼稚園へ行き、日頃ベッドサイドに置いているぬいぐるみを持参して、みんなでホットチョコレートとドーナツでパーティーをします。実際は昼間ですが、夜を想定して、ブランケットにくるまって寝ころんだりします。

ハロウィンは家族揃って本格的な仮装を楽しみますし、「HEROになる日」では、全員がヒーローの仮装をします。ヒーローの仮装をして走るマラソンも人気です。小さい頃から、自分以外の何かになる体験がたくさん用意されていて「自分以外の何か」に全力でなりきります。

だからか、アメリカ人は「妄想スイッチ」のようなものを持っていて、変身するのが得意だと感じます。

私たち日本人は、もしかしたら変身するのに慣れていないのかもしれません。私の経営するスクールでは「話し方」を教えています。そこで「話し方」はいろいろあっていい、そのシーンや相手によって、自分の話し方を変えていく、変化させていくように伝えています。

そう話すと多くの人が驚きます。「人によって話し方を変えることは悪いことではありませんか?」「それは自分の話し方と言えるのですか?」と。ですが私たちは、デニムの日もスーツの日もドレスの日もありますよね? それは全部自分ですし、もっともっと自由に変身していいはずです。

「洋服を着替えるように、話し方も変えていいのですよ」と伝えています。

“ドレスコードは私”。普通や当たり前をつくるのが“私”であっていい

映画『リメンバーミー』のモチーフにもなったメキシコ死者の日のパーティー。アトランタにはメキシコ人も多く住んでいます。

私たちはいつのまにか「女の子」から「女の人」になり、ある日を境に、「妻」になり、「母」になる人もいます。それぞれの役割が変わることは、ある意味「変身」と言えるように思いますが、それと同時に、「ママはこう」「妻はこう」「女性はこう」という「型」のようなものが日本にはありすぎるように感じます。

「型から大きく外れないようにしないといけない」そんな雰囲気もあります。子どもが以前通っていたアメリカの保育園の先生のひとりは、とてもファッショナブルでした。いつもパンツスタイルでしたが、カラフルな柄物を美しく着こなしていました。まるでファッション誌から抜けでてきたような先生のファッションを見るのが私はとても楽しみでした。

「保育園の先生の服装はこうじゃないといけない」というのも、きっと誰かが決めたルールなのでしょう。「ママはこう」「妻はこう」「女性はこう」というのもきっと、見知らぬ誰かが決めたルール。

「ママっぽくない」「ママに見えない」というのも、時として褒め言葉になり、時として批判にもなる、不思議な言葉だと思いませんか? 友人のロシア人女性は、あえて日本風の言い方をするなら「ママに見えない」女性のひとり。初めて会った時から、とてもおしゃれな人だと思っていました。小学生の男の子2人のママで、いつもカラフルなワンピースを着ています。

ごくたまにデニムを履いているときがありますが、そんなときもエメラルドグリーンなど色鮮やかなニットを着ています。 彼女の夫はプエルトリコ人です。「How did you meet your husband?(ご主人とどうやって出会ったの?)」と私が尋ねると、「彼がロシアに仕事できたの。それで出会って…私は英語ができるでしょ。だから彼と話して、話して、話したの」と、うっとりと話してくれました。

彼女は夫から電話がかかってくると、「はあい、ハニー」とまるで恋人同士のように、毎回ウキウキと電話にでています。結婚して15年だそうです。日本人のママはテレもあって、つい夫の愚痴を言ったりしてしまいますが、彼女は夫の悪口をまったく言いません。

「日本にはまだ行ったことがないけれど、お刺身が大好きだからいつか行ってみたい」という彼女は、日本食レストランにとても詳しい。そんな彼女に「夫とデートするなら、どこがおすすめ?」と聞かれました。

そこで、ふと気が付きました。子どもが生まれてから、子連れで行けるレストランには詳しくなりましたが、デートをするようなレストランの候補は増えたかしら? と。 彼女がこんな話をしました。

「アメリカに来たばかりの頃、パーティーがあるから来てねって言われてね。素敵なホールを借りて行なうというから、“何を着て行ったらいいかしら?”と主催者に聞いたら、なんでもいいのよって。でも迷ってね、ちょっとおしゃれなワンピースで行ったの。ロングドレスだと大げさ過ぎるかもしれないし、あんまりカジュアルで行くのも浮くかもしれないでしょう? そうしたら、びっくりしたわ。フォーマルなロングドレスの人もいれば、シャツにデニムっていう人もいたのよ。ああ、アメリカだなって思ったわ。ドレスコードは“私”なのよ」

「ドレスコードは私」

この考え方はとてもいいなと思いました。もちろん、大人の私たちの世界にはTPOがあるので、それを踏まえたうえで行動をするたしなみは大切です。国際基準マナーの指導にあたる身としても、心からそう思います。ですが時には基準を自分で決めたっていいと思います。

普通やあたりまえを作るのは、周りじゃなくて自分だっていいはずです。きっと私にしかなれない「ママ像」があり、私にしかなれない「女性像」がある。誰かが作ったものに合わせるのではなく、“私”がひとつずつ作り上げていく。

時には日本らしく、みんなで協力して作り上げていってもいいのかもしれません。でも、答えはひとつじゃなくていいはずです。基準を決めるのはいつも「私」。そう考えると、明日からの毎日が少しラクに生きられる気がしませんか?

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大網 理紗

リサ・コミュニケーションズ代表
世界の王室・皇室・政府要人といったVIP接遇業務に従事した後、全国アナウンスコンクール優秀賞、国際優秀賞受賞などの経歴を活かし、話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。
独自のメソッドを開発しコミュニケーションスペシャリストの育成を行なう。大学、教育委員会、企業等で数多く講演。また、宮内庁・王室主催の舞踏会などで社交界の経験を積む。

著書
『人生を変えるエレガントな話し方(講談社刊)』
『大人らしさって何だろう。(文響社刊)』



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この記事のライター

話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。国際基準マナー講師。

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