“さよならだけど さよならじゃない” あの日の私に贈りたい絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 06】

“さよならだけど さよならじゃない” あの日の私に贈りたい絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 06】

【東條知美の大人の絵本シリーズ】人との別れはいつも寂しいものですよね。そんな時、この絵本を読むと心がほっこりあったかくなるかもしれません。大人に読んで欲しい絵本の紹介です。


軽妙で独特の感性が大人気の絵本コーディネーター東條知美さんによる連載“心をうるおす大人の絵本”。辛い時、悲しい時、困った時… 大人になった今だからこそ読みたい心をうるおす一冊を紹介していただきます。

第六回目は別れの季節…「さよならだけど、さよならじゃない、」そんな気持ちになれる絵本。あなたの心に寄り添う一冊が見つかりますように…。

私たちは生涯で“3万人”もの人と接点をもって生きる

弥生3月。お別れの季節です。

どんなに仲良くなろうとも、支え合おうとも「転勤」「引っ越し」「卒業」など、様々な理由で「別離」は起こります。私たちはこれまで、幾度の出会いと別れを繰り返してきたことでしょう。

そもそも人は、生まれてから死ぬまでに一体どれくらいの人と出会えるのでしょうか? 調べてみると、だいたいこのくらいだそうです。

何らかの接点を持つ人が30000人。
学校、仕事などを通じて知り合う人が3000人。
親しい会話ができる人が300人。
友だちと呼べる人が30人。
親友と呼べる人が3人。


性格や生活スタイル、環境にもよるのでしょうが、私たちは一生に30000人もの人と接点を持って生きてゆくのですね。

そして、そのうち「友だちと呼べる人」は30人。世界の人口75億人の中で、選ばれたる30人・・・ちょっと感動的ですらあります。

そして、そんな風に奇跡的に出会えた大切な人々ともまた、お別れの季節は否応なしにやってきます。

『いつだってともだち』 (エリック・バトゥー 絵/モニカ・バイツェ 文/那須田淳 訳 講談社)

アフリカの大草原に暮らすゾウの群れ。中でもいちばん元気でみんなのムードメーカー、ピンク色をした子象が「ベノ」です。ベノには大切な親友「フレディ」がいました。

ある日、フレディが家族で別の草原へ行ってしまいます。悲しみのあまり、ベノはすっかり力を落としてしまいます。周りのみんなは心配します。「ほかの子と遊びなさい」と言われて遊んでみても、ベノは一層悲しくなってしまうだけなのでした。

「どうしたらいいのだろう」

ついにベノは、知恵者のふくろう「ホレイカ」に相談するために、たったひとりで森を出て行きます。

みっかと 7じかんと ひゃっぽ あるいて、たどりついたホレイカの家。
そこで言われた「ベノにできる3つのこと」とは…?

* * * *

大切な親友との別れを経験して、はじめて悲しみを知った子象のベノ。彼のすごいところは、ご飯ものどを通らない状況にありながら、それでも「この悲しみをなんとかしたい」と行動する点にあります。

住みなれた森を抜けて過ごした「みっかと 7じかんと ひゃっぽ」の時間、ベノは徹底的に孤独でした。この、ひとりぼっちの感情・慣れない土地での恐怖と向き合った時間は、ベノに、ひとりきりでも立てる強さを与えたのではないでしょうか。

(そういえば、小説家の村上春樹さんも呟いていました。「ときに孤独になることも人間にはとても大事なんです。孤独というのは人の心を鍛えあげます。自分自身と正面から向かい合う機会を与えてくれます。でもあまり孤独が長く続きすぎると、それはときとして人を蝕みます。そのへんの兼ね合いがなかなかむずかしいんです」と。)

知恵者のふくろう・ホレイカが語った「ベノにできる3つのこと」は、大人になった私たちにも…いいえ、別れの痛みを繰り返す大人にこそ、必要なものなのかもしれません。
これから先に待ち受ける、数々の悲しみを乗り超えていくために―

ひとつ、かなしい ときには がまんせずに 泣くこと。
ふたつ、かなしい きもちを だれかに はなすこと。
みっつ、こころの なかに ともだちの へやを つくること。


親友との思い出を、「ともだちのへや」から取り出すことができるようになって、ベノはまたひとつ強くなれました。
お別れをちゃんと悲しんだら、友だちや家族、恋人の…大切な思い出をギュッとつめこんだ「あたたかな部屋」を、心の中にこしらえましょう。

さよならだけど、さよならじゃない。

ひとつ、またひとつと増えていく「あたたかな部屋」と共に、私もあなたも、強くほがらかに生きていけますように。

お次は、草原でたったひとり…草や虫を食べながらしのいでいる百獣の王ライオンと、その前に降り立った旅鳥のお話。

『100年たったら』 (石井睦美 文/あべ弘士 絵 アリス館)

「わたしは もうとべない。あんた、おなかが すいているんでしょ?わたしを たべたらいいわ」

ライオンは すこしのあいだ 鳥を みつめた。
ちいさなからだ。ぼろぼろのつばさ。

「あいにくおれは、にくは くわないんだ。おれのこうぶつは、草と虫さ」
ライオンは そういった。

・・・一匹と一羽は、こんな風に出会います。
そして誰もいない草原で、ふたりは共に生きることを選びます。
穏やかな日々が過ぎていきますが、やがて「もういくよ」と告げる鳥。
涙を流して引きとめるライオン。

「また あえるよ」
「いつ?」
「うーん、そうだね、100年たったら」


「100年たったら」は、おいおいと泣くライオンを落ち着かせるために、鳥が苦しまぎれに口にした言葉だったのです…。

* * * *

 「運命の人」という言葉があります。
初めて会ったはずなのに、どこか懐かしく感じる・・・。もしかしたら、いまあなたの隣にいる恋人や旦那さん、ちょっと気になるあの人は、100年前に再会の約束をかわした、あのときのライオンなのかもしれません。

さよならだけど、さよならじゃない。さよならになんて、したくない。
壮大な時の流れの中でまたいつか、どんな形でも出会いたいと切実に願う人が、あなたにはいるでしょうか?
ドラマティックなラストシーンに、涙が止まらない一冊です。

『ぼくのたび』 (みやこしあきこ 作 ブロンズ新書)

とにかく旅をしたがる人もいれば、旅にはまったく興味がないという人もいます。

私は…というと、子どもの頃、親の転勤に伴い移動した日々が体にしみついているのか、大人になってもどちらかといえば、ひとつ所にとどまるより、新しい土地を見てみたい、できれば旅して生きていきてみたい!と願っています。いつだって旅を欲しています。
(数えてみたのですが、生まれてから今日まで(40ウン年)の間に、14回も引っ越しておりました。)

もしかしたら、「旅」には、中毒性があるのかもしれません。

『ぼくのたび』は、ホテルを営む「ぼく」の一人語りによって展開されます。

ちいさいけど いごこちのいい ぼくの じまんのホテルさ。
まいにち せかいじゅうから いろいろな おきゃくさんが やってくる。

旅人を受け入れる側の、「ぼく」。
いつもお客さんから知らない国、知らない街の話を聞くだけの「ぼく」ですが、ベッドに入れば夢の中では飛行機に乗り、自由に行きたい方へ行き、会いたい人に会いに行きます。思いもよらない出来事を心から楽しみます。

そう、夢の中では…。

だけど・・・・・・
みんな おどろくだろうなあ。
ぼくが いつか

……
「ぼく」が旅に出たらやりたいこと、それは何だと思いますか?
毎日出会いと別れが繰り返されるホテルで、旅人たちに心を尽くし仕事をする「ぼく」の姿が、リトグラフ(版画)の光と影の中に浮かび上がってくる…そんな素敵な物語です。

さよならだけど、さよならじゃない。
せっかく出会えた大切な人たちとの思い出を胸に、また一歩、歩き出す春です。

絵本コーディネーター 東條 知美



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この記事のライター

子どもから高齢者まですべての層に向け“毎日がちょっと豊かになる絵本”をコーディネート。講演・テレビ出演等、活躍の場を広げている。

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