『私がオバさんになったよ』 ジェーン・スーさんインタビュー<第一回>【#FocusOn】

『私がオバさんになったよ』 ジェーン・スーさんインタビュー<第一回>【#FocusOn】

新刊『私がオバさんになったよ』幻冬舎/作詞家でコラムニスト、ラジオパーソナリティのジェーン・スーさんインタビュー! 『私がオバさんになったよ』で対談された方々とのエピソードをお伺いしました。


作詞家でコラムニスト、ラジオパーソナリティのジェーン・スーさんの著書『私がオバさんになったよ』が3月14日(木)発売されました。

光浦靖子さん、山内マリコさん、中野信子さん、田中俊之さん、海野なつみさん、宇多丸さん、酒井順子さん、能町みね子さん8名とジェーン・スーさんとの対談をまとめたものです。

アラフォー世代ならタイトルから「ムフフ」と笑ってしまうに違いないこの本について、スーさんからお話を伺いました。

ポジ過ぎずネガ過ぎず『私がオバさんになったよ』

――タイトルを見てもうプッと笑ってしまいました(笑) どうやって決めたのでしょうか?

ありがとうございます(笑)

担当編集者と色々考えて、最初は真面目に“新しい私たち”とか“楽しい中年”とか言ってたんですが、どうもひっかからない…そのうちふたりとも疲れ果てて、最後にもう今際の際みたいな状態で、私が、「私がオバさんになったよ」と言ったら「それだ!」ってなったんです。私は、タイトルは編集者が決めた方が良いと思っているので、これに決まりました。

でもね、最初は怒られたらどうしようって思ってたんですよ。

――え? 森高さんにですか?(森高千里さんの『私がオバさんになっても』にひっかけて…)

いや(笑)同世代の女性にですね。「自虐的だ」とか言われちゃうかなあって。

――実際、自虐なんですか?

いえいえ違います。なので帯に「ポジ過ぎずネガ過ぎず」って入れました。意図が伝わらずに自虐や「オバサンだって生き生きしてるわよ!」っていう、遠吠えに思われちゃったらどうしようかと思ってました。ですがタイトルを発表した直後から“面白い”という声がたくさん聞こえてきて、ああよかった、と思ってます。

――先ほどつい反射的に質問してしまいましたが、やはり森高千里さんの『私がオバさんになっても』にインスパイアされて出てきたものなんでしょうか?

そうです。今日ラジオで本の話になったんですが「私がオバさんになったら、海には一人で行くから大丈夫。ディスコにも一人で行くから大丈夫。あなたと一緒に行かなくても大丈夫。趣味が合わなくても大丈夫。たいていどこでも一人で行けるし、オバサン最高!」って(笑)

――分かります! そういう意味ではオバサン最高ですよね(笑) 本を読ませていただいて本当に内容が濃くて色々な角度から読めるし、大変勉強になるし、一度で何度でも美味しいと感じました。そこでスーさんにそれぞれのお相手と対談をして特に印象に残っていることについてお伺いできればと思っています。まずは一人目の光浦靖子さんからお願いします。

光浦靖子さん対談:お笑い界は特殊な世界のようで実はそんなことはない

雑誌やWEBの対談企画って、たいていは先にテーマが決まっていて、そのあとテーマを語るのに適任と思われる人に声が掛かるんです。対談してめちゃめちゃ盛り上がって「あー今日は最高に楽しかった!」って思う場合と、盛り上がったんだけど「もっと別のテーマでも話してみたい!」となる場合があって、今回対談した7人は後者です。最後の能町みね子さんだけは今まで一度も対談したことがなく、じっくりお話してみたいと思っていたのでお声がけさせていただきました。

同世代の光浦さんには、彼女が作った女性のお笑い芸人の文化についてお話を聞きたいと思いお声がけしました。

――光浦さんがつくった女性お笑い芸人の文化とはどういうことでしょうか?

メイクや衣装で身体的特徴をデフォルメした笑いではなく、“非モテ”というキャラに擬態して言いたいことを言って笑いをとる。それまでの“ブスだけど明るい”とか“デブだけど性格が良い”とかいう世間の勝手な期待からは全く外れた、人間らしい生々しさで笑いをとって、私たちをある種、救ってくれた人だと思うんです。

その光浦さんが、50歳の背中が見えてきた今、自分についてどう思っていらっしゃるのか、お話を聞いてみたかった。

――お会いしてみていかがでしたか?

「お笑い界と女性である自分」という、なかなか他では聞けないお話をざっくばらんにしてくださいました。お話を伺うまでは、お笑い界って特殊な社会のような気がしていましたが、そうでもないんじゃないかと思いました。男性優位な環境で働く、光浦さんと同世代、もしくは少し下の世代の女性で、かつ、蝶よ花よとはてはやされてこなかった人たちの処世術の話でもあるなあと。個人的には自分と重なる部分もあって、このタイミングで伺えて本当に良かったですね。

――どんな点が良かったと思われたんでしょうか?

当事者として、女の人がその場所でどうやって生きていくか、働きざまを含めて話してくださったので勇気づけられました。

――光浦さんが「恋をしたい」と仰った時にスーさんが「すごい年下か、年上じゃなきゃ」と仰って、その理由が「45歳同士だとおじさんおばさんだということが目に付く」と(笑)

45歳同士は良い友達にはなれると思うんですよ。でも、なんらかのきっかけがないと「恋」は始まらないと思うんですよね。一見超えるのが難しそうなハードルがあったほうが、非日常の「恋」として認識できるように思います。

――“恋”ってなるとそうなんですかね。「ドキドキしたい!」ってなると。

そうそう。「どうして私がこんな若い子に」とか「どうしてこんなおじいちゃんに」とか、ややトリッキーな初期設定がないと始まらないかなと(笑)

山内マリコさん対談:真逆なのにお互いを責めずに面白く話ができる稀有な人

私は東京生まれ東京育ちで帰省する場所もない。山内さんは地方都市で生まれて東京に移ってきた。私たちはある意味真逆なんです。だけど、お互い腹を立てずに「東京と地方」の話ができる…お互いを責めずに「なるほどね」って面白く話が聞ける数少ない人だと思います。

――それはなぜなんでしょう?

年齢が少し離れているからっていうのはあるかもしれないですね。山内さんの小説を通して、私は東京に出てきた人たちの抱える甘い空洞みたいな…地元は過疎化しているけれど、大切な場所でもあって、でもそこから出ないと自分の未来が…っていう複雑な気持ちを少しだけ追体験できた。山内さんと東京について、地方についての話をもっとしてみたくて。

――スーさんが地方出身の人たちの気持ちを知りたいって思われたのはなぜなんでしょうか?

私には、いま住んでいる東京以外に帰る場所がない。だから、東京以外に地元がある人たちの気持ちはやっぱりわからないんです。以前書いた『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)のなかで、「呼んでないのに来て『東京は冷たい』と文句を言う」みたいなことを書いたら「こんだけ地方から人を吸い取っておいて何を言うんだ」と言われてビックリしたんですよ。「東京が人材を吸い取っている」という視点は私にはなかった。まったく違うものが見えてきたぞ、と思ってもっと知りたくなったんです。

今回、山内さんから聞けて良かったのは、「一昔前、東京に出てくるのはクラスの人気者だったけれど、今ではクラスの人気者は地元から出なくなった」という話です。

――クラスの人気者は地元に残り続けると。

彼らのリアルを充実させる施設はもう地方に十分備わっているからだそうです。だから地元から出る必要がない。そんな状況で「この先、日本はどうなっていくんだろうね」なんて話をするのがまた楽しいです。

――ラジオから流れてくるそのままのトーンでざっくばらんにお話をしてくださるジェーン・スーさん。次回は、脳科学者の中野信子さん、男性学を研究する田中俊之さん、漫画家の海野つなみさんとの対談についてです。お楽しみに。第二回はこちらから

文/和氣 恵子、撮影/鈴木 志江菜

プロフィール

ジェーン・スー
1973年、東京生まれの日本人。コラムニスト、ラジオパーソナリティ。
現在、TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のMCを務める。
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』で第31回講談社エッセイ賞を受賞。
著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』、
『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』、『生きるとか死ぬとか父親とか』などがある。

私がオバさんになったよ

¥ 1,512

人生、折り返してからの方が 楽しいってよ。 考えることをやめない。 変わることをおそれない。 間違えたときにふてくされない。 ジェーン・スーと、わが道を歩く8人が語り尽くす「いま」。



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