今日は一日家から出ない!そんな日に遠くへ連れて行ってくれる絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 09】 | 大人のワタシを楽しむメディア
今日は一日家から出ない!そんな日に遠くへ連れて行ってくれる絵本   【心をうるおす大人の絵本 # 09】

今日は一日家から出ない!そんな日に遠くへ連れて行ってくれる絵本 【心をうるおす大人の絵本 # 09】

【絵本コーディネーター・東條知美の大人の絵本シリーズ】しとしと雨が続く、そんな季節は一日中家でまったりしていたい…そんな時、家にいながら旅気分を味合わせてくれる絵本を絵本コーディネーター東條知美さんがピックアップ! 世界はどこまでも広がっていくのです。


独特の感性と語り口調で人気の絵本コーディネーター東條知美さん。今回は雨が続くこの季節に【今日は一日家から出ない!そんな日に遠くへ連れて行ってくれる絵本】を紹介してもらいました。大人になった今こそ、絵本が必要なんです。

絵本は手の平から広がる「もうひとつの世界」

6月。今年もやってきました。梅雨。

♪雨 雨 降れ 降れ もっと 降れ わたしのいい人 連れてこい~♪
♪雨 雨 降れ 降れ かあさんが 蛇の目で お迎え うれしいな~♪

・・・誰も連れてきませんね。誰も迎えに来ませんね・・・。

雨が降ろうが槍が降ろうが、湿気で広がる髪をエイっと束ね、今日も仕事に家事に育児にお疲れ様です。

そんな私たちですが、たまの休日くらい、雨の日くらいはゆっくりのんびりお籠りしたい。
え、なんですって? お籠りはしたい、でも気分転換もしたい?

部屋から一歩も出ずに、短時間で世界中を…なんなら壮大なファンタジーの世界を自由に旅してみたい?

わかりました。そんなワガママなあなたにおすすめしたいのが「絵本の旅」です。絵本は、手の平から広がる「もうひとつの世界」。

さあ皆さま、旅のご準備はよろしいですか?パジャマのままで結構です。傍らにおやつ、マグカップにはたっぷりのミルクティーを。

出かけましょう。ボン・ボヤージュ(Bon voyage )!

『家をせおって歩く かんぜん版』(村上慧 作 福音館書店)


* * * *
このおもちゃのような家は私の家です。私は自分の家を発砲スチロールで作り、そこに住むということをしています。
* * * *


冒頭から「これは旅?」と混乱させてしまうような作品の紹介ですみません。
旅先には実に様々な文化があり、様々な人が暮らしています。思いもかけない価値観に出会い、自分を見つめ直す人も多いことでしょう。そしてそれこそが、旅の醍醐味だったりもします。

この絵本にはおそらく、私たちがこれまで出会ったことのない新しい世界(価値観)が広がっています。

作者の村上慧さんは、発泡スチロールの家をつくって、それを自分の家にして移動生活をしています。(現在村上さんの自宅は長野県内にありますが、今も時々この家を背負って歩くのだとか)

ある日、村上さんが家を「背負って」巣鴨の福音館書店の前を通ったところを社員の方が偶然見かけたのだそうです。福音館書店は絵本の出版社で老舗ですが、社員さんの「知りたい」好奇心が発動したのでしょうか。さすがは「かがくのとも」の版元さんです。

移動を“引っ越し”と呼び、各地で家を置かせてもらうことを“土地を借りる”と表現している村上さんにとって、どんなに遠くまで移動してもこれは“旅”ではなく、“引っ越し”です。

村上さんは日本中を“引っ越し”して歩きます。フェリーに乗るときには、この家が乗り物なのか、手荷物か、預けるものか、関係者がみんな頭を悩ませてしまうそうです。船長と話しあい、その度に家は手荷物になったり貨物扱いになったりします。

マニュアルにはないことなので、出会った人々もさぞ判断に迷うことでしょう。

この絵本では「家をせおって歩く」村上さんのドキュメンタリーを、どちらかというと淡々とした描写で表しているのですが、その裏にはきっと数えきれないくらいの、ふつうに生きていたら味わう必要のない気苦労や葛藤があったのではないかしら。

2014年の4月に東京都港区を出発して東北を北上。折り返して北陸から関西、そして九州へ。約11カ月間で180ヵ所もの土地に家を置いたという村上さん。

* * * *
アリの行列の上に家を置いてしまうと、家の中で行列を作られてたいへんです。

トラックが近くを通ると大きな音とともに地面が揺れます。

風も天敵です。

歩いているときの視界はとてもせまく、景色はあまり楽しめません。
* * * *

・・・そんな思いまでしてなぜ、あなたは家を背負って歩くのか!?と誰もがつっこみたくなるのではと思いますが、村上さんは自身の専門である「建築」「家」のことをいつもいつも考えていて、それが高じてこんなことをするようになったのだそうです。

なるほど、わからないでもないです。いろいろな突き詰め方をする人がいるのです。世界は広いなあ。

* * * *
住み方だって作ることができます。するといつもと同じ町が全然違うものに見えてきます。私たちはそうやって世界を変えていくことができます。
* * * *

スウェーデンや韓国でのエピソードも登場しますよ。

『わにくん』 (ペーター・ニクル 作/ビネッテ・シュレーダー 絵/矢川澄子 訳 偕成社)

表紙絵をご覧ください。ブルーとグリーンのグラデーションの中をたゆたうナイル河、ピラミッドにスフィンクス。空にはひとかけらの三日月がきらり。そんな風景のこちら側では、パイプをくわえた小粋なわにが、なにやら意味ありげに(あなたに)微笑みかけています。

美しいでしょう。優雅でしょう。これぞ、大人の旅のイメージ!

『わにくん』は1975年、スイスで出版されました。同年にスイスの“最も美しい本賞”、77年にライプツィヒ図書展の“世界で最も美しい本賞”に輝いています。

ビネッテ・シュレーダーにはツウのファンが多い印象がありますが、彼女の作品をじっとみつめていると、まるで心が遠くへ…幻想の世界へと誘われるような、非現実感を覚える人も多いのではないでしょうか。

* * * *
むかし ナイルの かわぎしの すなはらに、みどりいろの わにが 一ぴき ねそべっていた。
そこへ ふたりの ごふじんが うかれきぶんで さんぽに やってきた。
ここは ふるい ふるい スフィンクスの ひかげ
* * * *

ナイル河に棲むわにが「わにのための店がある」という噂を耳にし、嬉しくなって遥々出かけて行くのですが…。花の都パリで、美しくも残酷、、でもどこかユーモラスな物語が繰り広げられます。

わには、エジプトのナイル河から地中海へ…トルコに渡りヨーロッパを目指します。フランスのマルセイユからパリへは列車の旅。なにしろ前半は旅情たっぷり!

「いいなあ」「今度の旅行はヨーロッパにしようかしら」なんてうっとりしておりますと、突然! 凄惨な事件を目にする事になりますので、心臓の弱い方はじゅうぶんにお気をつけくださいね。(とは言いながらも、どのシーンもただただ美しいのでご心配なく)

そう、旅には多少のスリルがつきもの。もしあなたがパリで、シャンゼリゼ通りを闊歩するわにに出会ってしまったら・・・その時はぜひ、「わにのお店はお休みです」とお声かけくださいませんか。

『漂流物』 (デイヴィッド・ウィーズナー 作 BL出版)

ザザザザー ザッブーン・・・
ピー ヒョロロロー・・・

頑張りすぎてちょっと疲れたなと感じているあなた。まずは何も考えず綺麗な海へ出かけませんか。都会の賑やかさから離れて雄大な自然に包まれれば、心がフッと軽くなるかも。

そう、ここは海。波の音と鳥の声以外聞こえない、あなただけの楽園。

パラソルの下、そよ吹く風を感じながらビーチチェアに寝そべるあなた。ハイレグ水着は昭和の時代に置いてきたわ。かたわらにはレモンスカッシュ、ではなくモヒート。女優サングラスで小顔効果も完璧よ。さあ来るがいい、私のアバンチュール!・・・って気分のところ、ホントすみません。何か足元の波に打ち上げられてるみたいですよ。

カメラですね、それもずいぶん昔の・・・うわ、フジツボみたいなのがいっぱいついちゃってる。カメラをよく見ると、「under water camera」って書かれてますね。中のフィルムは無事です。落し物ですかね?・・・え、監視員に聞いてみたけど心当たりの人はいないって?う~ん・・・もしかしたら持ち主が映っているかもしれませんし、このフィルム、現像に出してみませんか?カメラ屋がすぐそこにありますよ。

* * * *
おかえりなさい!おや、どうしたんですか?「すごいもの拾っちゃった」?「このカメラはただの漂流物じゃない」、「この秘密はこのまま次の人に手渡さなくてはならない」?・・・ちょっとあなた、だいじょうぶですか?おや、新しいフィルムをカメラに入れたんですね。記念撮影?ええ、それはまあ、よろこんで・・・
えー!あなたまたなんであのカメラを目の前の海に放り投げちゃったんですかー!?
* * * *

おかえりなさい。
言葉はいっさい記されない、まるでファンタジー映画のような『漂流物』の世界に旅していらしたのですね。

すごい体験ができたって?それはよかった!
絵本の中の、あなただけの旅。
またフラリと旅に出かけたくなった時にはいつでも開いてくださいね、絵本の扉を!

絵本コーディネーター 東條 知美



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この記事のライター

子どもから高齢者まですべての層に向け“毎日がちょっと豊かになる絵本”をコーディネート。講演・テレビ出演等、活躍の場を広げている。

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