映画『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』家族ってなんですか?【沁みる映画 #02】 | 大人のワタシを楽しむメディア
映画『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』家族ってなんですか?【沁みる映画 #02】

映画『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』家族ってなんですか?【沁みる映画 #02】

イタリアの名匠ガブリエレ・ムッチーノ監督の最新作『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』。イタリアの名優たちが集い撮影された本作は2018年イタリア本国で最高の話題作となり150万人を動員する大ヒットを記録しました。作品の舞台はアラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』など多くの名作が撮影された美しいイスキア島。イタリアの大家族一人ひとりが抱える本音と建て前が爆発する時いったい何が見えてくる?


忙しい日常から離れて、映画の世界へトリップしませんか? 心に沁みる上質なストーリーをご紹介。

今回ご紹介するのはイタリアの名匠ガブリエレ・ムッチーノ監督の最新作『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』です。

※あらすじの紹介と一部“ネタバレ”の部分もありますので、ネタバレがOKな方は是非お読みください。

紺碧の海、燦燦と輝く太陽、美しいイスキア島に集う19人のイタリア大家族

『家族にサルーテ!』と聞いて、NHKの人気番組『鶴瓶の家族に乾杯』を思い出した人は私だけでしょうか?

碧い海と青い空、満面笑顔の美しいイタリア家族そして美味しそうな食事たち。こんなビジュアルに『家族にサルーテ!』だったら、絶対ほのぼのに少しドタバタのほんわかコメディだと思います。思いました。観るまでは。

しかし違うんですね。イタリアの原題は『A casa tutti bene(家ではみんな良い感じ)』。これは思いっきり、皮肉を込めたタイトル。今、何かと話題に上がる“闇”ワードですが、この映画はズバリ家族の“闇”に次々とスポットが当たっていく物語なのです。

イタリアのイスキア島に暮らす裕福なピエトロ&アルバ夫婦の結婚50周年の金婚式を祝うために、親戚や家族一同19名が島にやってきます。笑顔で食卓を囲み、当たり障りのない和やかな会話を楽しみピアノの周りに集まってワイン片手に陽気に歌をうたう数時間。

そこへ、ちょっぴり辛辣なセリフが交わされるとパーティの主役である一家の長ピエトロが

「さあ! もう船の時間だ、早くしないと乗り遅れてしまうよ」

と客人たちを急かします。皆があたふたと港へ急ぐと、嵐の影響で船は欠航。途端にざわめきだす客人たち。

「明日大事な予定があるのに!帰らなきゃいけないんだ!」

と苛立ちを露わにし、何としても帰ろうとする夫に

「私はあなたとゆっくりする時間ができて嬉しいのよ」

と笑顔で語り掛ける妻。

…徐々に不穏な雰囲気がムンムンと漂い始めます。

闇ケース1:不倫夫&心の支えはブッダの教え妻

登場人物たちがどんな闇を抱えているか、少しご紹介いたしましょう。まずはアラフォー女性あるあるネタのひとつ。夫の不倫問題。

ピエトロ&アルバ夫婦の長女サラは夫の不倫に長年苦しめられています。しかし表向きはそんなことをおくびにも出さず平静を装い夫に優しく接し続けます。ですが実情は酒浸りでワインを手放せず、心の支えはブッダの教え。

「私はブッダの教えがあるから心穏やかでいられるの」

夫が若い女と不倫真っただ中で心はボロボロなのに、仲の良い夫婦のふりを続ける。その目はハッキリいって怖いです。かたや夫は妻が不倫に気が付いているのを分かっているのかいないのか、いつも心ここにあらずで困り顔の表情ばかり。

見ていてかなり切ないです。

闇ケース2:元嫁に嫉妬する愛を乞う妻&女を幸せにできない夫

写真:後ろふたりがカルロ&ジネーヴラ夫婦

次にこれまたあるあるのバツイチ再婚問題。

ピエトロ&アルバ夫婦の長男カルロはバツイチ再婚です。前妻エレットラとの間に16歳の一人娘ルナが、現在の妻ジネーヴラとの間にはまだ幼いアンナという娘がいます。

エレットラはとても知的なシングルマザー。ピエトロ&アルバ夫婦に気に入られていて、金婚式にも招待され、娘と娘のボーイフレンドと3人でやってきます。これがジネーヴラには気に入りません。ちょっとおつむの弱そうなジネーヴラはエレットラに焼きもちを焼いているのか、自分に自信がないのか分かりませんが、「エレットラとは口をきくな」と、カルロに無茶ぶりをします。

しかし、家族の集まりでそんなことができるわけもなく。カルロとエレットラは会話を交わします。年頃の娘のことが父親として気になるカルロにとっては当然です。

写真:左が前妻エレットラ。

ふたりが話している現場を目撃したジネーヴラは激昂! エレットラだけでなく娘のルナについても暴言を吐きカルロを罵倒し激ギレさせます。ついにはカルロに断崖絶壁に追い詰められ

「殺してやる!」

と叫ばれます。情熱の国のイタリア人おそるべし。

その後カルロから「冗談だよ!」と言われましたが、冗談で言っていいことではありません。

かたやエレットラはカルロとふたりで話している時に

「上手く恋愛ができない」

という悩みを話し始めます。「どうやって恋したらいいのか分からない、私は恋に向いていないんだと思う」と。それは元夫への未練があるというより、ひとりの女性として愛されたいのにどう愛されたらいいのか愛せばいいのか分からない、という苦しみのようでした。

けっきょく前妻のエレットラも今妻のジネーヴラも同じことで悩んでいる…つまり…問題は一人の女をきちんと愛せないカルロにあるんじゃないの? と思ってしまいました。

闇ケース3:借金まみれの無職夫&若さ溢れるエネルギッシュ妊婦妻

妊娠したのはいいけれど、夫は無職で借金まみれ。首の回らないがけっぷちの状況なのはピエトロ&アルバ夫婦の甥のリッカルド&ルアナ夫婦。

ピエトロ&アルバ夫婦は複数のレストランを成功させていて、それを引き継いでいる一族はとても裕福です。が、リッカルドは素行が悪く家族の厄介者。何度となく職を家族から紹介されますが長続きせず現在は無職で借金まみれ。今回、本当に切羽詰まって家族に助けを求めるものの、ことごとく断られます。

そんな中、妻ルアナが反撃に出ます。温かい理想的な家族だと思われていた一族に次々と勃発するトラブルをあげつらい

「どん底の気分で来たけど、女王様の気分で帰れるわ!私はあんたたちとは違う、どんな時でもリッカルドを愛し抜く!」

と宣言するのです。

金はないけど、愛はある。…若かりし頃を思い出します。

その他にも、まだまだ色々な闇ケースから引き起こされる感情の爆発は続きます。そして

「ああ…もう本当にどいつもこいつもどうしようもないわ…」と、うんざりしてくるのですが…これが誰一人として感情移入できない人がいないのです…。

あ、2人いました。16歳のカップルのピュアさと美しさは天使レベルで癒されました。

それ以外の、感情をむき出しにして罵り合う大人たちの姿は痛々しく切なく苦しく悲しい…けれど、彼らのもつ闇はどれも自分や自分の近しい人たちが持っていて日々苦しんでいる闇でもあったのです。

いよいよ感情の爆発が最高潮に達した時、一家の長であるピエトロは叫びます。

「俺は孤児だ!家族とかむかつくんだ!」

『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』は、家族とは血肉ある人間の集合体の呼称であり、家族という集合の中に家族として理想の個人が存在しているわけではない、ということをよおーく教えてくれます。

家族って何なのか、各々によって思うところがあると思います。けれど、どこかの誰かの理想の家族に自分たちを当てはめて窮屈になってることがどれだけ無意味でバカバカしいか。

自分の人生を生きたいと思ったら、自分の信じる幸せな家族のカタチを自分で見つけるしかないのだな、と改めて感じさせる素晴らしい群像劇でした。

『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』は現在、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロード―ショー中。美しい映像と共にたっぷり人間を感じられる作品です。

『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』

Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロード―ショー中

公式H.P:http://salute-movie.com/

映画「家族にサルーテ!イスキア島は大騒動」

http://salute-movie.com/

乾杯のグラスに注がれたのは、美しき家族19人の甘い嘘と苦い真実。/監督:ガブリエーレ・ムッチーノ 出演:ステファノ・アコルシ、ステファニア・サンドレッリ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ/原題:A casa tutti bene



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