“恋愛結婚というパッケージ”が日本の夫婦をおかしくする<最終回>【#FocusOn】 | 大人のワタシを楽しむメディア
“恋愛結婚というパッケージ”が日本の夫婦をおかしくする<最終回>【#FocusOn】

“恋愛結婚というパッケージ”が日本の夫婦をおかしくする<最終回>【#FocusOn】

『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト新書)著者の大正大学 心理社会学部 人間科学科 准教授 田中俊之さん。男性学の第一人者である田中先生からお話をお伺いしてきたインタビュー最終回は現代社会の結婚についてです。


前回までの記事はこちらから。

インタビュー最終回は、「恋愛と結婚は別」とおっしゃる田中俊之先生に、なぜそう思われるのかお聞きしました。その前提は“近代の日本は社会のつくり方に無理がある”という事なのですが…いったいどういう事なのでしょう。

土台がないところに社会を創っているから変になる

――近代の日本は社会のつくり方に無理やり感があるというのはどういうことなのでしょうか?

日本はとりあえず一定程度、西洋の在り方に真似て社会を創っているわけですけど、土台が無いところに建てているから変なんですよね。例えば、1990年代以降の流行ですが、クリスチャンでもないのにチャペル式をするといったことが典型的かと思います。僕もやったので人のことは言えないんですけど(笑)

――(笑)

まあ、そんなこんなで、何から何まで変なことが多いわけです。なので、家族をどう作るかと言う仕組みも上手くできてないんです。日本人は家父長制のお父さんがすべてを支配するような家族形態以外のものが正直よく分かっていない

――ああ…なるほど。

特に“親がお見合いをさせて結婚”という時代が終わって「恋愛でも何でも好きにしていいよ」となった時にフォーマットがないからどうしたら良いのか分からない。そんななかでとりあえず「恋愛結婚」という言葉があたかも一つの単語であるかのように定着していく。けれど冷静に考えてみると恋愛と結婚が違うって言うのは普通の事なんです。しかし“恋愛の先には結婚がある”というパッケージになっちゃったから区別がつかなくなる

――冷静に考えてみれば恋愛と結婚が別ということは分かると思うんですが、正直“恋愛と結婚は別”という認識で結婚をしている人は少ないと思うんです。なので結婚したら「結婚する前はこうじゃなかった、ああじゃなかった」という話が出てきてしまう…“結婚と恋愛は別”だということが分かって結婚すると無駄な摩擦はなくなると思いますし、現在「こんなはずじゃなかった…」と思っている人たちも楽になると思います。なので、「結婚と恋愛は別」だと言う理由を、ビシッと田中先生から教えていただけますでしょうか(笑)

恋愛は非日常で結婚は日常。つまり恋愛と結婚は別物である

ああ、なるほど。それはですね、恋愛は非日常なんですよ。毎日会わないし、一緒に暮らしていない、週何回か会っても「バイバイ」と別れて別々の場所に帰っていく。そして非日常を演出するためには不平等がスパイスなんです。例えば“女は誘われる側、男は誘う側”とか。女性は「誘ってくれるかな?」ってドキドキするし、男性は「誘いにのってくれるかな?」ってドキドキする。この不平等がドキドキを生むわけです。本当だったら性差関係なくどちらから告白してもいいし、誘ってもいいんですが、そこには落差が生まれないのでドキドキ感が生まれづらい

――なるほど。わかりやすいですね。

サプライズとかもそうですよね。非日常の演出だから恋愛において大切なわけです。そうなると、女性の場合「結婚したら思っていたのと違った」と思うのって当然で、恋愛においては不平等な関係性がドキドキを生むわけですから、自分をグイグイ引っ張ってくれて上に立ってくれる人が魅力的であるように見える構造なわけです。ですが結婚は日常です。同じ家に住んで、同じものを食べて暮らしていかなきゃいけない。なので本来はフェアじゃなきゃやっていけるわけがない。だって、自分が暮らしているスペースで常に相手の思い通りにしなきゃいけないなんてしんどいですよね。男からしてもなんでも自分が決めなきゃいけない、決めてあげなきゃいけない、というのは、しんどい。デートだったからなんとか頑張ってお店を選んだり予約をしたりしていたけど、日常のなかでそれは無理…。お互い疲弊してします。

なので、日々を暮らしていく、日常を共に過ごしていくという視点から、「どのような人と自分は暮らしていきたいんだろう」と考えてパートナーを選ぶということが必要なのだと思います。

“恋愛結婚”というひとつのワードのように思ってしまっているから、恋愛と言う非日常の連続の先に日常である結婚があると夢想してしまうわけです。

――そして日常生活に嫌気がさし、時に非日常を夢想してしまう…

これからは自分なりの“家族”という価値観を持たなければいけない

そうですよね。なので、本来は結婚式で思い知らせるべきなんでしょうね。「君たちここからは日常が始まるんだぞ!」と。なのにいまだに披露宴などでは「私はあなたに美味しいご飯をいつも食べさせますよ」「僕は君を食べるのに困らせないよ」という象徴でファーストバイトなどの演出が行われていますよね。そんな不平等を家庭に持ち込んじゃったら大変なことになるのに。

――そうですね(笑)非日常のパッケージ化された結婚式を、日常である結婚のスタートとして行い、結婚をしたら日常が始まって「フェアじゃなきゃやっていけない!」となっているのにまた非日常を求めてしまう…。

土台がないから、なんとなくみんなが喜びそうな演出や衣装をパッケージにして「結婚式」として売ることができてしまうわけですよね。式を挙げる夫婦も参加する人たちも、そこに違和感を何も感じない。これからは自分なりの“家族”という価値観を持たなければダメでしょう。

世間的に事実婚とか新しい家族の形ができたから自分も、ではなく、「自分がどうしたいか」を考える。人からの評価を気にしている限り上手くいかないと思います。女性が働いて男性が主夫というカタチだっていいですよね。問題はそれぞれの夫婦がどう在りたいか。自分の家族をどう創りたいかということを考えて話し合っていくことが重要なんだと思います。なんにせよ、“流行っているから”などという理由で乗っかるのは全部ダメだと思います。

――講義の予定時間ギリギリまで真摯に向き合い質問に答えてくれた田中俊之先生。“男性とはこういうもの”という固定観念がガラガラと崩されました。パートナーシップや家族をどう捉えていくかということは“すべて自分次第”。男性学の第一人者、田中俊之先生 著『<40男>はなぜ嫌われるか』はイースト出版から発売中です。ぜひご覧ください! 隣のパートナーが愛おしく見えてくるかもしれませんよ。

文/和氣 恵子、撮影/鈴木 志江菜

田中俊之さんプロフィール

田中俊之さん 博士(社会学)
1975年、東京都生まれ。大正大学心理社会学部准教授 男性学を主な研究分野とする。著書『男性学の新展開』(青弓社)、『男がつらいよ―絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男が働かない、いいじゃないか!』(講談社プラスα新書)、小島慶子×田中俊之『不自由な男たち――その生きづらさは、どこから来るのか』(祥伝社新書)、田中俊之×山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)
「日本では“男”であることと“働く”ということとの結びつきがあまりにも強すぎる」と警鐘を鳴らしている

<40男>はなぜ嫌われるか (イースト新書)

¥ 930

<40男>はなぜ嫌われるか (イースト新書) 「アラフォー」などと生易しい呼び方はやめよう。<40男>のリアリティと現実のギャップを考える。 2015年時点で30代後半から40代前半までの男性を、本書では「40男」と呼ぶ。この世代は、「昭和的男らしさ」と「平成的男らしさ」の狭間を生きている。「働いてさえいればいい」と開き直ることも難しいし、若い世代のようにさらりと家事・育児もこなせない、自分の両面性に葛藤し続けてきた男たちである。問題は、若い女性への強い興味に象徴される、そのリアリティと現実のギャップにある。40男の勘違いは、他人に迷惑をかけるだけではない。そのギャップは、僕ら自身の「生きづらさ」に直結しているのだ。



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