世界を良くするためにあなたは何がしたいですか?【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#12】 | 大人のワタシを楽しむメディア
世界を良くするためにあなたは何がしたいですか?【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#12】

世界を良くするためにあなたは何がしたいですか?【大網理紗 エッセイ “自分軸”で生きるということ#12】

もし「5分後に避難してください」と言われたらあなたは何を持って行きますか?もし「世界を良くするためにあなたは何がしたいですか?」と言われたらあなたは何て答えますか?アトランタ在住の国際基準マナー講師の大網理紗さんに日々感じたことを綴ってもらう人気エッセイ。今回は一日一日を慈しみ大切に過ごすことの素晴らしさについてのお話です。


すべてを赦し争わない

「世界を良くするためにあなたは何がしたいですか?」 私が暮らすアトランタには「I Have a Dream」の演説で有名なキング牧師の生家が保存されている歴史地区があります。公民権運動最大の指導者であり、ノーベル平和賞を授与され39歳で暗殺されるまで、自分の信念の元、生ききったキング牧師。そんなキング牧師の人生を授業で学んだあと、アトランタの小学生が先生からされるのが冒頭の質問です。子どもたちは「世界を良くするために自分がしたいこと」を発表するように促されます。なんとも壮大な質問。

大人の私たちでも即答するのが難しいと感じてしまう質問。いえ、むしろ大人になった私たちだからこそ、答えに詰まってしまうのかもしれません。

この夏、「ワガママ宣言!」をした私は、仕事をして旅をして、旅をして仕事をして…そんな風に旅を日常の一部に溶け込ませるような夏休みを過ごしました。旅したところのひとつはペンシルベニア州。ペンシルベニア州の最大都市フィラデルフィアは大好きな美術館がたくさんある美しい街です。郊外のランカスターにはアーミッシュの人々が暮らしています。

アーミッシュの家のキッチンでは、添加物などを使わない素朴な味わいの料理が作られています。ミートボールなどのアーミッシュレシピも人気です。ちなみにアーミッシュの人々は、日曜日は仕事や家事などの労働をしません。

“アーミッシュ”という存在をご存じですか? アーミッシュはドイツ系の移民で、今もなお、電気を使わない生活をしています。スマートフォンもパソコンも持たず、移動も車ではなく馬車。家庭で使う冷蔵庫や照明器具なども電気ではなく、プロパンガスを使用して動かしています。自給自足の生活を送り、化学肥料などを一切使わず作っているジャムやチーズ製品はとても人気で、多くの人たちから愛されています。決して現代技術すべてを否定しているわけではなく、それが「自分たちのアイデンティティを喪失しないものかどうか」を検討したうえで、必要なものだけを取り入れた生活を送っているのです。

宗教上の理由から写真撮影を好まないアーミッシュの生活は謎に包まれていますが、アーミッシュの生活に実際に触れてみたい、子どもも何か感じてくれたらと思い行ってきました。

「あまりの高度な教育は知識が先行して、謙虚さを失い高慢を招く」

という信条の元、学校教育は8年間のみ。過去、そんなアーミッシュの学校に突然男が乱入し、子どもたちや教員を銃で殺傷するという悲惨な事件が起きました。当時のメディアによると、自分より小さな子どもに銃口が向けられた際、13歳のアーミッシュの女の子が「私から撃って。ほかの子は解放して」と男に告げ、身代わりとなって射殺され、その後11歳の妹も「次は私を」と続き、彼女も銃撃されたそうです。

それでも、誰かと戦ったり争ったりすることをしないアーミッシュは、そんな残酷な事件を起こした犯人に赦しを表明しました。「私たちは彼を赦します。そのように育ってきましたから」と言って。

誰もがチョコレートを買える世の中に

ペンシルベニア州にある「Hershey’s Chocolate World」。チョコレート工場の見学ができたり、世界でひとつだけのオリジナルチョコレートの製作ができたり、世界で一番大きなサイズのキットカットやキスチョコのお土産が購入できたりします。

アーミッシュの人々が暮らす近くには、キスチョコで有名な「ハーシー」の名前がついた街があります。ハーシーはアメリカを代表する実業家のひとりです。 ハーシーの信念は「誰でもチョコレートを買えるようにすること」。100年以上前、高価で一部の人しか口にすることができなかったチョコレートを、幼少期まともな教育を受けることができなかったハーシーは、自分のような恵まれないこどもたちにも届けたかった。そのために、何度も挫折を繰り返しながら、チョコレート製造工場をつくりました。そんなハーシーはいつしか「街そのものをつくりたい」という夢を抱きます。あまりに無謀すぎる夢に誰ひとりとして、賛同する人はいませんでした。

それでもハーシーは、住宅、郵便局、学校を建設して、従業員に提供します。多くの人にチョコレートを届けるためには、大量生産できる仕組みが必要で、働いてくれる大勢の従業員が必要でした。だから彼は従業員が安心して働ける「街」をつくろうと考えたのです。

さらに当時、社会の重荷として冷たい目を向けられていた孤児のために、学費や医療費無料の職業訓練校までつくり、将来そこを卒業した子どもたちがハーシーの工場で働けるような仕組みも整えました。こうして現在の街「ハーシー」が出来上がっていったのです。

アーミッシュもハーシーも、一見、まったく違った価値観と文化を持っています。しかし、どちらも自分の信念を貫き、逞しく、美しく、生きています。

あと5分で逃げてください! そう言われた時あなたは?

ペンシルベニア州の旅の最後に、「ランタンフェスティバル」に参加してきました。 ランタンフェスティバルは、日本の精霊流しのようなものです。ランタンに火をつけて、想いを込めて、みんなで一斉に空へ飛ばします。まさに、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』の世界。映画でも、行方不明になった娘ラプンツェルが帰ってくることを祈って、毎年、娘の誕生に、王様とお妃様が灯りをともしてランタンを飛ばします。

全米各地で開催されているランタンフェスティバル「THE LIGHTS」。ランタンに「未来への希望や夢」を込める人もいれば、過去と決別するための方法として想いを込める人もいます。

空に飛ばすランタンには、皆思い思いのメッセージを書きます。お話したご夫婦が書いていたメッセージが、とても素敵でした。「Life is Awesome!(人生は素晴らしい!)」 そのメッセージに触れた私は、ちょうど1年前、ジョージア州のサヴァンナで出会ったご夫婦のことを思い出しました。宿泊したホテルのアペリティフタイムで偶然、ご一緒したご夫婦。ご夫婦は、週末に上陸する予定の大型ハリケーンから逃れるため、このサヴァンナへ避難してきていました。

日本でもアメリカでも、自然の脅威には逆らえないものがあります。私自身も東日本大震災を経験し、思うことがたくさんありました。アメリカでは地震はあまりないものの、ハリケーン被害は想を絶するものがあります。ご夫婦が避難してきた大型ハリケーン「フローレンス」上陸の際には、100万人以上に避難勧告がでる緊急事態が発令されました。

私はご夫婦のお話をきいて、思わず考えてしまいました。「もし明日、避難しないといけないとしたら何を持っていくだろう…」パスポート、貴重品、パソコン、思い出の品、衣類や子どものお気に入りのおもちゃ、常備薬…。考える時間があればあるほど、あれもこれも必要な気がしてきてしまいます。でも「もしあと5分で準備を」と言われたら…? そう考えた時はじめて、「何も持っていかなくていいのかもしれない」と思いました。

そして急に思ったのです。残された時間が5分なら、「家の部屋の写真を撮りたい」と。家族と過ごした家、子どもが育った部屋。今週末には、もしかしたらハリケーンですべてがなくなってしまうかもしれないけれど、思い出は消えない。消えないけれど、写真に残しておきたいと思ったのです。写真は私にとって「特別な瞬間を切り取るもの」で、「“わあ~!”と心が震えた一瞬を残しておくもの」です。

ですが、家の中での写真は、意外と撮っていないかもしれない。「最後の瞬間に残しておきたい」ともし思うなら、もっと日頃から、このあたりまえすぎる日常を大切に切り取っておくことを忘れてはいけないなと思いました。

私たちの人生にはいつも「Awesome!」があふれています。あたりまえの日常生活の中にも家の中にも会社の中にも、たまに訪れる非日常の一瞬にも。私たちが「Awesome!」と出会う旅は、これからもずっと続いていきます。その旅の中で私たちは、「世界を良くするためにあなたは何がしたいですか?」という難しい問いの答えを見つけていくのかもしれません。

リサ・コミュニケーションズ代表 大網理紗

大網 理紗

リサ・コミュニケーションズ代表
世界の王室・皇室・政府要人といったVIP接遇業務に従事した後、全国アナウンスコンクール優秀賞、国際優秀賞受賞などの経歴を活かし、話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。
独自のメソッドを開発しコミュニケーションスペシャリストの育成を行なう。大学、教育委員会、企業等で数多く講演。また、宮内庁・王室主催の舞踏会などで社交界の経験を積む。

著書
『人生を変えるエレガントな話し方(講談社刊)』
『大人らしさって何だろう。(文響社刊)』



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この記事のライター

話し方&国際基準マナーのスクールRiSA Communicationsを設立。国際基準マナー講師。

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