映画『エセルとアーネスト』大切な人がそばにいる奇跡【沁みる映画 #06】 | 大人のワタシを楽しむメディア
映画『エセルとアーネスト』大切な人がそばにいる奇跡【沁みる映画 #06】

映画『エセルとアーネスト』大切な人がそばにいる奇跡【沁みる映画 #06】

「スノーマン」という絵本をご覧になった方は多いのではないでしょうか? 優しいタッチのスノーマンはキャラクターとしても広く愛される、絵本の名作です。世界中にファンを持つイギリスの絵本作家レイモンド・ブリッグズが描き出す世界はとても優しく、時にリアルに私たちの心を打ちます。そんなレイモンドが描いた『エセルとアーネスト』は自信の両親の人生を描いた原作をアニメーション化したもの。過酷な時代生きたふたりの平凡な男女の世界を温かくもリアルに描きます。


忙しい日常から離れて、映画の世界へトリップしませんか? 心に沁みる上質なストーリーをご紹介。

今回ご紹介するのはイギリスを舞台に階層階級の色濃い1920年から1969年の月面着陸まで平凡な夫婦として生きたふたりを描いたアニメーション『エセルとアーネスト~ふたりの物語~』です。

※あらすじの紹介と一部“ネタバレ”の部分もありますので、ネタバレがOKな方は是非お読みください。

“平凡” “ふつう” “当たり前” って何ですか?

「さむがりやのサンタ」や「スノーマン」など世代を越えて愛される絵本作家レイモンド・ブルッグズ。世界中にファンをもつ、レイモンドが自身の両親の出会いからふたりの死までを描いた絵本『エセルとアーネスト』が長年の構想を経て、ついに映画化し9月28日(土)から公開になります。

レイモンドは両親のことを「平凡な夫婦」と話します。

“平凡” “ふつう” “どこにでもいる(ある)当たり前な” こんな言葉はよく耳にするものです。そんな時、どんな印象を抱くでしょうか? 

映画のなかで描かれるレイモンドの両親、エセルとアーネストが平凡な夫婦なのだとしたら、“平凡”や“ふつう”、“当たり前”などが持つ言葉の意味を、私は自分の感覚を捨ててもう一度考えなければいけない、私たちが自分を形容する時に“平凡” “ふつう”などという言葉を使っているのだとしたら、それはとてもおこがましいことなのではないか、そんな風に思うほど、エセルとアーネストは無垢で素朴で温かい、愛おしいふたりなのです。

愛が始まるのはいつだって偶然。その種を勇気を出して育てるかどうか

階級社会が色濃く残る1928年のイギリスでエセルは貴婦人のメイドとして働いています。ある日、お屋敷の窓から黄色い雑巾を払っていると、牛乳配達で通りかかったアーネストと偶然目が合います。ふたりは毎日、お互いを意識して姿を探しますが、会える日があったりなかったり。そんな週末、アーネストは勇気をふりしぼってエセルをデートに誘うのです。

そして2年後、ふたりは結婚して小さな家を購入します。ローンは25年。ふたりの夢と愛がいっぱい詰まった家です。大理石の柱に鉄の柵、水洗式のトイレにふたりは感激します。そして少しづつ少しづつ家をふたり色に染めていきます。とてもとても幸せな時間が流れます。

そして、なかなか子どもに恵まれないふたりでしたが、ようやく待望の赤ちゃん、レイモンドが誕生します。しかし当時にしては高齢出産でしかも難産だったために、ふたりは二人目の出産を医者に止められます。

エセルはレイモンドを目の中に入れても痛くないほど可愛がり、そんなエセルをアーネストは温かく優しく見守ります。エセルとアーネストは心の底から信頼し合っていて、その愛は、いつも、常に、どんなシーンであっても泣きたくなるほど画面から伝わってくるのです。

幸せな3人の生活は戦争に侵され始めます。ヒトラーが政権を握り、第二次世界大戦がはじまり、レイモンドは疎開を余儀なくされます。エセルは悲嘆にくれますが、そんなエセルをアーネストは優しく支えます。戦禍が激しくなり、ふたりの家も空襲に遭い窓や壁が粉々に吹っ飛び、ふたりの自慢の玄関の鉄柵は軍に没収されます。

破壊された家の前でふたりは呆然と立ちすくみます。

ですが、ふたりはまた、たんたんと家を片付け、冗談を言い合い、政府が推奨しているというシェルターを作ります。激しい感情の揺れやことさらにふたりの逞しさや強さを表現するような描写は一切描かれません。ですが、ふたりはどうしようもなく強く、“今”をできうる限りの楽しさの中で生きているのです。

愛し愛される人がそばにいることを奇跡と呼ぶのかもしれません

戦争が終わり、若者文化が訪れレイモンドはヒッピーのようなスタイルになり結婚し、エセルとアーネストは電話やテレビ、車を買い、少しずつ少しずつ年老いていきます。人類が月に着陸した時、エセルはすっかり元気がなく、それでもアーネストとふたりで居間で月面着陸のシーンを見ます。

そして、その2年後の1971年エセルが亡くなり、その後を追うようにアーネストもこの世を去ります。

ふたりが互いの傍を離れた時間は1年足らず。

エセルとアーネストはふたりが出会ってからずっと共にあり、そして今も、絵本の中で映画の中で共にあり、天国とよばれる場所があるのなら、きっとそこでも仲良くふたりでお茶を飲んでいるんじゃないかと思ってしまうのです。

ふたりの物語を紡いだ子どもであるレイモンドが伝えたかったこと、それは出会いの奇跡であり、ふたりへの大いなる感謝だったのはないでしょうか…そしてそれは、誰かから生まれたすべての人が持つことができる感情なのかもしれません。

映画『エセルとアーネスト』は9月28日(土)より岩波ホール他、全国で順次公開です。

“当たり前”の日常に追われ、何かを置き去りにしているかもしれない…そんなことをふと感じたら、ぜひ『エセルとアーネスト』を観に行ってみてください。

映像だけでなく音楽にも力を入れている本作のエンディングを作曲し歌うのはポール・マッカートニー。温かい歌声が私たちを優しく包んでくれますよ。

『エセルとアーネスト ふたりの物語』

監督:ロジャー・メインウッド
原作:レイモンド・ブルッグズ(バベルプレス刊)
音楽:カール・デイヴィス
エンディング曲:ポールマッカートニー
声の出演:ブレンダ・ブレッシン/ジム・ブロードベント/ルーク・トレッダウェイ

2016年/94分/カラー/ドルビー・デジタル/ヴィスタサイズ/イギリス・ルクセンブルク/原題:Ethel & Ernest/日本語字幕:斎藤敦子 配給:チャイルド・フィルム/ムヴィオラ

9/28(土)岩波ホールほか全国ロードショー

映画『エセルとアーネスト ふたりの物語』オフィシャルサイト

https://child-film.com/ethelandernest/

世界中で愛される絵本「スノーマン」の著者レイモンド・ブリッグズが、自身の両親の人生を描いた原作を、心を込めて忠実にアニメーション映画化。ロンドンの片隅で激動の時代をともに歩んだ40年。”普通”を懸命に生きた夫婦の感動の物語。9/28(土)岩波ホール他全国順次公開



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