
忙しい日常から離れて、映画の世界へトリップしませんか? 心に沁みる上質なストーリーをご紹介。
今回ご紹介するのは是枝裕和監督の最新作『真実』。日本人初のヴェネチア国際映画祭オープニング作品であり、主演に映画界の至宝ともいわれるカトリーヌ・ドヌーヴを迎えたことでも話題になりました。
母娘とは? 女優とは? 人生とは? 【沁みる映画】第7回です。
※あらすじの紹介と一部“ネタバレ”の部分もありますので、ネタバレがOKな方は是非お読みください。
カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュの“真実”

photo L. Champoussin ©3B-分福-Mi Movies-FR3
フランス語なんてわからないし、カトリーヌ・ドヌーヴがどんな人なのかも全然知らない。なのに…カトリーヌ・ドヌーヴが登場すると、それはもうカトリーヌ・ドヌーヴがそういう存在としてそこにいるとしか思えなくなる。どんな役であってもそれはすべてカトリーヌ・ドヌーヴでそれが“真実”なのだと。
映画は大女優のファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と女優を志していたものの現在は脚本家としてハリウッドで活躍する娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)のふたりの関係を中心に話が進みます。
大女優を演じるカトリーヌ・ドヌーヴはどこまでも美しくかっこよくチャーミングでセクシー。こんな魅力的な人が母親だなんて気の毒すぎる…と、娘を演じるジュリエット・ビノシュに思わず同情するほど。
しかし、気が付きます。そんな風にカトリーヌ・ドヌーヴを気高く存在させることができるのはジュリエット・ビノシュが本物の娘として、子どものころから母との関係に悩んだ一人のリュミールという女性そのものになっているからなんだ…ということに。
そこに真実が存在します。
二人の大女優の間には真に母と娘の関係があり、その二人の感情のせめぎ合いを覗き見しているような気持ちでどんどん目が離せなくなるのです。
“真実”なんてたいしたことじゃない

photo L. Champoussin ©3B-分福-Mi Movies-FR3
リュミールの夫は売れかけの役者ハンク(イーサン・ホーク)。そして一人娘がいます。ファビエンヌが自伝本『真実』を出版することになり、リュミール一家はアメリカからはるばる出版祝のために駆け付けます。
しかしお祝いとは表向きの口実で、リュミールは気がかりでならなかったんです。
母親の自伝本『真実』に“何が書かれているか”が。
出版前に必ず原稿を見せるように約束していたのにも関わらずファビエンヌは平気で約束を破り、そのことを問い詰めると平然と「送ったわよ」と嘘をつく母親。
『真実』を一晩で読み上げ、そこに書かれていることは現実にはなかったと責める娘に
「事実なんて退屈だわ」
と言い放つ母親。
娘からすると大きな大きな“真実”を隠し続けているように見える母親。
娘の母親への不信感は募りに募り、ある日、ディナーの席で感情が爆発し母親を問い詰め責め立てます。
しかし、母親は悪びれることも、寄り添うことも、受け止めることもせず、ただ、彼女自身としてそこに居続けるのです。
世にもやっかいでややこしい、血を分けた母と娘の関係

©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA
娘がどんな感情の爆発を見せようとも、ただそこに在り続ける母親。彼女が娘によって感情を動かされることはないのだろうか・・・・・?
映画にはいくつもの“真実”が描かれます。
その“真実”は観る人によって違うでしょう。何をもって“真実”とするか。私たちは自分の見たいもの、信じたいものを、見て信じることになるのでしょう。
人間の数だけ、出来事を共有した分だけ“真実”がある。
是枝裕和監督の最新作『真実』は、10月11日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開です。

『真実』
原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ『シェルブールの雨傘』/ジュリエット・ビノシュ『ポンヌフの恋人』/
イーサン・ホーク『6才のボクが、大人になるまで。』/リュディヴィーヌ・サニエ『8人の女たち』
撮影:エリック・ゴーティエ『クリスマス・ストーリー』『夏時間の庭』『モーターサイクル・ダイアリーズ』
配給:ギャガ
10月11日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開
©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

カンヌ国際映画祭パルムドール受賞『万引き家族』是枝裕和監督作品 映画『真実』10月11日(金)公開
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