生理バッチが賛否 年代によって生理に関する価値観が違う!? 歴史社会学者田中ひかるさんインタビュー<第二回>【#FocusOn】 | 大人のワタシを楽しむメディア
生理バッチが賛否 年代によって生理に関する価値観が違う!? 歴史社会学者田中ひかるさんインタビュー<第二回>【#FocusOn】

生理バッチが賛否 年代によって生理に関する価値観が違う!? 歴史社会学者田中ひかるさんインタビュー<第二回>【#FocusOn】

生理痛や、内膜症などの婦人科系疾患、ナプキンの通気性の悪さによるニオイ問題など、生理にまつわる様々な悩みを抱えている女性は多い。また、そういった悩みは恥ずかしくて人に言えない、という話もよく聞きます。しかしその感覚はどうやら“年代”によって違うようです。歴史社会学者 田中ひかるさんに生理についてお話を伺ったインタビュー第二回目です。


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歴史社会学者 田中ひかるさんへ著書『生理用品の社会史』(KADOKAWA)についてインタビューした第一回目は平安時代から何百年もの間、生理の名のもとに女性は不浄視され差別されてきた歴史などについてお話いただきました。インタビュー第二回目は現代社会における“生理”の価値観の変化や話題となった生理バッジなどについてです。

“生理バッジ”が社会問題に。賛否両論その理由は?

――大丸梅田店の生理バッジは昨年メディアに大きく取り上げられ世間の注目を浴び話題になりました。田中さんは“生理バッジ”についてはどう思われますか?

田中ひかるさん:もともとは「個人の体の状況をわざわざ人に明かす必要はないんじゃない?」という考えですが、生理用品などの女性用品を扱う売り場で、コミュニケーションが円滑になるなら、それもありかなと思いました。生理バッジを提案したのは当事者の女性で、社員同士でいたわりあえるようにという思いからだったと聞いています。もちろん、強制ではなく任意です。

――そうですね。今、大丸梅田店のスタンスとしてはそういうカタチに落ち着いて、生理バッジも社員同士だけがわかるようなもので運用していますね。

田中ひかるさん:批判も大きかったですが、生理を明かすことに対する議論がおきたことは、意義があったと思います。

――若い女性が生理バッジを発案した、というところでもジェネレーションギャップというか、若い世代は“生理”を恥ずかしいものと捉える感覚はなくなってきているのかな、と思いました。

田中ひかるさん:個人差も大きいので、世代で区切ることは難しいですが、若い人たちの方が比較的“生理=恥ずかしい”という意識は希薄だと思います。先ほども言いましたが、かつては生理用品の不備によって恥ずかしい思いをすることが、少なくありませんでした。でも、今の若い人たちは優れた生理用品によって恥ずかしい思いをすることもあまりないでしょうし、なにより憧れのタレントさんが生理用品のCMをしていたりするので、生理に対するネガティブなイメージは少ないと思います。

――本当にそれは素晴らしいことですよね。先人たちのおかげですね。

戦後2年目には生理休暇が誕生

田中ひかるさん:ところで“生理休暇”は終戦から2年後の1947年にできたのはご存じですか?

――『生理用品と社会史』を読んで初めて知り、とても驚きました。「そんな時代にもう生理休暇があったの!」って。

田中ひかるさん:むしろ、その当時だから必要だったんです。当時はまだまともな生理用品も、生理痛に効く鎮痛薬もありません。職場でも、女性専用トイレはほとんどなかった。ですから、生理休暇が必要不可欠でした。一方で、それが女性の社会進出の足かせになったのも事実です。

――なぜでしょうか?

田中ひかるさん:職場によっては女性が全員、生理痛などの不調がなくても、閉経後の女性でさえ、毎月4日休暇をとっていました。ちなみに、毎月生理休暇をとっていた女性は、職場で欠勤の理由として、「生理休暇」と貼り出されたのはイヤだったとおっしゃっていました。
いずれにしても、権利としての生理休暇を一律にとる職場、時代がありました。しかしそれは、女性には生理があるので、男性と同じようには働けないという認識にもつながりました。

そして生理用品の性能が年々良くなり、鎮痛薬もドラッグストアなどで簡単に入手できるようになり、女性の社会進出が進み、会社に女性用トイレがあるのも当たり前になりました。少しずつ、生理休暇を取得する女性も減り、生理休暇の存在が形骸化したんです。

――なるほど…

田中ひかるさん:1985年の男女雇用機会均等法の施行を機に、労働基準法から「生理休暇」という文言がなくなったのは、そういった事情を反映しています。

――そういう歴史を知らないと、生理休暇はあった方がいいような気がしてしまいます。

田中ひかるさん:生理休暇という言葉が恥ずかしくて休暇を申請できないという人もいますから、生理休暇という枠でなくても、休みを取りやすくすべきです。つわりや更年期障害が重い人、男性でも更年期が辛い人もいるでしょうから、体調が悪い人が無理せずに済む職場環境を作るべきです。

――昔に比べると、生理痛なども緩和できるようになりましたよね。

田中ひかるさん:そうですね。市販の鎮痛薬が効かない場合は、婦人科へ行けば適切な薬を処方してくれます。低用量ピルで、生理痛や月経前症候群(PMS)をコントロールすることが可能です。ただ、お母さんから「生理は病気じゃないんだから鎮痛剤は飲まない方がいい」と教えられ、人知れず我慢している女性もいます。母子でも、生理痛の重さには違いがありますから、自分が我慢できたから、あなたも我慢しなさいというのは酷です。

――ああ…それは分かります。間違った情報ですね。

田中ひかるさん:低用量ピルも「避妊薬」というイメージが強く、生理痛やPMSに効果があるということがあまり知られていません。「遊んでいると思われるのがいやで、飲んでることを知られたくありません」という女性もいます。

――そういった偏見によって低用量ピルの普及が遅れて女性の自主的な避妊が進まないのが日本社会の現状ですね。

田中ひかるさん:性に関する情報が不足しているにも関わらず、何か起こると自己責任にされてしまうというのは、理不尽です。

初経(初潮)教育によってその後の生理感は大きく変わる

――日本人が生理に関して正しい知識を持てず、自分に最適な選択ができない人が多いのはどうしてなのでしょうか?

田中ひかるさん:初経(初潮)教育の不備だと思います。性教育を行う先生次第で子どもたちの生理に関する知識、感覚は大きく変わると思います。

――本当にそう思います。私は体育館に女の子だけ集められてキューピーちゃんが生理を説明するスライドを見せられた記憶がありますが、スカートに赤い血が丸く染み出ていて、「こういうことになることもあるので、注意しましょう」と言われて「血が出るの!?」とびっくりした記憶があります。生理の仕組みを教えられるというよりも現象だけの説明をされたような…。

田中ひかるさん:そうですね。あまり踏み込んだところまで教えられないという背景には、「寝た子を起こすな」という意識もあると思います。

――初経(初潮)教育によって我々大人も生理に関して悩みを抱えることが多い、という問題点が分かってきました。次回、最終回は今後、生理用品はどんな進化を遂げるのか、最先端生理用品などについてお話を伺いました。お楽しみに!※最終回は3月13日(金)12時公開予定

田中ひかるさんプロフィール

1970年東京都生まれ。博士(学術)。著書に『月経と犯罪―女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)など。

生理用品の社会史(KADOKAWA)

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