将来生理がなくなる!? どんどん進化を遂げる生理用品 歴史社会学者 田中ひかるさんインタビュー<最終回>【#FocusOn】 | 大人のワタシを楽しむメディア
将来生理がなくなる!? どんどん進化を遂げる生理用品 歴史社会学者 田中ひかるさんインタビュー<最終回>【#FocusOn】

将来生理がなくなる!? どんどん進化を遂げる生理用品 歴史社会学者 田中ひかるさんインタビュー<最終回>【#FocusOn】

快適なナプキンやタンポン、月経カップに月経ディスク、快適なショーツ、と生理用品はどんどん進化を遂げています。“生理を快適に”といいますが、これからは生理自体がなくなる世の中が来るかもしれないと歴史社会学者 田中ひかるさんは言います。インタビュー最終回です。


前回の記事はこちらから

『生理用品と社会史』(KADOKAWA)著者 歴史社会学者 田中ひかるさんに生理と生理用品、日本社会の月経観などについてお話を伺ってきた最終回。生理用品は月経カップや月経ディスクなどが登場し経血処理がどんどん楽になってきていますが、田中ひかるさんは将来、生理そのものがなくなるかもしれない、と言います。いったいどういうことなのか、お話を伺いました。

月経カップに月経ディスク、賢く使って快適に

――ここまで生理や生理用品と日本社会についてお話を伺ってきました。今回は最新の生理用品事情についてお話を伺えればと思っております。

田中ひかるさん:今はナプキンも素晴らしい品質のものがたくさんあって本当に楽になりました。日本のナプキンは世界最高水準だと思います。アンネナプキンが誕生し“需要がある”ということが分かると300社以上ものメーカーがナプキン製造に乗り出したそうです。そうやって切磋琢磨することで良質なものがどんどん出てきたというのは本当に素晴らしいし、嬉しいことですね。

――日本でナプキンは今も生理用品の主流ですが、タンポンの需要はもうほとんどないようですね。

田中ひかるさん:そうですね、タンポンを製造しているのは国内では1社になってしまいました。1964年の東京オリンピックの頃がタンポン全盛期でしたね。

――『生理用品の社会史』の中でタンポンに対する社会の偏見が書かれていましたが、そういった背景もあるのかもしれませんね…現在の日本は様々な生理用品があって自分に合ったものを選べる世の中になりつつあって嬉しいですね!

田中ひかるさん:ええ。エコや自然派の観点などから布ナプキンを使用している女性もいます。

――私は去年、月経カップの存在を知り使い始めたのですが、快適すぎて感動しています。ピルも飲み始めたのですが、このダブル使いで、生理の不快感はほぼゼロと言ってもいいです。生理の真っただ中でも自分が生理だということをほぼ忘れています。

田中ひかるさん:月経カップを使っているんですね! <>b私の周辺でも月経カップを使う人が増えています。私自身は、年齢的に元がとれないと思い、手を出していませんが。

――たしかに1個あたり数千円するので一瞬「高い」と思いますよね。

田中ひかるさん:ええ。でも10年は使えますし、使い方によっては一生ものともいいますし、なにより快適に過ごせるのであればとてもいいと思います。ゴミが出ないという点も、いいですよね。

――そうですね。罪悪感が減りました。

田中ひかるさん:災害時など、生理用品が手に入らないときにも、月経カップは役に立つと思います。

――災害時には特に月経カップは便利だと思います。使えるようにしておくと心強いですね。

田中ひかるさん:ところで、月経ディスクという新しい生理用品はご存じですか?

――知らなかったです!

田中ひかるさん:月経カップの使い捨て版、という感じなのですが、丸い輪にフィルムみたいなものが付いています。このフィルムの部分に経血が溜まります。直径は7㎝くらいあるので、最初は大きさに驚きますが、二つに折りたたんで挿入するので問題ありません。

――縦に入れたのに、きちんと経血を受け止められるように開くんですね!

田中ひかるさん:知り合いの女性は、通常は月経カップを使って、旅行に行く時は月経ディスクを使うそうです。日本では販売されておらず海外のサイトで個人輸入するため、1個200円以上と値段は高いです。そういったこともあって、まだ日本ではあまり知られていませんね。

――色々な生理用品が出てきて快適に生理期を過ごせるようになって、昔のことを思うと考えられないほど現代の日本女性は幸せな状況にありますね。

田中ひかるさん:ええ。でも今が一番、生理用品の需要がある時だと思いますよ。まさに生理用品の過渡期です。

――どうしてでしょう?

田中ひかるさん:この先、生理がなくなる時代が来ると思うからです。

生理がなくなる日も近い!?

――え! どういうことでしょうか?

田中ひかるさん:今もピルで2~3か月生理を止めることができますよね。子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナなど)によって、生理をなくしている女性もいます。生理がないことの快適さに慣れてしまったら、わざわざ生理を経験しようとは思わないのではないでしょうか。もちろん、生理をあえて経験したいという女性もいるでしょうし、医療費もかかります。そしてやはり情報が少ないですから、いっきに普及することはないと思いますが。

――なるほど!

田中ひかるさん:そもそも現代日本の女性たちは、人類史上最も生涯月経回数が多いといえます。子宮内膜症などの病気が増えているのはそのためです。

――昔の女性たちは、そもそも初潮も今より遅かったし、子どもをたくさん産んでいた関係で妊娠授乳期が長く結果的に生理期が短かったんですよね。

田中ひかるさん:そうです。生理用品が進化しなかった原因の一つもそこにあります。

――生理から解放されると女性はもっと自由になりますね! 今回『生理用品の社会史』を読んで、田中さんにお話を伺いたいと思っていたことの一つがまさにそれでした。今、世界中で子どもを持たない、持てない女性たちが苦しんだり悩んだりしている現状があると思います。それは女性=(イコール)生理があり妊娠・出産する生物である、という認識が根底にあるからで、生理から解放されたらその部分の意識は随分変わるのではないかと思うのですが、どう思われますか?

田中ひかるさん:そうですね。生理をコントロールすることで、女性の負担はかなり減ります。また、生理があるというだけで不浄視されたり、学業や職業から遠ざけられていた歴史をふり返れば、生理をコントロールできるというのは、夢のような話です。でも、本当に大事なのは、コントロールの可否よりも、語り方だと思います。不浄視したり、女性差別の根拠にしたりといった、生理に対する見方、語り方に問題があったわけです。

今は、生理について知ろう、語ろうという風潮になっていますから、正しい情報を普及させるためにもとてもよいことだと思います。一方で、それを恥ずかしいと感じる女性にも配慮が必要です。羞恥心や、月経観には個人差があるからです。何のために語るのか、どう語るのかが重要です。

生理の平等化で世界中の女性たちを自由に

――本当に勉強になるお話をありがとうございました。最後に、田中さんが今後、行いたい活動や夢などあれば教えてください。

田中ひかるさん:そうですね…まずは、多くの人が生理に対する正しい知識を持ってほしいと思っています。“生理痛やPMSの有無や軽重、月経観には個人差がある”“生理用品や生理痛などの治療法には選択肢がある”“生理はコントロールできる”という、3点についてまずは知って欲しい。その上で、生理の平等化を目指して微力ながら活動していきたいと思っています。

――生理の平等化とはどういうことでしょうか?

田中ひかるさん:「生理の平等化」とは、ひとことで言うと、“生理をタブー視せず、生理のある誰もが生理用品を入手できる状態にすること”です。

日本の女性は、生理用品には恵まれていますし、生理自体を医学的にコントロールすることも可能になっています。でも、世界にはいまだに、生理用品に不自由している女性や、生理のたびに小屋や洞窟に隔離されている女性たちが大勢いるのです。ものすごい格差があります。

――歴史社会学者 田中ひかるさん著『生理用品の社会史』(KADOKAWA)は、私たち日本人女性が感じている生きづらさ、理由のない自尊感情の低さなどに対するヒントがちりばめられている一冊です。日本人女性が過去に経験してきた事実を“知る”ことで、今を生きる女性たちは真に自由に、自分たちらしく生きられるのではないかと思うのです。

田中ひかるさんプロフィール

1970年東京都生まれ。博士(学術)。著書に『月経と犯罪―女性犯罪論の真偽を問う』(批評社)、『「オバサン」はなぜ嫌われるか』(集英社新書)、『生理用品の社会史』(角川ソフィア文庫)など。

生理用品の社会史(KADOKAWA)

¥ 1056

日本女性の生活を大きく変えた画期的な商品「アンネナプキン」。その誕生は、ほんの50年ほど前のことである。女性の社会進出を支えた商品開発の裏には、一人の女性経営者の一筋縄ではいかないドラマがあった―。植物、絹、脱脂綿、ビクトリヤなど、不便で不快だった古い経血処理の方法から、欧米ほどタンポンの使用が普及しなかった理由まで。一大ビジネスへと発展した、女性史にとどまらない日本社会の変遷を明らかにする。



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