目を背けてはいけない 日本の中絶問題 産婦人科医 遠見才希子さんインタビュー<最終回>【#FocusOn】 | 大人のワタシを楽しむメディア
目を背けてはいけない 日本の中絶問題 産婦人科医 遠見才希子さんインタビュー<最終回>【#FocusOn】

目を背けてはいけない 日本の中絶問題 産婦人科医 遠見才希子さんインタビュー<最終回>【#FocusOn】

“えんみちゃん”の愛称で中高生から支持を得る産婦人科医の遠見才希子さんに日本の性教育や性暴力、中絶問題などについてお話を伺ったインタビュー最終回。世界と日本の性にまつわる常識の乖離はあまりにも大きいようです。


前回の記事はこちらから

性教育や性暴力、中絶問題、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブヘルス&ライツ)など、日本をとりまく性に関する問題について産婦人科医の遠見才希子さんにお話を伺ってきました。最終回は、日本で一般的に行われている中絶法に関する問題です。

世界ではスタンダードな経口中絶薬の存在

――中絶問題についてお話を伺いたいんですが、現在、日本ではどのような方法で中絶が行われているのでしょうか? WHOでは勧められていない方法で行われることがあるというのは本当でしょうか?

遠見さん: WHOが安全な中絶・流産の方法として推奨しているのは、薬剤による中絶もしくは真空吸引法です。合併症などの観点から、子宮内を金属製の器具で掻き出す掻爬(そうは)法は時代遅れであり、行うべきではないと勧告しています。

しかし、日本では長年、妊娠初期の中絶に対して掻爬法が行われています。電動吸引管を使用する方法や、2015年に認可された手動真空吸引法が行われることもありますが、いまだに掻爬法は行われつづけています。そして、海外では30年以上前から使用され、安全な中絶・流産の方法としてWHOの必須医薬品にも指定されている経口中絶薬(ミフェプリストン、ミソプロストール)は、いまだに認可されていません。これでは、日本で世界標準の安全な中絶が行われているとはいいきれません

――なぜ世界ではスタンダードの薬が認可されていないのか、ものすごく大きい疑問が残ります…なぜ日本では駄目なんでしょうか…。

遠見さん:経口中絶薬のひとつであるミソプロストールは、日本にないわけではありません。1錠33円ほどの薬価で胃・十二指腸潰瘍治療薬として認可されています。しかし、中絶や流産に対しての適応はなく、適応外使用をしないように注意喚起されています。

なぜ女性の性の健康を守るための安全な選択肢が、海外のように認可されないのか? それは経口避妊薬(低用量ピル)の認可が遅れた問題ともつながっているかもしれません。

「飲み薬で中絶できるようになると安易な中絶が増える」という意見もあるかもしれません。しかし、中絶の是非と、中絶をどのような手法で行うかは別問題です。思いがけない妊娠や中絶を減らすためのアプローチはもちろん大切ですが、中絶に至るには様々な背景や理由があります。

中絶が必要になる女性が一人でもいる限り、それは安全な方法で行われるべきです。身体的だけでなく精神的にも社会的にも、その人自身の健康を守るために世界標準の安全な医療が提供されるべきではないでしょうか。

40代、自分の体は自分のもの!

――日本は世界で常識とされている中絶法が認可されていないという事を知り、何かものすごく根深い日本社会の問題を感じています。ただ、私たちは知る術は持っている気がしているんです。インターネットがあるし、世界にアクセスしようと思えばできる。知る努力をしていない、とも思うのですがそこはどう思われますか?

遠見さん:医療者側の立場から一般の方へわかりやすく知らせる努力も必要ですね。

――なるほど…世界にアクセスできるといっても英語がわからなければ難しいですしね…私もですが(笑)

遠見さん:本当にそうです。そして、知った上でどういったアクションを起こしていくか。ただ、知る努力をするということは本当に大事なことだと思います。まずは知ることから始まりますよね。

――WOMe世代はもう立派な大人です。ですが、自分の体のことなのに知らない、分かっていない人がたくさんいると思います。WOMe世代でもパートナーと心や体のすれ違ってしまっている人たちは本当に多いと思います。セックスレス問題も根深いです。

遠見さん: セックスレスや性交痛など、セックスや性の悩みは年齢問わず人それぞれありますね。

――できればそんな状態を解消して本当にお互いが気持ちのいいセックスをしていきたいですよね。そう思った時に、パートナーとどんなコミュニケーションをとったらいいと思いますか? また、自分にできることはなんでしょう?

遠見さん: まずは、 “自分の体は自分のもの” “相手の体は相手のもの”だという認識をしっかり持つことです。その上で、想像力をもって相手を知ることは大事なことだと思います。男女でセックスする場合、体に起こりうることは平等ではありません。

当然ながら、妊娠、出産、流産、中絶などは女性の体に起こることであり、男性は代わることはできません。だからこそ「自分だったらどうだろう?」と相手の立場に立って考え、話し合う。自分や相手が望んでいないことはしない。お互いが望むことをする。難しいこともあると思いますが、それでもそういうアプローチをしてみることから始まるのだと思います。

――本当にその通りですね。

一回きりの人生、やり直しはいつでもできる

遠見さん:性についての問題は、情報があふれていても本当に知りたいことが知れなかったり、そもそも正しい答えがなかったり、本当に難しいと思います。

いつも性教育の講演の最後には「一回きり」という言葉を伝えています

一回きりの人生、自分の体も性についても大切にしたい。でも人生どこで失敗するかわからないし、誰かに傷つけられることもあるかもしれない。でも、必ず一回きりの明日はくるし、やり直しはどこからでもできると思うんです。だから、きっと大丈夫って私も自分に言い聞かせています(笑)

――難しい問題に真正面から取り組み全力で活動し真摯に答えてくれる産婦人科医の遠見才希子さん。遠見先生のような方がいるから私たちはこの先に希望がもてるのだと思いますが、同時に私たち女性の自身の問題をこうやって何とかしようとしている遠見先生の活動を応援し、知ることも“今”を動かす大きな原動力になるはずです。ぜひ、遠見先生のブログなどチェックしてみてくださいね。

文・編集/和氣 恵子、撮影/鈴木 志江菜

遠見才希子(えんみ さきこ)さんプロフィール

筑波大学大学院ヒューマン・ケア科学専攻社会精神保健学分野/産婦人科専門医

1984年生まれ。神奈川県出身。2011年聖マリアンナ医科大学医学部医学科卒業。大学時代より全国700カ所以上の中学校や高校で性教育の講演活動を行う。正しい知識を説明するだけでなく自分や友人の経験談をまじえて語るスタイルが“心に響く”とテレビ、全国紙でも話題に。現在、大学院生として性暴力や人工妊娠中絶に関する調査研究を行う。

DVD教材『自分と相手を大切にするって?えんみちゃんからのメッセージ』(日本家族計画協会)、単行本『ひとりじゃない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)発売中。

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300校以上の中学校・高校で講演。女子医大生“えんみちゃん”が本音で語る性の授業。



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